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第4話

鬱蒼と茂る森の中で偶然鎧を身に纏い剣を手に百匹にも及ぶ黄緑色の肌をした毛の無い猿の様な生物と戦闘を繰り広げている場面に遭遇した斗真達一行は、茂みに身を潜め様子を窺っていたが、戦っている女性が劣勢であると判断し助太刀に向かおうと斗真と恭弥は其々武器を手に構える。心配そうな表情の紗江と葵をしり目に二人はタイミングを計り同時に茂みから飛び出す。

迫り来る二人の気配に気が付いた猿の様な生物と其れにつられる様にして二人を視界に捉える女性は驚きの表情を浮かべている。

女性が何か二人に向かって声をかけるが数匹の猿の様な生物が女性から二人へ標的を変え襲い掛かる。


「俺は左三匹。恭弥!右三匹任せた」


「おう!!」


距離を詰めながら標的を割り振り武器を構え駆ける二人。

先ず正面から来た一匹を斗真は刀で唐竹に斬り捨て続けて来たもう一匹を右斬り上げ向かって左側から回り込んで来た一匹を逆胴で斬り伏せ走り出す。

対する恭弥は、槍で斬り伏せ二匹目に突きを放ち三匹目を柄尻で首を殴打し首の骨を折り絶命させた後、槍に刺さっている二匹目事遠くへ弾き飛ばす。

それぞれ三匹仕留め終えたその瞬間、 更に三匹が迫っていた。


「はぁあ!!」「せやぁあ!!」


気合と共に刀と槍を振るいそれぞれ一匹ずつ仕留め最後の一匹を 斗真が刀を右薙ぎに振うが紙一重で躱され、反撃されそうになったところへ恭弥が槍を振るい首を斬り飛ばす。

 

