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第2話



 仕事帰り、いつものように深夜に程近い時間。

 帰宅するために最寄駅に降り立ち、そんなに広くない通りをトボトボと歩いていた。この時間になると車通りもまばらになり始めるが、幹線道路へ通り抜けるのに便利だからかトラックが何台か私を追い抜いていった。

 住宅街が近いからか飲食店は駅の周囲にしかないから、少し歩けばだんだん静かになってくる。

 寝る前に少しだけ本を読むか、猫動画をいくつか見るか、と取り止めもないことを考えていたら、目の前を素早く何かが走り抜けていった。


 それが猫だと認識してからは、無意識に追いかけていた。

 少し珍しい毛色の子だとか、鈴の音がするから飼い猫っぽいだとか、無意識ながら思った。

 ただ、猫の走っていった先はトラックがよく通る道で、そして運悪く反対車線から大型車が向かってきていた。猫はトラックのライトに晒されビクリとし、思わずといった風に足を止めてしまっている。


 ああ、ダメだ。轢かれてしまう。強烈な光にすくんで動けないんだ。


 ーーー助けなきゃ。


 走って追いかけた勢いのまま、猫を救い上げて抱きしめる。

 と、同時に私たちはトラックに轢かれた。

 少しでも猫が救われる可能性をあげようと、トラックに背を向け身体を丸めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 トラックに轢かれた後、一度途切れた意識が再び浮上する。


 ・・・あの衝撃だ、私は死んでいるはず。

 だったらここは天国だろうか、痛みは全くない。

 どこまでも明るく白い空間。だけど、白以外何も見えない。何の音も聞こえない。体の感覚はなく、温泉に浮かんでいるように暖かくフワフワとしている。


 ぬるま湯のような場所でぼんやり漂っていると、目の前に何かが現れた。意識を向けて見ると、そこにいたのは私が助けた猫だった。

 なんてことだ、この子まで死んでしまったのか!


 私が悲しみに呆然としていると、猫はクスクスと笑い出した。

「大丈夫だよ、ボクは君のおかげで無事だから。」

 猫が普通に喋りだしたのでギョッとした私に、そのまま気にせず猫は話し始めた。

「ここは世界と世界の狭間。普通の生き物は生きた状態では来れない場所だよ。

 君は今魂だけでここにいる。意識があるのはボクがちょっと力を貸してあげたからさ。」


 そう言われ、改めて意識を集中させて周囲を見渡してみた。すると、先ほどまで見えなかった世界のつなぎ目が見えるようになった。

 あちこちに窓のようなものが浮いており、その向こう側はどこかの景色になっている。一番近い窓は、どうやら元いた世界・・・地球、私たちのいた現代日本に繋がっているらしい。何となく見覚えのある景色だ。きっと事故現場からほど近い場所だろう。


「あの時は正直、助かったよ。驚いて思わず動きを止めちゃったからさ。

 いくら大精霊であるボクとはいえ、あんな鉄の塊にあの勢いで体当たりされたらうっかり消滅しかねないからね。まあ、その所為で君が犠牲になってしまったのは申し訳なくて、ここに来てもらったわけだけど。」




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