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2体の魔神戦

白い空間には、教授と似たような黒いローブを羽織った、黒を基調とした管理者が立っていた。


「えーっと…… 魔王討伐お疲れ様。僕は3号。観測者……」

そう言いながら3号はどんどん暗い表情になっていった。


「観測者を名乗ってるけど…… この世界だと権限足りないからほとんど何にも見られないんだよね…… やれることは意思確認とメディカルチェックぐらいだ…… まだ勇者続ける?」


「はい、続けます。」


「あ…… また君をガッカリさせちゃうと思うんだけど、僕も君に渡せる装備がないんだ…… 使うと皆狂ってしまうから……」

そう言うと、さらに暗い雰囲気が立ち込めてきた。

何とかして気をそらさないとさらにまずい空気になるだろう。

ただ、適当に天気の話題なんて振った日にはもっと気まずくなるだろう。


「そんなことないですよ! それより、他の世界だと神様をやってたこともあるんですよね? そっちだとどんなことをしてるんですか?」

正直なところ、管理者達にどんな話題がいいか全く分からない。

とにかく少しでも空気を緩和できることを祈った。


「え? うーん、そうだね…… 基本的にどこでもやってることそんなに変わるわけじゃないけど…… 世界全体の監視と後は魔法に関係する技術の開発かな……」

多少表情が明るくなったような気がする。


「魔法技術の開発ですか? 魔法はあんまり詳しくないんですけど、どんなものを開発したんですか?」

教授っぽい格好をしているからには急に専門用語が飛んで来てもおかしくないような気がした。


「うーん、分かりやすいもので言うと…… やっぱり感情エネルギーの魔力変換機構かな……」


「感情エネルギー?」

簡単と言いながらかなりよくわからないものを出してきた。


「そう…… 生物って色々な欲求があるでしょ? その欲求を願うだけである程度解決できるようにしてて…… もっと簡単に言うと、この世界の生物に魔法を使う能力と感情や思念から魔力を発生させる機能を追加したんだ…… 魂からの感情エネルギー抽出部分は9号との共同開発だけどね……」

思った以上にすごいことをやっていた。

まさか魔法が使えるのが彼らのおかげだとは思いもしなかった。


「君は魔法が苦手だって言うけど…… 正直なところ人類は魔法のことを少し難しく捉えすぎな気もするよ。ある程度理論立てた方が使いやすいかもしれないけど、結構気合とか思い込みとか勢いで何とかなることもあるんだよね…… 丁度君が気力で幻覚魔法をはねのけたようにさ。」

確かに感情エネルギーがもとになっているならそうなるのも納得がいく。

それならもっと魔法が上手く使えるかもしれない。


「なるほど、そうだったんですね! 今度から参考にしてみます!」

そう言うと、3号は少し嬉しそうな顔をしていた。

だが、それも長続きしなかった。


「そういえば、魔神の召喚って阻止できそう? ……召喚されるのは自分なのに、自分の意志でどうにもならないのって、情けないよね…… システム上手加減とかもできないしさ…… いっそのこともう斬ってもらいたいけど…… そうしても生き返っちゃうしなぁ」

最初と同じぐらい深刻そうな表情になった。


「それが、2枚奪われてしまって…… でもちゃんと討伐しますから」

本人に向かって討伐を誓うのは奇妙な状況だ。

しかし、本人もそれを望んでいるし、失敗すると世界が危ないので仕方がない。


「ねぇ、ちょっと待って! もしかして奪われたの僕の奴!? ヤダ! まだ行きたくない! うわーっ!」

3号がそう叫ぶと、元の空間に戻されていた。

そして、リモレイドが発動する。


転移先は何もない荒野だった。

そこには前回同様に人が集まっていたが、少し変わった一団がいた。

全身鎧で固めているが剣の代わりに水鉄砲を持っている。

そこに女神様が現れた。


「勇者よ、3番目の魔王を討伐したのですね! あなたの言った通りこれから3番目と9番目の魔神が召喚されるようです。その対策として、アンデッド討伐が得意な方々に集まって頂きました! そろそろ召喚されるようです。すみませんが、後は頼みましたよ」

それだけ伝えると女神様は搔き消えてしまった。

そして、奇妙な声が聞こえてきた。


――――――――――――

生者の繁栄に異を唱えるもの

眠りを妨げ、全てを踊らせるもの

その狂乱の前に地位や力は意味を成さない

その神の名は『インソムニス・モーテム』

冥府より蘇った眠らぬ残響

――――――――――――


その声が止むと9番目の魔神が出てきた。

上半身に関してはサングラスを掛けているくらいで、特に変化はなかった。

しかし、下半身は蜘蛛のようになっていた。

さらによく見ると、首から前回見た装置とは違う装置をぶら下げていた。

そうして魔神を観察していると、また奇妙な声が聞こえてきた。


――――――――――――

天から全てを見つめるもの

地上の営みを羨み続けるもの

その腕は地に届くこともなく何も成すことはない

その神の名は『ステラ・オキュラス』

天から地上を睨む凶星

――――――――――――


その声が止むと3番目の魔神が出てきた。

目の前に途轍もない長さの2本の鳥のような足が現れた。

見上げると、元とほとんど変わらない3号の上半身が見えた。

しかし、その腕は極端に短い。


人間より少し大きいぐらいの9番目の魔神と塔のように大きな3番目の魔神。

かなりサイズ感の違う2体の魔神との戦いが始まる。

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