「サンキュー恭弥、」


「あぁ、油断するな」


「おうよ!」


声を掛け合いながら二人は、女性の元へ駆け寄り背中合わせで猿の様な生物に対峙する。


「こんにちわ!助け必要です?てか言葉分かる?」


「えっと…はい!何処の誰かは知りませんが、助太刀感謝します!」


「おっ、良かった。言葉通じて」


「後にしろそういうのは。ところで、こいつ等全部倒してしまって構わんよな?」


「勿論。私も依頼でゴブリンを討伐に来ましたが…まさかこれ程の数が居るとは思いもせず困っておりました」


「ゴブリン!?そうか…取り合えず、自己紹介とか質問とかは、こいつ等倒してからでってことで!!」


「承知しました!!」


簡潔に言葉を交わしそれぞれ猿の様な生き物、ゴブリンとの戦闘を繰り広げていくのであった。


「てやあ!!」


「はぁあ!!」


斗真と恭弥は気合と共にゴブリンを次々に斬り殺していくのに対し鎧を身に纏った女性は両刃の長剣でゴブリンを静かに斬り伏せる。


「しっかし、まさかこの猿みたいなのがゴブリンとは驚きだ!」


「まったくだ。しかし言われてみれば理解できるし特徴からして納得がいく」


「この調子なら、ドラゴンとか居るんじゃねえのっ!」


「そうだな。だが居たとしても御目にかかりたくはねぇな!!」


ゴブリンを屠りながら軽口を叩く余裕が出て来る二人は武器だけでなく、拳や蹴りで打撃を与え敵の体勢を崩し確実にその命を刈り取る。

時間が経つにつれて二人の動きはぎこちなさと無駄な力が抜け動きも流れるように滑らかに、そして鋭く切れの在る攻撃を仕掛けていく。

背後に迫っていたゴブリンも声をかける事無く互いが仕留め合う様はまるで幾千もの修羅場を潜ってきた盟友、或いは戦友の様である。


「オラよっと!ふぅ、大分数が減ってきたか?」


「気を抜くな、命のやり取りしてるんだからな!」


「分かってるよ!っと、ん!?まずい、恭弥!」


斗真の焦りの声を聴いた恭弥が振り返ると三匹のゴブリンが

逃走を図っている所であった。

ただ逃走するだけならば、戦闘を避けるという意味では捨て置いても問題は無かったがゴブリン達が向かった先には、葵と紗江が身を潜めている方向だったのだ


「クソが!!」


「葵!そっちに三匹行ったぞ!」


ゴブリンを追いかけながら毒づく恭弥は二匹のゴブリンに行く手を阻まれ、葵に注意を呼び掛ける斗真も三匹のゴブリンに囲まれ苦戦を強いられている。

鎧を着た女性も二匹のゴブリンに挟まれ動けずにいた。

斗真の声を聴いた葵は刀を抜き茂みから出て迎撃態勢を取る。

紗江は茂みに身を潜め息を殺して気配をできる限り気配を薄くするよう努める。

逃走を図ったゴブリン達は、茂みの中から突如出現した新たな敵にほんの僅かに驚きはしたものの、現れたそれが、(メス)で有る事を認識し理解するまで凡そ2秒。

その際僅かに硬直するが、直ぐに動き出す。

しかしそれは、先程まで逃走を図っていたものではなく、獲物を見つけた捕食動物の様に一目散に葵へと向かって行くのであった。


「クギャ!クギャァ!!」


「ニギャニギャ!!」


「ギニギャ!!」


奇声を上げながら迫りくるゴブリン達を葵は、ゆっくり深く息を吐いて自身が持つ妖刀の村雨を抜刀し正眼に構える。

そして、ゴブリンが一足一刀(いっそくいっとう)の間合いに入った瞬間、袈裟斬りに一匹目を斬り伏せ、返す刀で二匹目を左薙ぎに斬殺。

最後の一匹は右足を軸にして反時計回りに反転し、飛び掛かってきたゴブリンを躱し背後から逆袈裟に斬りつる。

ゴブリンが断末魔の叫び声を上げて、息の根を止まったのを確認した後、葵は村雨を振って血払いをし鞘に納める。

最初の一太刀目から鞘に納めるまでの流れは無駄が無く洗礼されたもので間近で見ていた紗江は、その動き、所作の一つ一つに美しさとカッコ良さを感じ心から純粋に「凄い…」という言葉が口から零れるのであった。

