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プロローグ

 

 日本のとある山奥にある田舎町。

 5月も終盤に差し迫って野山は深い緑に覆われる季節の頃。

 チャイムが鳴り学校から生徒達が一斉に下校し始めていた。


「あぁ、マジで疲れたぜ今日の授業」


「もうすぐテストだからな。教師陣も気合が入っているんじゃないか?」


「いくら先生達が頑張ったからって俺らの成績が上がるわけじゃねえのに御苦労なこって」



 気怠そうに校舎から他の生徒に交じって、てくてくと歩いてくる二人の男子生徒。

 溜め息交じりに悪態をついているのは草薙斗真くさなぎとうま、そんな斗真の隣で相槌を打つのは彼のクラスメイトの天宮恭弥(あまみやきょうや)

 去年の事だが二人が通う学校に入学した頃、同じクラスに成り偶々席が近かったことをきっかけに意気投合した二人。以来お互いに親友と言える関係に成った二人はこの後の予定を話し合っていると、二人の背後から誰かが駆け寄ってくる気配がして振り返ろうとした瞬間、二人の首に回された腕によって軽い衝撃を受け締め上げられる感覚と何やら柔らかいモノが当たっている感触が伝わって来た。


「もう!二人共先に帰ろうとしないでよ!一緒に帰るって約束だったでしょ!」


 二人に絡んできたのは、斗真と幼少の頃からの付き合いがある女子の名は、水谷葵(みずたにあおい)

 運動神経も良くテストでは全教科80点以下をとったことが無い才女で更に男女問わず先程のようなコミュニケーションをとるので校内ではかなりの人気者だ。


「んだよ葵!いきなり首絞めんなよ!!」


「そうだ、お前はもう少し女子としての恥じらいというものをだな!!」


「恥じらいも何も、どうせあんた達私の事異性として見て無いでしょ?」


「「当たり前だろ?」」


「よぉしお二人さん、死にたいのかしら?」


 額に青筋を浮かべ爽やかな笑顔のまま二人の首に回していた腕に力を入れていく葵。

 その腕の中でギャーギャーと悲鳴を上げ高速で葵の腕を掌でペチペチと叩き降参の威を示す斗真と恭弥。

 そんな事をしながら校門まで行くとランドセルを背負った一人の少女が待ち構えていた。


「お兄ちゃんたち遅いよ。紗江待ちくたびれちゃったよ!!」


 そう言うや否や少女は恭弥へと駆け寄り勢いよく抱き着く。

 少女の名は天宮紗江(あまみやさえ)と言い、名前の通り恭弥の実の妹である。

 やや人見知りで少々ブラコン気質な性格が玉に瑕だが恭弥も妹の紗江に甘い部分もあり少々…否、かなりシスコン気味なところがあり、兄妹仲は比較的良好である。


「悪かったな紗江。お詫びにコンビニでアイス買ってやる」


「やったぁ!!」


「ホント恭弥は紗江ちゃんに甘いよなぁ」


「妹を溺愛して何が悪い?」


「そんなことを、さも当然の様に真顔で言うな!」


 そんな事を和気藹々と喋りながら四人は、学校から数百メートル離れた所にあるこの田舎町唯一のコンビニへ立ち寄り御菓子や飲み物などを購入し更に歩いて15分程の所に在る神社で休息がてら御菓子を食べ談笑していると、ふと辺りが急に暗くなり始めた。


「ん?なんか暗くね?」


「まだ日が落ちるには早い筈だが?」


「あ、ねぇねぇ見て見て。日食始まってる!!」


 急に暗くなったことに疑問符を浮かべていた斗真と恭弥達だったが、紗江の言葉に空を見上げる。

 手で影を作りながら見上げると太陽が暗い影に欠けていく様が見て取れた。


「おぉ、今日って日食だったっけ?」


「そんなニュースなかった筈だが?」


「まぁ田舎だから情報が入ってくるのも遅かったんじゃない?」


「いやいや、今のご時世ネットがあんのに情報が入って来ねぇとか」


「でも、電波悪すぎてアンテナ立た無い事なんてざらじゃん?」


「それな。事実この神社だってアンテナ立たねぇし」


 そんな雑談をしながら斗真はカバンの中をごそごそと漁り黒っぽい下敷きを取り出す。


「おっコレいけるな!」


「俺も確か持ってたな……あったあったこれ使えば目をやられなくて済むだろ」


 斗真と恭弥が取り出した下敷きを使って日食を眺める四人。

 しばらくして、完全に太陽が欠け、黒い影の周りに光りのリングが浮かび上がる金環日食に成ったその時、斗真、恭弥、葵、紗江の四人が持つスマホがけたたましく鳴り響き、その音に驚いた四人が次に目にしたのは、四人を囲む様に足元に

 ゲームに出てくる様な魔方陣と思われる図形が浮かび上がり目を覆うような光を放ち四人を飲み込んでいく。

 そして日食が終わった時には光も収まりはしたものの、そこには、四人の少年少女の姿が影も形も無くなっていたのであった。

夜の九時を過ぎても帰宅しない事に四人の両親達は、直ぐに警察へと駆け込み捜索願を出し自分達も手分けして探したものの、何の手掛かりも得られず、不安と悲しみに苛まれる日々を送る事となった。

尚、四人が居なくなった日にニュースで日食の報道が流れた後、都道府県の七ヵ所で光の柱が観測され話題となった。

特にその観測された内の一つは東京のとある学校から観測された後、教員と生徒併せて31名が行方不明とのニュースがテレビやネット等で取り上げられ注目された。

また、光の柱が観測された他の場所でも同様に数名の行方不明者が出ていたとの情報が上がっているが誰一人発見されることはなかった。

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