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見習い魔法使いの世界旅路録  作者: 絵之色
第一章 透明の日々から羽ばたく日
9/34

9色 水浴び

「く、クリスさん!! だ、ダメですよ!! こんなの……!!」

「大丈夫、大丈夫!」


 クリスティアは年上の我儘を使い、幼気な男の子のロルフと一緒に水浴びをすることにした。とりあえず、一応魔法で間違いで見えてしまうのを避け、旅行バックからタオルでロルフの目元を隠して、一緒に川の近くまで来た。

 ロルフが恥ずかしがっているのが可愛いと感じながら、クリスティアは魔法で一瞬で水着へと着替える。

 白いワンピースタイプの水着で、師匠からわざわざ買ってくれたものだ。

 ちなみにこれは師匠の数ある水着候補の中で、私が選んだものでもある。

 ……水着のセンスは、ちょっと師匠はエレガント系かセクシー系なんだよなぁ。

 あ、なんて考えてばかりじゃいられない。はやくロルフ君と一緒に水浴びしないと!

 クリスティアは思い切ってロルフへと抱き着いた。


「それじゃ! 軽く汗を流そっか! ロルフ君」

「うわぁああああああああああああ!!」


 ロルフ君はビクリと肩を揺らしてから私から離れて行った。

 しかも、目の前にある大きめの岩に顔面をぶつけて、うぅ、なんて呻きながらも耳まで顔を真っ赤にさせて岩にへばりつく。


「……? どうしたのロルフ君? そんなに大声上げて」


 クリスティアは可愛らしく首を軽く傾げる。

 しかし、目隠しをしているロルフにとってはとても刺激的すぎたのか、顔面を岩にぶつけたショックでかたらりとロルフは鼻血を流していた。

 

「は、裸で抱き着いてきたらダメですよ!!」

「え? いや、私今水着――――――って、ロルフ君!? 鼻血出てるよ!?」

「い、いえ!! と、とにかく先に水浴びしてください!! ぼ、僕は後から入るので!!」

「先に止血しなくちゃダメだよ! ちょっと待って」


 私は旅行バックで顔を拭く用のタオルを持って、ロルフ君に近づく。


「ほら、ロルフ君! タオル鼻に当てるから」

「で、でも――――――! んぐっ」


 駄々をこねるロルフを無視して、クリスティアはロルフの鼻に水に浸したタオルを当てる。

 軽く巻いていたロルフ君のタオルがタオルが落ちてくると、ロルフ君は一瞬だけ気まずそうに沈黙した。


「……あの、クリスさん。水着って……?」

「うん、水でも透けないようになってる服のことだよ、言ったでしょ? 水着着てるって」

「…………すみません、でした」

「いいよ、いいよ。私の説明不足だもん。ロルフ君、こっち向いて。その方が血が止まりやすいから」

「は、はい」


 ロルフ君が顔をさらに真っ赤にさせて俯くので、私がタオルを持っているのを見て彼は素直に従ってくれた。クリスティアはロルフの顔を申し訳層に見ながらも、しっかりとタオルで鼻血を止めていた。

 ダメだな私……子供とはいえ異性だって言うのに、この子も年頃そうな男の子なんだもん。ちょっと年上としてのマナーをしてなかったかな。


「ごめんね、ロルフ君。私、君より年上なのにデリカシー足りなかったよね」


 クリスティアは、上目遣いでロルフを見ながら眉をハの字にしてロルフに謝った。


「い、いえ……その、クリスさん。お願いが、あるんですけど」

「な、何?」

「その、僕の水着になるような物ってありますか?」

「え? 男の子用の水着は流石にないけど……タオルがまだいくつかあるかな」


 クリスティアは唐突のロルフの言葉の意図を深く読み取れなくて、頭の中でクエスチョンマークでいっぱいになる。


「……じゃあ、一つ貸してもらっていいですか? さすがに目元を隠していたタオルでは隠せそうにないので」

「あ! う、うん……ごめんね」

 

 ようやく意図を察したクリスティアは俯いた。

 ……ロルフ君の方が大人だなぁ。

 クリスティアは優しいロルフ君に罪悪感で胸がいっぱいになる。


『クリスはテンションが上がると周り見えなくなるところあるから、気を付けなさいよ?』


 アヴェリ師匠が言っていた言葉が頭の中に過る。

 ロルフ君にした行動に、師匠の助言を思い出して胸が苦しくなる。

 師匠には色々とコミュ力も叩き込まれていたといえ、やっぱりウィッチの人のことを知ろうとしてくれる人につい色々と話してしまったという昔の黒歴史であるメモリーが脳に展開される。

 あの時は、本当に師匠に色々と怒られたよなぁ。

 

「……クリスさん」

「……何?」

「貴方は、俺を助けてくれた恩人なんです。そんなに気に病まないでください」

「で、でも……」

「ちょっと、色々とあれでしたけど。俺も、汗でベタベタで気持ち悪かったから、大丈夫です」

「ロルフ君……!!」


 私はラルフ君の優しい言葉に甘えて、彼の鼻にタオルを当てるのをやめて思いっきり抱き着いた。


「ありがとう、ロルフ君! 君って優しいね」

「だ、だからクリスさん、抱き着かないでください! は、鼻血、また出ちゃっ」


 ラルフ君が鼻を抑えるが、血がぽたぽたと私の体に零れてくる。

 私は慌てて、ラルフ君から離れた。


「あ! ロルフ君!! 大丈夫!?」

「う、あぁ……あ、頭、くら、くら、する……っ」

「わぁあああああああああああああああああああ!! ごめん、ロルフくん――――――!!」


 クリスティアはその後、水着に着いた血を洗うよりも先にロルフの鼻血が止まるまで彼の鼻にタオルを数分間当てていた。

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