行く手を阻むゴブリンと対峙していた斗真と恭弥は、葵がゴブリンを仕留める光景を視界の端に収めつつゴブリンを仕留めていく。

そして、10分以上かかって漸く最後の一匹を仕留め終えたところで斗真と恭弥は崩れ落ちる様にその場に座り込む。

二人とも返り血を浴びまくったせいもあってか全身からドブ川の様な悪臭が鼻を衝き疲労と相まって吐き気を漏らしそうになるのをぐっと堪える。

そこへ紗江を連れて葵が合流する。


「おう、葵。怪我無いか?」


「紗江も無事か?」


「心配してくれてありがとう。私も紗江ちゃんも無事だよ。そっちこそ怪我とかして…待って二人共、もの凄く臭いんだけど」


「あぁ、やっぱり?返り血浴びちまったみたいでさぁ……」


「この臭い…洗って落ちるか?」


合流した葵と紗江の無事を確認した斗真と恭弥は、目を逸らしたかった現実を指摘されガックリと肩を落とす。

そんな和気藹々とした四人の元へ、初めにゴブリンと戦っていた女性が剣を鞘に納めながら歩み寄ってくる。


「御助力頂き有難うございます。御かげで助かりました」


「あ~…いえいえ、偶然通りかかったもので…」


「いやぁ~、まぁね、流石にあの数は見過ごせんでしょ?」


吐き気をぐっと堪え平静を装いつつ女性からの感謝を笑顔で受け取る。


「申し遅れました、私はハンターギルド【ヴァルハラ】所属のミーシャ・クロイツと言います」


「これはどうもご丁寧に。自分は草薙斗真(くさなぎとうま)って言います」


水谷葵(みずたにあおい)です」


天宮恭弥(あまみやきょうや)です。それと、妹の紗江(さえ)です」


「紗江です宜しくお願いします。」


順番に自己紹介を済ませた後、ミーシャから近くに川が在るという情報をもらいゴブリンの死体処理をしている間に返り血を落とすよう提案される。

しかし、女性一人にこの大量の死体を処理させるのは流石に心苦しいので手伝うと申し出るとミーシャは申し訳なさそうに協力を願い出た。

ミーシャがゴブリンの討伐証明の為の右耳と心臓付近に有る魔石を切り取った後、斗真と恭弥が手分けして掘った穴に次々に放り込んで埋めていく。

ゴブリンの死体処理が終わってから斗真達は、ミーシャと一旦分かれ川辺で可能な限り返り血と汚れを落としていく。

だが、ゴブリンの返り血による汚れは中々落ちず乾かしている間に持っていたジャージへと着替える斗真と恭弥。

二人が着替え終わるころ別の場所で汚れを落としたミーシャが合流し斗真達はミーシャの案内でバーテンベルクへ向け移動を始める。

道中斗真達はミーシャに改めてお礼を言われ何かお礼がしたいと申し出てくれたが相談の末、この世界の事等の情報をもらうことにした。

その過程で自分達が異世界から来たと言う信じがたい話をしてみたところ、なんと二年前から今年にかけて何度か別の国で異世界から召喚された者達が居たというではないか。

その情報に驚きと 帰れるかもしれないという僅かな可能性に希望を見出した斗真達であったが残念ながら誰一人として送還されたという話は無く、むしろ二年前に三十一人もの人間が召喚されその者達が所属する大国が東の果てにある島国、ジパングと呼ばれる国へ戦争を吹っ掛けたが返り討ちに会い、国土の3分の2が地図から消え、残った国土も人間が住めなくなってしまい、召喚された者達も数人を残して死亡が確認されているという状態だ。


「それから間隔をあけて同じ様に召喚されたりその召喚魔法の影響で過去に召喚に使われていたと思われる遺跡の術式が誤作動を引き起こしてしまったりで現在貴方達の他に確認されているだけで六人ほど居るけど未だに誰一人、元の世界に帰ったという情報は聞かないわね」


「マジっすか…」


ミーシャの説明にガックリと項垂れる斗真達。

予想していた最悪の事態である元の世界に帰れないと言うことに酷く落胆し一番の年下である紗江に至っては眼に涙を浮かべてしまう。


「で、でも、基本的に召喚術って送還とセットになっているのが普通だから調べればきっと元の世界に帰れるはずよ!!」


酷く落ち込む斗真達にミーシャは、努めて明るく励ましの言葉をかける。

何の根拠も無く可能性は限りなくゼロと言える様な言葉であったがそれでも今の斗真達にはそれで十分だった。

ミーシャの言葉に斗真達はクヨクヨしててもしょうがないと気持ちを切り替え、これからの方針を決めていく。

と言っても、斗真達がこれからする事と言えばラノベやアニメでお馴染みの冒険者ギルドに登録して日銭を稼ぎたかったが生憎冒険者ギルドは存在しておらず、代わりにハンターギルドや魔法職の者が多く在籍している魔導士ギルドと言ったものがある事をミーシャから教えてもらうのであった。


