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奪われ続けたと思っていましたが、勘違いでした

作者: 浅村鈴
掲載日:2021/08/13

7歳の時、アメリ国の第一王子の婚約者選定で歳の近い貴族の娘達が王宮に集められ、何故かパッとしない私が第一王子ケルン本人から婚約者として選ばれた事に驚いたが嬉しかった。

ケルン王子は私に優しく私を認めてくれた。家族以外で私を認めてくれたのは王子が初めてだったから。

私には美しくて優秀な姉がいる。私の事を可愛がって愛してくれるけど、私の全てを奪っていた。姉に悪気は全くなくて、私より姉が魅力的なだけ。姉は事あるごとに私を褒めてくれた。可愛いと頑張ってると、凄いねと。でも姉がいると皆、姉に声を掛けた。姉が魅力的なのは分かっている。でも姉妹だからこそ、自分が価値のない者だと思い知らされていた。姉と比較されて惨めで辛かった。

だから私を認めてくれた王子の為に勉強も教育も全て頑張った。王太子に決まった直後から、他の女性と浮名を流しても今だけだと自分に言い聞かせて見ないふりをした。

それなのに、今私はケルン王太子から婚約破棄宣言をされている……。



「シンディ、お前とはこの場で婚約破棄を宣言する!」


「な、なぜですか?」


「言わないと分からないのか?お前みたいな面白くもなく、可愛げが無い女は飽き飽きしたんだ!俺の横にふさわしく無い事が理由だ!!

俺に相応しいのはシルビアだ!」


「シ、シルビアお姉様……」


ケルン王太子の隣に居たのはシンディの実の姉、シルビアだった。

シンディは余りの衝撃にその場に座り込んだ。


「シンディ、お前はロハス男爵と結婚を命ずる!俺とは無理だったが、最後の温情で、新しい婚約者を見つけてやったぞ!」


「……!!?」


ロハス男爵は悪名高い男爵だった。若い花嫁を迎えては暴力で従わせ、何人も狂死している。シンディが嫁げば一体何人目の花嫁と呼ばれるのか……。


「男爵に嫁げば、たまには俺も夜伽の相手をしてやるよ。男爵とは仲が良いし、文句も言われないからな。あはは!」


ケルン王太子の言葉に会場中言葉を失った。

国を守る王族が到底、口にして良い言葉ではなかったからだ。


嫌悪と恐怖で体がガタガタ震えた。


「嬉しくて震えてるのか?可愛い所もあるじゃ!?……っ!!」


言い終わるまでに王子は壁に吹っ飛んでいた。

シルビアが殴った為だ。


「私の大事な妹になんて事言うんですか!絶対に許しません!!」


「お、王太子の俺に手を出してタダで済むと思っているのか!」


「貴方はもう王族ではありませんわ。それにアメリ国に王族は居ません。というか、アメリ国自体ありません」


「な、なんだと!?」


「先程この国はアスガルド帝国の一部となりましたから」


そう言って黒髪黒い瞳の男性がシルビアの隣に立っていた。


「だ、誰だ!?貴様!!」


「貴様呼ばわりはやめて頂きたい。アスガルド帝国の皇太子の顔も知らないのか……?いったいこの国の王族教育はどうなっていたんだ?まぁ今となっては無い国だが」


アスガルド帝国の皇太子、ラファエルが答えた。


「アメリ国が無いってどういう事か聞いている!答えろ!」


ケルン王太子は真っ青になりながら怒鳴っていた。


「全く、負け犬ほどよく吠える。

先程我が国アスガルドが、アメリ国の王宮を制圧したんだ。王族に苦しめられていた、平民も貴族も喜んで手を貸してくれたよ。お前以外の王族は皆、王宮の地下牢に居る。お前を待ってるだろうさ」


「くそ!!お前のせいで娘は心を病んだんだ!お前に弄ばれ、捨てられたせいで!!」


「私の娘はその男に子まで孕ませられて、暴力を振るわれて2度と子供ができない体になったのよ!死んで償いなさいよ!」


もう王族では無いと聞いて、いままで我慢していた者達からケルン王太子に対しての憎悪が噴出していた。

このままでは誰かが殺してしまうだろう。こいつが死刑になったとしても、誰かに殺人を犯させるわけにはいかない。


「地下牢に連れて行け!」


ラファエルが兵に命令を出し、命令を受けた兵がケルンの両腕を掴み連れて行く。


「離せ!離せー!!」


状況を理解できないのか、ケルンは暴れまくっていた。それでも数人で押さえつけられ、連れて行かれた。


「俺の妹もお前に犯され、ショックで死んだんだ!もうすぐ結婚だったのに……。俺は幸運だ!すぐには楽にはしないからな。地獄の苦しみを味わわせてやるからな。死にたいと乞うても無駄だからな」


兵の1人はケルンに囁いた。ケルンは兵の言葉に目を大きくし、先の事を考えると絶望感から力が抜けていた。



「シンディ、大丈夫?」


シルビアはシンディを抱きしめた。


「お、お姉ちゃま…」


シンディはシルビアを幼い時に呼んでいた、お姉ちゃまと呼んだ。


「もう大丈夫よ。貴方は私が守るからね!大丈夫、大丈夫」


何度も頭と背中をさすってくれた。シンディは声を上げて泣き出した。小さな子の様に。




♢♢♢♢♢♢





後日落ち着いた私に姉とラファエル皇太子が説明してくれた。ケルンは盲目的な私を利用したくて婚約者にし、気に入った令嬢や侍女にまで手を出し遊びまくっていた。挙げ句の果てには市井に行き、気に入った娘を攫って犯していた。

その事に気がついた姉は怒り、婚約破棄をケルンからさせる為にケルンに近づいた。近づき、調べるとケルンだけでなく王族が堕落しダメなのだと分かった。

国王夫妻は王太子や王族を甘やかし、贅沢三昧し、全ての責任を他人に押し付け、市民に重税を課し、無能な息子の為、妹の人生も犠牲にさせようとしていた。そんな王族など、無くなってしまえと本気で思っていた。

シルビアの気持ちを察してくれた恋人、ラファエルが『それならば我が国としよう』と、言って力を貸してくれたのだと。

姉シルビアは本当に私の事を心配し、愛してくれているのだと分かった。

自分の卑しい気持ちに涙が出て止まらなかった。そんな私も愛しいと姉は抱きしめてくれた。

帝国の一部になった旧アメリ国は1年後重税も無くなり、市民も貴族の生活も安定していった。ラファエル皇太子もシルビアも復興に尽力してくれた。私は姉の手伝いをできる限りした。

そんな中ラファエル皇太子の側近で友人でもあるキース様が私に結婚の申し込みをしてくださった。私は婚約破棄された傷物だからと丁重にお断り申し上げましたが、そんなこと気にする方がおかしいと一喝して下さった。

お姉様の後押しもあり、キース様に嫁ぎ今は笑顔溢れる平穏な幸せに包まれた毎日を過ごせている。

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