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19.冷えたラガービール

 受付でギルドタグを処理してもらった。

 見ると、一番下に小さな丸が3つ打刻されている。

 今までは打刻はなかった。どうやら一番下のランクでノースターという事だったらしい。

 一気にランクアップした俺はスリースターになった。


 星10個、テンスターという位が最高ランクだそうだ。

 それにしても、一気にランクアップし過ぎじゃないだろうか?

 俺自身が強いと思われても困るぞ…。

 困惑が顔に出ていたのか受付のおじさんが言った。


「別に戦闘系ばかりがランクアップの対象じゃねぇよ。良い素材を採取してきた奴、使える情報を持ってきた奴、そういう奴らも上にあがっていく。タグの星が増えても、強い奴と限らんことはみんな知っているさ。ただ、何かしらの役に立つ奴だとは思われるがな」


「ふうん。そういうもんなのか…」


「おお、そうだそうだ。ビッグマウスの素材依頼がいくつか出ていたから、そちらに解体後の素材は回して、依頼達成という事になる。素材の状態が良いって騒いでいたから、恐らく最高額に近い査定額が出るんじゃないか?明後日に解体部位の受け取りに来るんだろう?その時までにそっちの額の確定もされてるから、一緒に清算という事になる。えーっと、ちなみに依頼報酬だけで最低…白金貨3枚。まぁ、きちんとした査定額は明後日だがな」


 金貨10枚が白金貨1枚だぞ。

 その白金貨が3枚…俺換算で30万円!?


 ヒモになる予感ひしひしな俺と、肉が美味しいと聞いてご機嫌な猫吉先生は、ギルドをあとにした。


「早くお肉が食べたいな!」


「明後日、楽しみだな。脂がのっていて美味いらしいぜ」


「我、たくさん焼いて食べて、それでそれで…ルノムのお好み焼きにのせて食べるんだ!」


「それじゃ今日明日でお好み焼きをたくさん焼いておこうか」


 嗅覚の鋭い先生が、豚肉に匂いが似ているって言ってるんだから、期待してしまう。

 俺は猫吉先生様ってお呼びしたほうが宜しいでしょうかね。


 §


「へぇ…素材ってこんなにあるのか!」


 あれから二日、黙々とお好み焼きを焼き続け、ソース玉をベースとした俺特製ソースを量産し続けた俺は、只今、ギルド裏にある解体場に猫吉先生と一緒に来ている。解体場の一角に所狭しと並べられた素材を見ての感想である。


 あの魔獣が…こうなったんだよな。

 整然と大量の素材が素材別に綺麗に並べられている。


 解体って凄い技術なんじゃないか?

 このおっちゃんが解体してくれたのかな。

 目の前のガタイの良いおっちゃんを思わず尊敬のまなこで見つめてしまう俺。


「久々の大物大量解体で腕が鳴ったよ。魔石もご立派だ。全部持って帰っちまうんだって?」


「そのつもりだ」


「そうか。今後、どっかに売るならギルドへも声かけてくれや。それにしても狩り方が上手かったな。素材は余すところなく取れたぜ。肉も全部持ち帰りだったな。ビッグマウスの肉は美味いぞ。脂のノリもいい、こいつは上等だよ」


「そりゃ楽しみだ。なぁ…毛皮なんて結構な量みたいだけど、こんなに買い取ってもらえるもんなのか?」


「在庫過多の時は買いたたかれる魔獣もあるがな。ビッグマウスクラスは別だよ。毛皮は丈夫で汚れにくいし、洗浄してもすぐに乾く。手荒い事をしても摩耗が少ないから、用途がたくさんあるんだよ。加工もしやすいから使い勝手も良い。中々捕れないが人気の素材なんだぜ。こっちとしては大歓迎ってやつさ」


「もし、肉をここで買い取ってもらうとして、今回みたいに大量の肉が入った時は、どうやって保管しているんだ?マジックバッグで保管してるのか?」


「そうだな。あとは卸し先がある場合は冷凍冷蔵箱の魔具がギルドにはあるからな。そこに保管しておいて、すぐに引き取りに来てもらったりもするな」


「冷凍冷蔵箱…。なぁ、そういう魔具って普通に買えるのか?」


「お前さん…どこの田舎から出てきたんだ?そりゃあ、金さえ払えれば普通に買えるさ」


「高いんだろうな」


「そうだなぁ、サイズにもよるが…一番小さなサイズでも黒金貨2枚はするだろう」


 白金貨10枚が黒金貨1枚。

 要するに俺換算で…え!?安くても一台200万円って事か?