「まさか冒険者ギルドが無いとはな。」


「それじゃぁ、ハンターギルドと魔導士ギルドどっちに入ったら良いんだ?」


「魔導士ギルドは一部例外を除いて紹介状や弟子入りとかが主流ね。ハンターギルドは基本的に誰でも加入する事が出来るわ」


「そうか、なら魔導士ギルドよりハンターギルドに加入する方が良いのか?」


「そうね。何なら私が所属してるギルドに入らない?」


「良いんですか?」


「勿論。貴方達さっきの戦闘中々よかったし、優秀な人材は大歓迎よ」


笑顔で勧誘するミーシャに斗真達は、相談し合った結果、ミーシャの勧誘を承諾するのであった。

それから暫らくしてバーテンベルク領の外壁が見えるところまでたどり着いた。


「見えて来たわ。アレがバーテンベルク領よ」


「おぉ…ありゃ外壁ってやつか?初めて見たぜ」


「大きい…」


「うわぁ~、でっかい壁!」


遠目からでも見える外壁の大きさに驚きを露わにする斗真と葵。その横では生まれて初めて見る外壁に興奮を抑えられずにいる紗江が兄である恭弥の袖を引っ張り今にも走り出しそうな勢いであった。

エイルスフェルト皇国の辺境地であるバーテンベルク領は、北に雪で覆われた山脈と東側に斗真達が通ってきた大密林、西側に長大な河川が流れている自然豊かな領地であるとミーシャから説明を受ける斗真達。


「さっきのゴブリンと遭遇した密林には魔物や魔獣が多く生息しているからそれらから身を守るためにあの壁が作られてるの」


「「あぁ~なるほどぉ~。そういうことかぁ~」」


斗真と恭弥は異口同音に感心した様子で外壁を眺める。

日本でも畑を荒らす害獣に対して電気や木で作った柵を用いるがこの壁は畑では無く都市全体を自分達が戦ったゴブリンや四つ腕熊や密林の中で目撃したモンスターのような生き物から守る為の物で在ると言われれば納得するのも当然でその規模の大きさに驚きを隠すなど到底無理な話である。

そんなことを話している間に城壁に備えられている大きな門の前まで辿り着くのであった。

だがしかし、門番から身分証か通行証の提示を求められたが斗真達はそのような物など持っている筈も無く如何したものかと悩んでいる とミーシャが助け舟を出してくれた。


「彼らは私の恩人なの」


「恩人?」


「ええそうよ。ゴブリンの調査と討伐に出向いたんだけど、街道付近に夥しい数の足跡を始めとする痕跡を見つけてしまって、街道から密林へ足を踏み入れ中腹まで入って行ったところまでは良かったんだけど其処で百匹近い群れに出くわしてしばらく戦闘になったの。流石に私一人だと多勢に無勢、万事休すといったところで偶然通りかかった彼らに助けて貰ったの」


