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ジングルベル、ジングルベル。


トウキョウ都シンジュク区。

今年の都内の冬は思いのほかに厳しく、師走を迎えたこの時期に雪が降るのでは、とニュース番組で話していたとおり、シンシンと降り始めた雪。

師走の意味のとおり、僧侶ではないが年末は人々が息を白くしながら、東へ西へ忙しなく歩いている。

空を見上げると雲は重く、道路を見下ろすと雪が降りつもりつつあり、歩む速度は遅くなる。

ただクリスマスシーズンのこの季節はそれらをかき消すように商業施設を始め、色々な建物や街路樹に様々なイルミネーションが煌めき、人々の目を癒し、また季節の歌が鳴り響き、耳を和ませる。


ジングルベル、ジングルベル。


シンジュク駅東口、2014年に終了した昼の長寿番組で有名になったビルを横目に果物屋の前を進むと激安を売りにした大型ディスカウントストアが見える交差点につく、そこから先は賑やかな夜の街、カブキ町に続く道となる。

時刻は午後5時を少し過ぎたところ、この時間のこの場所は大勢の大人たちが長い夜の始まりを期待するように降り続ける雪など気にするものかと足取りも軽く歩いてる。


ジングルベル、ジングルベル。


そんな夜も始まるであろう時間帯、大型ディスカウントストアの交差点を超え、直進すると現れるT字路。

そこに並び建つ1階にドラッグストアが入っているビルと各階に居酒屋が犇めく雑居ビルの間、普段なら不法投棄禁止の張り紙が目立つように貼ってある扉から不意に現れた子供に近くの男はびっくりしながらも周りを見て、近づきながら声をかける。


「ガキンチョ、どした、こんなとこで」


男は髪の毛を赤に染め、Vuittonのクラッチバッグを抱えている、夜の仕事だとわかる風貌だ。


「・・・ル・・・グ・・・」


子供は小さめのバッグ程度の荷物を大事そうに両手で胸に抱えながら俯き、ブツブツと口元を動かし、男の横を通り過ぎ、ビルの前にあるT字路に向かっていく。


「ちょ、待てよ。っておい、寒くねーのかよ??」


前からだと荷物が目立っていたのでわからなかったが背中から見ると子供の服装が異常なことがわかった。

この寒さの中で身体は白の千切れた布地のようなものを巻いているだけで、足元は足袋、手は黒い手袋を身に着けているが唯一の防寒はそれだけのように見えた。

明らかに季節外れだ、そしてそれ以上に違和感のある服装だった。


「こんな子供がいても誰も気にしねーのかよ、だから東京は人に冷たいとか言われるんだよなぁ」


改めて周りを見ながら、自分以外は少女を気にせず歩き続ける人の波を見て、男は金髪の頭をガシガシとかきながら誰にともなく悪態をつく。


「ジン・・・べ・・・グル・・・」


子供は俯いたまま、荷物を更にぎゅっと抱えた。


「仕方ねーな。よし、ガキンチョ、ついてこい。服買ってやるから、ついでに荷物も持ってやるよ」


そう言って荷物に手を近づけると子供は肩を大きく震わせながら顔を上げ、男を見て口を開く。


「ジングルベル、ジングルベル」


子供は少女だった。

いつから泣いているのか、真っ赤に充血した目、腫れたまぶた、頬にはくっきりと涙痕が刻まれていた。


「お、おい、どうした・・・!」


異常な状態に一瞬後ずさりした男は改めて少女に向き直り、目線を合わせるようにしゃがみ込む。


「ジングルベル、ジングルベル」


少女は首を大きく振りながら、口からは変わらずにこの季節特有の幸せの代名詞とも言える言葉を呪文のように呟いている。


「大丈夫か、どこかイテ―のか?くそ、とりあえず交番につれて・・・」


男が少女の肩に手を置いた拍子に少女の体が震え、抱えていた荷物が落ちる。


「あぶね…」


男は反射的に荷物を取ろうと手を伸ばすが間に合わず、荷物は地面に向かう。

少女が一際大きく泣き声をあげ、荷物が地面に落ちた瞬間、閃光と轟音が鳴り響いた。


ジングルベルジングルベル、鐘は鳴った。



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