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新たな敵、魔神

一旦宿に戻って状況を整理する。

まずここの魔王を倒したことによって、長く降り続いていた雨は止んだようだった。


ただ、4号とローブの人物の話が本当であれば、魔王より恐ろしい存在である魔神たちがこの世界に現れるということだろう。


「状況はかなり厳しくなりましたね…… 魔神たちがこの世界に現れるのも時間の問題のようです。」

女神様が深刻そうな声で話しかけてきた。


「魔神について何か知っているんですか?」


「はい、少し説明が難しいのですが…… 彼らはかつてこの世を支配していた10柱の神々でしたが、後から現れた同じく10柱の神々との戦いに破れ、封印された……ということになっています。」


「ということになっている?」


「ここが少し難しいところですが、彼らは<上位存在>と呼ばれる枠組みに属しており、それらは平行世界を自由に行き来し、時には手駒を送り込んでその世界を支配する存在です。そして、魔神たちが世界に現れる際は過去に神々と争って負けたという歴史をあったことにして、封印された状態で現れます。」

「実際、ついさっき大昔に魔神のうちの1柱と対決した記憶を思い出しましたが、これは思い出したのではなく世界の改変が起こったことが原因だと思います。」


「細かいことは分かりませんが、記憶が書き換わったということは魔神たちがこの世界に封印された状態で現れてしまっている。ということなんですね。」

「でも女神様が魔神と戦ったうちの一人だとしたら、この世界には女神様以外の神様もいるということですか?」

伝承通りになるとすれば、10人の神様をそろえれば魔神なんて楽勝のはずだ。


「本来ならばそうなのですが…… この世界はもうすぐ滅ぶ運命でしたので、皆別の時空に去って行ってしまったのです。ただ、私は諦めきれずに最後までこの世界に残り、そこにあなたが来てくれたおかげで、以前より滅びの運命は遠ざかっています。」

「しかし、魔神たちはより恐ろしい存在です。強さもさることながら、世界のどこかにある石版さえあれば世界のどこにでも召喚できて、さらに数時間以内に討伐できないと世界全体に災いをもたらすという特性を持っています。つまり、ほとんど人がいない場所に召喚されてしまえば対処のしようがありません。」


「そうだったんですか…… そう聞くとかなり絶望的な状況ですね……」

思ったより厳しい状況だ。今後こそ本当にやりようがないかもしれない。


「ちょっと待ってください。そのリモレイドというスキルは一体?」

そういえば、まだ4号から貰ったスキルの効果を確認していなかった。


「レイド開催時、いかなる場所にいても開催場所に移動可能? 女神様、レイドとは何でしょうか。」


「魔神たちの戦闘形式のことですね。彼らは余程自信があるのか、時間内であれば誰からの挑戦でも受けますし、同時に何人でも相手をするのです。つまり、あなたにはまた負担をかけることになりますが…… そのスキルがあれば確実に魔神との戦いに参加することができるでしょう。」


「それならまだ希望がありますね! 今更倒す相手が増えたところで諦めたりしませんよ。それに、協力して戦える可能性があるだけありがたいです。」


「そう言っていただけて助かります。石板の位置はできるだけ探してみますし、微力ではありますが第2の魔神と戦うことがあれば加勢致します。」

恐らく女神様と対決した魔神ということなのだろう。神様の力を借りられるのはかなり心強い。


「魔神は召喚されたら対応するとして、とりあえずは魔王討伐ですね。次はどの魔王がよさそうでしょうか?」


「えーっと、次に倒せそうな魔王は…… ここから南西の森を抜けた先にあるグレイピアのそばにいる9番目の魔王ですね。距離は他の魔王より少し遠いのですが、強さとしては4番目の魔王と同程度ですし、毎回確実にアンデッド系統なので、対策が取りやすいのも特徴ですね。」


「それは良さそうですね! そうと決まれば明日はそこに向かいましょう!」

次の目的地が決まったところで、今日のところは休むことにした。


翌日――


アンデッド対策として聖水と魔よけのアミュレットを購入し、<浄化>のスキルを手に入れた。

これでアンデッドに直接攻撃しても良いし、水に使えば聖水にできる便利なスキルだ。

(本当は銀の武器からアンデッドキラーも取れたら最高だったけど、結構高いんだよな)


浄化する対象の水は純粋なほうが効率は良いが、そうでなくても浄化できないことはないので、海水から聖水を生成するために海岸に向かうことにした。


魔王討伐前とは打って変わって、海は吸い込まれるような青さで、その中にも陸にも色とりどりに輝くサンゴが生えている。


心地よい波の音を聞きながらいくつかの空き瓶に海水を詰めていると、徐々に波の音とは違う音が聞こえてきた。

徐々に近づいてくる音に驚いて顔を上げると、大きなカニのようなモンスターが迫っていた。

全身が真っ黒な殻に覆われているが、片方の鋏は異様に大きくまた白く輝いていた。


硬い殻に覆われている相手ならハンマーの練習相手にちょうどいい。

腕力強化をかけてハンマーを構えてみる。まだ重いが、魔王戦の時よりマシに感じた。


カニが素早い横歩きで近づいてきて、白い鋏を振るう。

ハンマーをしっかりと構えて鋏を受け止めると、カニが大きくよろめく。


(流石アダマンタイトのハンマーだ。相手の方が押し負けている)

チャンスを逃さず胴体のど真ん中にハンマーを振り下ろし次の攻撃に備える。


しかし、その必要はなかった。

たったの一撃でカニは白い鋏だけを残して粉々になってしまっていた。


「な、なんてヤバいハンマーなんだ……」

甲殻の破片の感触から察するにカニが脆かったわけではなく、このハンマーで2回殴っても欠けすらしないあの魔王の殻の方が異常だったのだろう。

モンスターを倒すこと自体は普通のことではあるが、ここまで一瞬で片が付くと少し気の毒な気持ちになる。


気を取り直して、聖水の生成を行った後、カニばさみを調べてみる。

アナライズによると、このカニはデスブリンガーという名前らしく、その鋏が死神の鎌に見えることが名前の由来だったらしい。

その切れ味から武器として使う冒険者もいるが、大抵は草刈り鎌に加工されるということも分かった。


取得スキルはやはりというべきか、<草刈りマスター>だった。

(武器に加工すると言っても斬撃武器ならこの剣があるし、森に行くなら草刈りは割と丁度いいかもしれない)


草刈りマスターを取得した俺は、日の光を通さない鬱蒼とした森へ足を踏み入れた。

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