ミーシャの説明に驚きの表情を浮かべる門番の男はミーシャと斗真達を交互に見ながら信じられないと言葉を漏らす。


「本当かよ…!?」


「そう思うのも無理は無いけど、本当なのよ」


「…兄ちゃん達名の在るハンターか?あん?黒髪に黒目………まさか、兄ちゃん達ジパング人か!?」


門番の男が驚きと恐怖の入り混じった悲鳴に近い声でジパング人かと叫ぶと近くにいた他の門番や順番待ちをしていた一般人がざわざわと騒ぎ始める。


「いやいや、この子達はジパング人じゃ無いから安心して。…まだ未確定だけど例の光の柱と関わりの在る子達かもしれないし」


「あぁ~、成程な。そんじゃこの後はギルドに連れてくんだな?」


「そうそう。はぁ~、報告が多くて気が重いわ」


溜息交じりに肩を落とすミーシャに門番の男はカラカラと笑いながらミーシャの肩をポンポンと叩きドンマイと声をかける。

そんなやり取りを終え門番にミーシャが斗真達の分の通行料を払って門を潜り城壁で囲まれたバーテンベルクへと足を踏み入れるのであった。


 ◆ ◆ ◆


門を潜った先で斗真達が目の当りにしたのは、石畳で舗装された路とレンガ造りの家が立ち並ぶ異世界物の定番とも言える街並みが広がっていた。

路を挟むように露店が並び食べ物や日用雑貨等々多種多様な物が売買されており人通りが多く活気に溢れていた。


「「おぉ~」」


「おい紗江とついでに斗真、迷子になるなよ~」


「おいコラついでってなんだついでって!!」


目の前に広がる街並みに目を輝かせてはしゃぐ紗江と斗真に迷子にならないよう釘を刺す恭弥。

すかさず恭弥に抗議するもスルーされる斗真をよそに一同は大通りを抜けバーテンベルク領の東側に見える大きな建物の前に到着する。

この大きな建物こそバーテンベルクが誇るハンターギルド【ヴァルハラ】である。


「「でっけぇ~…!!」」


思っていたよりも遥かに大きな建物を目の当りにして驚愕して

目を輝かせる斗真と紗江の二人にやれやれと肩をすくめる恭弥そんな様子を微笑ましそうに見つめる葵達四人はミーシャに促されギルド内へ足を踏み入れるのであった。

ギルド内に足を踏み入れると広いロビーの様な空間が広がり高い天井には八つのランタンが付いた木製のシャンデリアや何かの生物の角を無数に絡めてあるシャンデリアが複数ぶら下がっており広い室内を明るく照らす。

周りを見渡して見ると三階まであり職員と思われる黒地のスーツのような服装の人達と金属や革製の鎧を身に纏った人達が二階と三階に備え付けられた部屋を出入りしていたり、一階に備え付けられた掲示板の様な物に張られた紙を眺めていたりと多くの人で賑わっていた。

そんな中斗真達の目を引いたのはケモ耳と尻尾を有した獣人と呼ばれる人達と金糸のような長い金髪や雪の様な白銀の銀髪で笹穂の様な耳が特徴的なエルフと呼ばれる人々を見てテンションが高くなり始めて居た。


「おぉ~すげぇ!ザ・ファンタジーって感じだな!」


「うんうん♪あと酒場見たいになってれば完璧な王道ギルドだね!」


「おし、二人ともちょっと落ち着け。いったんお前たちは深呼吸をしなさい。キョロキョロするな恥ずかしい!!」


興奮のあまり阿呆な事を口走った斗真と紗江についに我慢できなくなったのか恭弥が二人の襟首をつかみ落ち着かせる。

その様子はさながら興奮した犬を宥める飼い主の様であったが葵にとっては見慣れた光景なので特に何もせず静観していた。

恭弥に半ば引きずられながらもミーシャと共に受付まで生きギルドに加入したい旨を伝えると手続きに必要な書類作成の為必要事項への記入を言われ、それを書き終えると一階の入り口から見て奥にある個室へと案内された。

部屋で待つ事数分、先程受付で書類を受け取った女性、レイラが人の頭程の大きさの水晶玉を携えてミーシャと共に入ってきた。


「それでは改めましてハンターギルド・ヴァルハラ所属の受付を担当しておりますレイラと申します。皆様は当ギルドへの加入申請とのことですがギルドの御利用は初めてですか?」


「あ、はい。初めてっす」


「承知しました。では、ギルドの説明をさせていただきます。まずギルドは世界共通のランク制で最低ランクのEから始まりD、C、B、Aと上がっていきAの上がSランクとなります。更にSランクの上に、一ツ星級というものが有り、そこから上がって二ツ星、三ツ星と上がっていき、最高ランクの十ツ星級までの計16段階となっております」


「へぇ~Sが最高ランクじゃないんだ?」


「そうですね。まぁ、一ツ星以上の【星持ち】と呼ばれる方々は人外とか化け物とか人の形をした災害だとか言われていて、Sランクの人と比べると桁違いと言う言葉が生易しい位で差があり、正に規格外の人…達?ですね。」


