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3話:そして時の中。

あの気づきから何年が経っただろう。私はいろいろなことを経験してきた。新たな家族と、様々のことをし、楽しいこともあったし、辛いこともあった。中学高校と進学して、なんとか大学まで出ることができた。前の器なんか関係ない、ただ、今の僕は今の器での生活を心から楽しんでいた。新たな器を授かった次の日、私はこんな事を考えていたっけ。「いっそ転生するならつまらない現世界じゃなくて異世界に転生していればよかった」と。


しかし、今になって思えば人間に溢れた現世界もそれほど悪いものじゃない。むしろ、異世界に転生して得体のしれないモンスターと戦ったり、そんな危ないことして生きるよりも、人間に作られ、人間に溢れたこの世界で生きるほうがなるほど私には安泰なわけだ。仏様はきっと、私がそれに気づいていないことを案じて現世界に転生させたのだと、そう思う。


今の私は、前世の僕を超えられているのだろうか。いや、そんなことはもはや関係ない。今の私はあくまで今の「私」だというのだから。幼年から少年期にかけては時たま、以前の僕はどうだったのだろうと考えたものであるが、青年から成年にかけてはそんなことはほとんど考えないようになった。不思議なものだ。前世の記憶は大切なもののように思うのに、現世で生きていればその時間が長いほど前世の記憶なんて忘れて、現世の記憶で上書かれてしまうのだろう。


だからこそ、輪廻転生という言葉は知っていようとも実際は信じていないという人が多いのではなかろうか。人間というものは自らが実際に経験していない事象はないものとみなす性質があるようであるから。だが、私は確かに経験した。


幾十年後、永い時の末にやがて私も死に、再び荼毘に付されるのだろう。少なくとも日本においては火葬をすることが法で定められているからだ。その時はまた、異世界ではなく現世界の人間へと転生させてほしい、そう仏に強く祈った。



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