妖精の村
妖精と一緒に村へ向かう途中、何度かモンスターに遭遇した。しかし、以前は強敵だと感じていたはずだが、どれも難なく討伐することができた。
(転生前は1年経ってもスライムばっかり討伐してたのに、今じゃ数日で最低でもCランクのモンスターを毎日討伐できてる。女神様の加護のおかげもあるけど、強いモンスターと戦い続けた甲斐があったな……)
そうして今までのことを思い出しているうちに目の前に大きな木が見えてきた。
「やっぱりキミ強いね! もう村の入り口についちゃった! じゃあ村にはいろっか」
どう見ても入口らしきものはなさそうだったが、妖精は木の幹の中にそのまま吸い込まれていった。
勇気を出して木の幹に直進すると、木の幹が水面のように波打って、そのまま通り抜けることができた。
木の幹を通り抜けた瞬間、目の前が明るくなり、気づくと見知らぬ空間にいた。
外の世界とは打って変わってそこら中に色とりどりの花が咲いていて、楽園のような場所だった。
花に気を取られていたが、そこかしこに手のひらサイズから人間の子供くらいまで大小様々な妖精と思われる人々がいた。
「ここが妖精の村だよ! 花がいっぱいあってきれいでしょー!」
確かにここまで綺麗な花畑は前世でも見たことがない。花の綺麗さに感心していると、突然数人の妖精がこちらに猛スピードで飛んできた。どれも鎧や武器らしきものを身につけていて、兵士のように見える。
「アネモ様! ご無事でしたか! そして、こちらの人間は何者ですか!? 姫様がこの村に連れて来たということは悪人ではないと思いますが……」
兵士っぽい妖精たちが一緒に来た妖精の周りに集まる。
「姫様!? あなた、妖精の姫だったんですか!?」
あまりの衝撃に叫んでしまった。よく見ると、ピンクの花びらを着ているのかと思っていたが、実際はそう見えるデザインのドレスだった。しかも金の刺繡や宝石らしいものまでついている。
(よく見たら凄く高そうな服を着ている…… あの時助けられなかったらと考えるとゾッとするな……)
「あれ、言ってなかったっけ? それより、みんな安心して! この人はアタシがモンスターに襲われていたところを助けてくれたの! 悪い人じゃないよ!」
それを聞いた兵士たちがどよめいている。
(俺の疑いを解いてくれたけど、そもそもモンスターに襲われてた部分については何も安心できないよな……)
しばらくしてどよめいていた兵士たちが落ち着きを取り戻した。
「モンスターに襲われていたのは一大事ですが…… 何はともあれ姫様を助けて頂きありがとうございます。」
「姫様は大妖精になる修行の一環として、この村にいらっしゃったのですが、村のために色々な仕事を手伝って下さるのです。 ただ、ちょっと無謀な所はあるのですが……」
兵士の言葉を聞いて、アネモ姫は少し苦笑いをした。
「ま、まぁとにかく助けてもらったから何かお礼をしたくって。 ここにある花は外のヒトたちにとっては色々な薬の材料になるみたいだから、欲しいのがあったら何でも言って!」
女神様は妖精の粉だけでなく、チャームフラワーの入手についても妖精に会う必要があると言っていたが、恐らくこの村の花畑のことを言っていたのだろう。
「ありがとうございます! ちょうどチャームフラワーっていう花を探していたんですけど、ありますか?」
「もちろん! いっぱい咲いてるよ! 他に何か欲しいものある? 」
「あとは花ではないけど、妖精の粉が欲しいです。」
俺がそう話した途端、アネモ姫は凄く驚いた顔をした。
「えっ!? 妖精の粉とチャームフラワーってことは…… 超強力な惚れ薬を作るってこと!? 思ってたより大胆だね!」
(惚れ薬だって!? 確かにそれなら魅了耐性素材のイメージにはピッタリだけど、とんでもない誤解を受けている……)
「い、いえ、その二つは魔王を討伐するのに必要なんです! 詳細は長くなるので省きますが、とにかく惚れ薬じゃないんです!」
「そうなの!? 惚れ薬の材料があれば魔王に勝てるなんてちょっと面白いね!」
「というか勇者だったんだ! もうずっと選ばれてなくて外は魔王だらけになっちゃったけど、キミならきっと大丈夫! すごく強かったもん! ……これで頑張って魔王を倒してね!」
村の妖精がチャームフラワーと妖精の粉が入った袋を持って来てくれた。
「はい! 絶対に倒して見せます!」
絶対的な自信はなかった。しかし、ここまでしてくれたのなら絶対に魔王を討伐しなければならないと思った。
素材を貰い町へ帰った俺は、明日スキルを取得して魔王にリベンジすることを決意したのであった。