「おっかねぇ…そんなバケモンが居るんすか?」


「つうかマテ、さっき人達って疑問形になってたけどそれホントに人間なのか!?」


「人の形をした災害って…何をしたらそんなこと言われるんですか?」


受付嬢レイラの説明を聞いた斗真達は、顔を引きつらせながら思い思いにつぶやく。

そんな化け物みたいな人達がいる中で果たして自分たちはやって行けるの若干の不安を抱えつつレイラの言葉に耳を傾けていく。


「あ、大丈夫ですよ。星持ちは、()()()()()()()()一つの国家に2~3人居るか居ないかぐらいですし私もまだお目にかかった事は無いですね」


明るい笑顔で話すレイラの言葉に斗真達は、「そんなチートがゴロゴロ居ていったい何と戦うんだ?」と疑問に思いつつも口にはせずレイラの説明に耳を傾けていくのであった。


「ランクを上げてくのはどうやるんすか?」


「それには一定期間内に一定数以上のクエストを達成させるか、ギルドが指定した試験管の出す課題をクリアするか、或いは、特定のモンスターを討伐したりとその人が達成した功績や人柄や周りからの信頼等を踏まえてランクの上下が決まっていきます」


「と言う事は、降格も在り得ると?」


「勿論です。違法行為を行った場合はもちろんですがクエストの失敗数が多かったりパーティー間でのトラブル内容によってはランクの降格、或いは街からの追放、場合によっては…」


レイラはそこまで言って笑顔のまま、右手で自身の首に横一文字に払う。

それを見ていた斗真達四人は口の端を引くつかせながら苦笑いを浮かべていく。


「さて、長々と説明するより、詳しくはこちらの冊子をご覧ください」


そういって四冊の冊子を机に並べるレイラ。

斗真達は机に並べられた冊子を手に取りパラパラとページを捲っていく。


「冒険者の心得や禁足事項なんかが載ってるのか」


「何々?決闘や訓練以外でのハンター同士の私闘の禁止。

Aランク以上のハンターには緊急依頼の時、正当な理由が無い場合拒否権は無い。

クエスト失敗した場合、違約金として報酬の半分の支払い義務を負う。他には厳罰対象になる事とかか」


「失敗した上に違約金の支払い義務かぁ~。なるべく失敗は出来ねぇなぁ」


「それでは、皆さんの能力をこちらの水晶で測りますのでお一人ずつこの水晶に触れてください」


レイラにそう言われ斗真達は順番に水晶に手をのせていく。

斗真達が触れると水晶は、眩い光を放ち水晶を載せている台座から手の平大のカードが飛び出していく。

そのカードを受け取り目を通すと其処には顔写真入りで斗真達の情報が記載されていた。

但し、斗真達が持っているスマホに表示されていた情報とほぼ同じで、カードには名前、年齢、性別に加え魔力と霊力の数値に加え所属ギルド・ヴァルハラと成っている。

スキルが表示されなかったことでこの世界にはスキルという概念が無い事が判明し斗真は酷く落胆する。


「うわぁ~、スキルは無いのか…」


「そんなに落ち込むこと?」


「いやだってさ、スキルが在れば戦闘やら加工やら料理やらちょちょいのチョイじゃん」


「そんな楽してチート無双なんて出来るわけ無いでしょ」


落胆する斗真に葵がツッコミを入れたところでレイラは一つ咳払いをして自身に注意を向ける。


「そちらが皆様のハンターカードとなっております。所属はここヴァルハラギルドに成っていますが、拠点の引っ越しなどの理由で在れば自由に移籍も可能です。尚、そのカードは身分証にも成っておりますので無くさない様にしてくださいね?再発行には5000エン掛かりますので御注意ください」


『5000エン?』


レイラが紛失しないよう注意をしている中、エンと言う聞きなれた通貨の単位が発せられ斗真達四人は揃って驚きの余り同時に聞き返してしまう。


「すみません、一つ確認なんですがこの国で使われている通貨を教えて貰えますか?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


恭弥が恐る恐る質問するとレイラは快く頷きポケットからいくつかの硬貨を取り出し机の上に並べていく。


「先ずこちらの銅貨が1枚1エンに成っており、それより少し大きい銅貨を大銅貨と言いまして、こちらが1枚で10エン、それでこっちの四角い板状のものを銅板と言いまして、こちらが1枚100エン、次が銀貨に成って1枚500エン、二回り大きいのが大銀貨で1枚1000エン、板状の物を銀板と言いこちらが1枚5000エン、次にこちらの金貨が1万エン、少しい大きい大金貨が10万エンとなっております。生憎只今私の手元には無いのですが、この更に上に、1枚100万エンの金版、1枚1千万エンの大金版と続き最高が白金貨となっており1枚で1億エンとなっております」