「高いな!小さな食堂なんかじゃ大変だろう」


「あぁ、商売で使う物となると、黒金貨10枚近いものもあるらしいぞ。しかも、大きければ大きいほど魔石もくうから維持費もかかる」


「金がいくらあっても足りないな」


「本当にな。俺は氷を買って酒を冷やすくらいがちょうど良いよ」


「あ、冷凍…そうか、氷はあるよな」


「おいおい、お前さん、本当にどこから来たんだよ?氷なら食料品店に売ってるから便利だぞ。店で売ってるやつは直接酒に入れても大丈夫だから、俺はあれで十分だ」


 ロックで一杯か…良いな。猫吉先生はリュックサックの上に寝そべった定位置で、俺の肩に顎を置き、プスっと鼻を鳴らして…あ、こいつ、さりげなく鼻水を俺のシャツにこすりつけてるんじゃないか?飽きてきたのはわかったから、やめてくれ。


「それじゃぁ猫吉先生、記念に素材を一つずつ持って帰ろう。どれが良いか選んでくれ」


「うん!毛皮は絶対これだ!尻尾は一番右のやつ。爪は…」


 既に決めてあったらしい。さすが猫吉先生。

 引き取る素材を確認してもらい、目利きだと褒められてまんざらでもなさそう。

 俺、素材の良し悪しなんて全くわからないぞ。先生、なんでわかるんだよ…。


 事前にマジックバッグを持っている事は話してあるので、遠慮なく沢山の肉と素材をその場でリュックサックへと詰め込んでいった。


 記念品だから、猫吉先生に持たせようと思ったのだが、狩りをすると首から下げているマジックバッグがいっぱいになるかもしれないと言われて、俺が持つことになった。

 マジックバッグがいっぱいになるって…先生、何を想定してるんだ?


「今回、解体料はギルド持ちだから、受取金額は…こうだ。どうだい?」


「…けっこうな金額だな。もちろん、これで構わない」


「そうか。じゃぁ、この紙を支払いカウンターへ出して、金を受け取ってくれ」


「あぁ、世話になった。ありがとう」


 俺達はここで初の黒金貨を目にする事になる。

 黒金貨2枚、白金貨8枚、金貨6枚を手に入れてギルドを後にした。


 買わない、買わないけどさ…小さな冷凍冷蔵箱、買えちゃいます。


 §


「猫吉先生、大金持ちだぞ?硬貨、そっちの袋へ入れておくか?」


「我、お金はいらない。お金はルノムにあげるんだ。そのかわり肉が食べたい」


「お金、いらないのか?」


「うん!それに、我のものはルノムのもの、ルノムのものは我のものだからな!」


「え…俺のものは俺のものだけど」


「げにゃ!」


 宿へと戻る道途中で食料品店に寄る。

 氷を販売している事を知った俺、もちろん購入するに決まっているじゃないか。


 食堂も断られなかったが、従魔連れでも断られずにどこの店でも買い物が出来る。よく考えたら獣人にも結構フサフサな奴がいるからな。そんなに気にすることもないのかもしれない。ついでに食料品を何点か購入して店を出た。

 肉肉と煩い先生にせかされて家路を急ぐ。帰るのは宿だから、宿路か。


 その日の晩はビッグマウスの肉フェス。

 金物屋で鉄板を作って貰ったことでもあるし、鉄板焼きにすることにした。

 これなら肉も焼けるしお好み焼きも出来る。なんならトロンジョの焼いたのも出来る。外食でも自炊でも食べたいって訳じゃないから、作らないけど。


 さて、今日は絶対にビールだろうな。

 焼酎の残りもあるから、ビールを楽しんだ後は氷を入れて焼酎ロックを楽しむのも良い。

 氷一つでこんなにも心躍る自分が少し可笑しいが…冷たくて美味しいビールが俺のものだと思うと、顔がにやけちまうんだから仕方がない。


 タブレットで『猫吉楽食便』を開く。

 ビールだ、ビール。

 今日は日本人にはもっとも馴染み深いだろうラガーをチョイス。


 岩手県・きよえ工房/風のレコード(飲み比べセット18缶):銀貨5枚銅貨4枚


 いつかは家でも借りて落ち着ける場所を作りたい。だから猫吉先生が儲けた金は貯めておこうと思っている。だからお高い冷凍冷蔵箱なぞは買わないけれど、氷が食料品店で手に入るなら文句はない。氷は迷惑にならない程度に買い占めて、リュックサックに保管してある。俺は氷を取り出した。


 本当は氷を入れた桶でビールを冷やしたいところだが…待てない。

 リュックサックに保存するビールは桶で冷やす事にして…氷をコップに入れた。


 ――とくとくとく


 コップをくるくると回してビールを手早く冷やす。

 猫吉先生用の皿へ注ぎ入れた。

 先生、冷たい飲み物は大好きなんだそうだ。


「先生、狩りの成功、おめでとう!かんぱーい!」


「にゃー!」


 §


「とりあえずは塩とコショウ玉で良いかな。あとは蜂蜜を買ったから、これにショーユ玉を一緒に漬け込んで甘じょっぱいタレも作って…」


 想像するだけで、思わず喉が鳴る。


 ――じゅうじゅう


「まだかな」


「まだだな」


「まだかな」


「まだだな」


「まだかな」


「あー、もうっ!そう言えば…もしかして猫吉先生は生肉でも食えるんじゃないのか?」


「もちろん食える。けど…グルメ猫は焼肉が食べたいのだ」


「やっぱり食えるのか。あ…そろそろ良いかも。これ、いいぞ。熱いから気をつけろ」


 皿に入れてやると、よだれを垂らしそうな顔をして俺を見つめてくる。


「なんだ?早く食べろよ」


「ルノムと一緒に食べるんだ」


 …まったく、うちの子は…まったく。

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