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1話:はじまり

皆様は、「輪廻転生」というものをご存知だろうか。

ご存知の通り、「輪廻転生」という考え方は仏教に伝わる、「死んだ魂は新しい器に入れ替えられてまた生まれてくる」という考え方である。


ては、輪廻転生という考え方を知っていてそれを信じているという人は果たしてどれだけいるのだろうか


相当に少ないだろう。死んだらそこで終わり、そう考える人が多いはずなのである。私もかつてはそうだった。


あれは4月のことだったか、多分、私は飲酒運転の自動車にはねられたのだと思う。車の中、薄れゆく意識の中で誰かが懸命に私の名を呼んでいたのを薄らに覚えている。不思議なことにその名が何だったのかは全く思い出せないのだが。自分がどんな姿かもわからない。痛みもない。というか、全身の感覚が時間とともに奪われていった。


完全に感覚がなくなったあと、瞬間のうちにすべての感覚が戻ってきた。しかしながら、戻ってきた感覚で知覚したものは、ただ、ただどうしょうもない孤独感だけだった。人っ子一人で充分のような身動きの取れない、自由が全く効かない空間に数日も閉じ込められ、私はどうにかなりそうだった。


やがて、ふと身体が軽くなった。私は自由を手にしたのだった。孤独なことには変わりないが。


次の日、と言っても次の日と言っていいのだろうか。私が目覚めるとえも言われぬ違和感を感じたものだった。まず、周囲に何もない。感覚が戻ってきてからというものの、ずっと狭い場所に閉じ込められてきたからか、周囲に何もないというのはとてつもない違和感だ。であるが、拘束されていたあと自由になって感じたような孤独感は不思議とない。まことに、えも言われぬ感覚だった。


なにか物音がしたのでそれを見ようとするがぼんやりとしか見えない。視界は何かで遮られているようだが、遮られていない部分から見える景色は、ぼんやりとではあるが上下が逆さまに映っているようである。


なんだ、私は事故の衝撃で狂ってしまったのだろうか。そういえば後頭部を強く打ち付けたような気がする。後頭部といえば視覚野があって小脳があって…ってあれ?後頭部を打ち付けて小脳が破損してしまえば人間は死ぬはず…、と妙に冷静な私がいた。


それにしても全く動く気がしない、というか動けない。とにかく体が重い感覚がした。自分自身の肉体の重さを改めて実感する。私は普段、こんなに重いものを特に意識もせずに動かしていたのだと思うと我ながら感心する。焦点が定まらない眼であたりを見回す。首さえも動かせないから目玉だけを必死に動かすとぼんやりと、見慣れた円盤をその視界に捉えた。


よく目を凝らしてみると、針はどちらも真下のあたりを指している。今は6z…いや、12時ちょうどか…こう、今では起きているとすぐに疲れてしまう。少し寝よう。そう思い私は目を閉じるのだった。


…!

いかんいかん、30分ほど仮眠するつもりがついつい深く眠りについてしまった。そう思い先ほど視界に捉えた円盤に目をやると、私は心底驚いた。

なんと、針の一方はほぼそのままの位置にあり、もう一方もほんの僅かしか動いていないのだ!


私は激しく動揺した。私は元来眠りが深い方で一度眠りについてしまえば最低でも2時間は寝てしまっていたからだった。


そこで一つの可能性にたどり着いたのだった。

わたしはひょっとすると一度命を失い、新たな器を授かったのかもしれない。


続けられそうだったら次話に続きます…

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