プロローグ
地球暦1000年
人類は争いを続けていた。あるものは自らの利益のために、あるものは自らの欲望のために、あるものは自らの快楽のために争いを続けていた。
だがそんな世界にあることがおきた。
宰相アーデをリーダーに擁する武装組織ガイアが立ち上がった。
それに反応するかのように宇宙コロニー公社の特殊武装組織バベルがガイアに宣戦布告。
瞬く間に2大勢力の争いに世界は巻き込まれていくのであった。
ガイアは世界から争いをなくすことを目的に戦いを続けていた。
開戦当初地上でのみ行われていた戦いは回を重ねるごとに激しくなり戦場は宇宙へと広がっていった。それまで優勢であったガイアは宇宙戦力をあまり持たず逆に宇宙に戦力を集中させていたバベルが宇宙では優勢となった。
地球暦1002年
長引く戦いは両勢力を徐々に疲弊させていった。
そんな中ガイアの武装輸送艦ラタトスクを中心とするユグドラジル艦隊は月・地球間航路ラグランジュ航路を航行していた。
「こちらラタトスク1。敵艦隊捕捉。サヴァヌコロニーの方角です。」
「了解。敵艦隊を迎撃に向かう。総員戦闘配置!!フォーメーションΣ、ラタトスク1を中心にラタトスク2,3を前方に、ラタトスク4,5は後方に配置。」
旗艦ラタトスク1の艦長ジルバ・フォンネル。彼は長年国連軍の海軍に所属し艦隊を率いていた。しかしガイアの発足を機にガイアの宇宙艦隊に編入された。数少ない宇宙艦隊を率いるのに最も適していると判断されたからなのだろう。
彼は地球暦1001年にアメリカ上空で行われたシンフォル会戦にて敵艦隊殲滅の栄光を讃えられ中佐から二階級特進し少将となった。
それ以来彼は無敵のジルバの異名で呼ばれることになった。
そんな彼が今回ユグドラジル艦隊を任されたのである。
敵艦隊へと向かっているとき兵士たちが艦内でなにやら囁きあっていた。
「大丈夫なのかな……俺たち生きて帰れるのかな………」
「ああ……俺は地上に息子たちを残してきた。あいつら心配しているだろうな……」
「俺この艦降りたいよ……」
そこに足音が聞こえ兵士たちはビクッとした。
「どうかしたかね?」
そういったのはジルバであった。
「い…いえ何もありません。」
「無理もない。わしも不安でいっぱいだからな。若いおぬしたちが不安を感じているのは当然だろう。安心しろ。この艦には無敵のジルバが乗っているのだからな!!」
「あ…ありがとうございます。俺たちがんばります!!」
「頑張りたまえ。」
そう言い終えるとジルバは副官とともに艦長室へと向かう廊下にでた。
歩きながら副官にはなしかけた。
「若いとはいいものだな。」
「ええ。いいものです。」
「できれば彼らにはこの先長く生きてもらいたいが…………君も知っているだろう。
上の者共が何を企んでいるか。あれこそが腐った人間の権化だよ。」
「はい知っております。アーデ様達が成そうとしていること……」
そんな話をしていると艦長室へと辿り着いていた。
「ありがとう。またわしの話を聞いてもらいたいな。」
「こちらこそ。いつでも話はお聞きしますよ。」
ジルバが艦長室に入ったのを確認すると副官は徐に通信機を取り出した。
「こちらF-8。J-9へ。」
通信機にそうつぶやく。
少しの間のあと通信機から声が聞こえてくる。
「こちらJ-9。そちらの様子は。」
「ジルバはいずれ切るべきです。やつは新世界に不要な存在です。」
「なぜそういいきれるのかな?証拠を見せてもらわねばな。」
「証拠ならここに。今すぐ転送いたします。」
副官があるファイルを転送すると数分の後J-9と名乗るものからの通信があった。
「確かにこれは証拠になっている。ではこれを議会へ提出するとしよう。」
「ではこれで。」
場所は変わって艦長室。
(やはり彼が奴らのスパイであったか。早めに手を打たねばな。)