斗真達四人は、通貨の説明に耳を傾けながら机に並べられた硬貨や金属板を手に取りその形や描かれている模様等を様々な角度から眺めていく。


「あぁ~…やっぱりと言うか何と言うか、俺等の知って居る通貨とは違うな」


「金属板の代わりに紙幣が発行されてるしな」


「と言うか金貨から上の値段の上り幅が10倍ずつに驚いたわ」


お金の単位が自分達の暮らしていた日本のモノと同じであるが貨幣が違う事に驚きつつもギルド員の話をしっかりと聞いた斗真達はその後、ダンジョンと呼ばれているエリアが在る事を聞きその説明を受けた後、地下訓練場へと案内された。


「おお、広いなぁ」


「天井までの高さからして二階分は在るんじゃねぇか?」


「広さ的に東京ドームと同じくらいかな?」


「ねぇねぇ、これから何が始まるの?」


「そりゃぁギルドの訓練場に来てやる事って言ったらねぇ…ラノベじゃお決まりの腕試しってところでしょ」


暢気に話している斗真達に紗江が聞くと斗真は自身の持つ武器、斑鳩を取り出しながら自分達の向かい側に居るレイラとその隣に佇むドレスアーマーに身を包んだ茶髪のセミロングが綺麗な高身長の女性に意識を向ける。

身長は約170センチ。21歳という若さでSランク保持者なのだと小声でミーシャから教えて貰った斗真達は揃って驚きの表情を浮かべる。


「それでは、最後に此処で皆さんの実力を見せていただきます。ルールは、此方におりますヴァイオレットさんに制限時間15分以内に一撃入れるだけです。勿論、皆さんのうち誰か一人でも一撃を与えられればそれでOKです。禁止事項としましては、殺傷力の高い攻撃魔法及び魔術の使用は禁止です。それ以外で在ればどんな手段を使っても構いません」


にっこりと笑顔を浮かべながらさらりと言うレイラをしり目に斗真と恭弥はストレッチを始める。


「いやぁ~めっちゃ美人なお姉さんを殴る蹴るの暴力振うとか俺には厳しいかもなぁ」


「俺たち平和主義だもんなぁ暴力とか苦手なんだよなぁ」


「いやいや、しっかりストレッチしてやる気満々なくせに何寝言言ってるの?」


行動と言動が真逆な斗真と恭弥に葵が呆れ半分にツッコミを入れつつ葵自身もしっかりと準備運動をする。

紗江は戦闘には参加せず三人を応援する為ミーシャに連れられ安全な所へ退避する。


「よし、そろそろ準備はいいかいお二人さん」


「いつでも」


「準備体操終わり!私も大丈夫だよ」


「OK。お待たせしました。申し遅れましたが草薙斗真と言います。今日はよろしくお願いします」


「天宮恭弥です、宜しくお願いします」


「水谷葵です。宜しくお願いします」


「これはどうもご丁寧に。本日、皆様の実力を見させていただきます、ヴァイオレット・F・スカーレットと申します。以後お見知りおきを」


しっかりと準備運動を終えた三人は、ヴァイオレットと向かい合い挨拶を交わすと、ヴァイオレットもそれに応える様にドレスアーマーの裾を摘まみお辞儀をするカーテシーの礼を取る。

その洗礼された所作と動きに思わず見とれる三人であったがすぐさま気持ちを入れ替え戦闘態勢に入る。


「それでは、模擬試合を始めます。レディー・・・ファイトッ!!」


レイラの掛け声を合図に斗真と恭弥の二人は、勢い良く駆け出すのであった。

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