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新しい世界、初めてのモンスター

気がつくと俺は見知らぬ草原に立っていた。手を握ったり、開いたりして感触を確かめる。

前世から特に変わった感じはしない。実は夢だったりして……と思っていたが1つ、いや2つ気づいたことがある。


(あれ、もしかして俺、鎧を装備してる? というか、籠手がオレンジ色になってる! まさか他の部位も……)

自分の体を見回すと、普段の鉄装備ではなく、全身オレンジ色の金属でできた装備を身に着けていた。

腰に着けていた剣も同じ金属でできているようだった。


試しに少しジャンプしてみたが、あまり重さを感じない。強化された肉体のせいなのかもしれないが、この軽さはもしかすると……オリハルコン装備かもしれない。


店に売っている中で最上級の装備といえば、2種類の素材が挙げられる。

1つは、非常に重いが、とても頑丈なアダマンタイト。紫がかった黒が特徴で鎧や剣、ハンマーなど硬さや重さを活かした装備に使われる。

もう1つは、物理耐久はそれほど高くないが、とても軽く色々な形に加工でき、魔力に関して色々な特性を持たせられるルニウム。青みがかった銀色が特徴で、鎧や剣に加工されることはあまりなく、杖などの魔道具や、なんとローブにも加工されてしまう変幻自在の金属だ。


その2つの金属もだいぶ珍しいらしく、低ランク冒険者にはとても買えないシロモノだが、それより珍しくさらに2つの金属のいいとこどりのような特性を持つ金属がある。それがオリハルコンだ。

武器にしろ、防具にしろ、物理、魔法の両方で優れていて、どんな状況にでも対応できる万能装備で、赤もしくはオレンジ色の金属らしい。

あまりにも希少過ぎて、いつ店に並ぶかわからない上、とんでもない値段が付くため幻の装備と言えるだろう。


(こんなに凄いものを用意してもらえるなんて…… 女神様には足を向けて寝られないな……)

そう考えたが、そもそも女神様の姿が見当たらない。待ってみようかとも思ったが、近くに町があるならそこで待ったほうが安全だと思い、近くに町への道がないか探してみることにした。


さっきまでは、興奮していて気付かなかったが日差しがとても強い。辺りの植物も暑さのせいか全体的にしおれているようだ。この異常気象は恐らく魔王の仕業だろう。


魔王が復活すると、まず世界全体の魔物たちが狂暴化し、強くなる。復活して数日後、魔王が潜んでいる異空間に通じるポータル、通称・魔王門が現れる。それに加えて、魔王門を中心に異常な現象が発生する。例えば、特定の種類のモンスターの大量発生、毒沼や毒草の異常発生、そして異常気象。


(こんなに暑いということは、魔王門は結構近くにあるんだろうか? いや、この暑さはまだ序の口で、門に近づくと対策なしでは火傷する熱波が放たれているのかもしれない。)

とにかくまずは町を探して歩き始めることにした。


少し歩いた所で、何か重い物が地面を跳ねるような音が聞こえた。一度足を止めて辺りの様子を伺う。

音が徐々に近づいてきたことに気づき、そちらの方を向いた。


すると、そこには見慣れない黒いスライムがいた。

青や緑のスライムはよく討伐していたが、黒いスライムは初めて見た。透明感はあまりないが、強い日光のせいもあってか、鉱物みたいにツヤツヤして見える。足音?からすると、だいぶ重そうだが、その分普通のスライムより遅そうな気がする。


逃げることもできそうだが、せっかくなら新しい体に慣れておきたい。動きが単調なスライム、しかも通常より鈍いものであれば肩慣らしにちょうどいいはずだ。剣を抜いて相手の動きを伺うことにした。


先ほどまで飛び跳ねていたスライムが体を少し縮めて震えだす。これは体当たりの構えだ。脚力強化を使って攻撃を躱す準備をする。その直後――


ビュンッと音を立ててスライムが飛び込んでくる。先ほどまでとは打って変わって、普通のスライムとは比べものにならない速さ。しかし、俺はその体当たりを余裕を持って躱すことができた。前世より体が断然軽く動く。そうなれば、がら空きのスライムの背(正面と見分けはつかないが)に一撃を入れることができる。


「今だ! くらえッ!」

勢いをつけて渾身の一撃を叩き込む。完全に入った。これで黒いスライムは見事真っ二つ――

とはならなかった。


「えっ、攻撃が受け止められた……?」

スライムの体は剣が当たっている場所がへこんでいるだけで、亀裂のようなものは一切入っていなかった。混乱しているうちに短い体当たりを食らい、体が後ろに吹き飛び尻餅をつかされる。やはりスライムに体の向きの概念はないらしい。


思ったほど受けたダメージは大きくない。まだまだ戦えそうではあるが……

正面のスライムは会ったばかりと同じように綺麗な楕円形を保っている。

「転生したのに、スライムにも勝てないって…… 噓だろ!?」


途方に暮れていたところで、聞き覚えのある声が頭に響く。

「勇者よ! スキル<アナライズ>を使うのです!」

女神様の声だ。アナライズというスキルは聞いたことがないが、これがボーナスの1つ、特別なスキルということか。


「女神様! アナライズとはどう使えば良いのでしょうか?」

「対象を視界に入れて、意識を集中するのです。そうすれば相手の特性やスキルを確認することができます。」


なるほど、敵の情報を得ることが出来れば倒すことができるかもしれない。

さぁ、反撃はここからだ、俺はスライムに意識を集中してアナライズを行うことにした。

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