水底のアーティファクト
二ヶ月も更新をサボって申し訳ないです。
これまでのざっくりしたあらすじ
アーティファクトの回収を買って出たウミ王女。自信満々に語るその方法とは……!?
プロセクールの王女、ウミが片手を挙げる。
「『海よ、海神よ、その海鳴りを囁きへ!』『我が身を海の眷属へ!』『海の水は血よりも濃く、我らの命のふるさとである!』」
国歌を高らかに歌い上げると、白く泡立っていた波が渦を巻いてウミを包んだ。
青い水の中で、彼女の身体が白い鱗へと変わる。
人魚のような尾鰭を持つ下半身、真珠貝のような羽、人間の上半身。
無知な人が見れば、魔物と叫んでしまうような姿をしたウミは、船から海中に飛び込んだ。
「プロセクールの王族は、竜人の末裔だったのか……!」
人と人ならざる者、二つの身体を持つ種族。
プロセクールの王族の秘密を知った俺は、興奮しながら船の柵にしがみついてウミの姿を探す。
「すごい、もうあんなに深く潜ったのか!」
「あの尻尾があるなら泳ぐのもはやいね」
俺が落ちないように腰を抱き抱えながら、エルザも水面を覗き込む。
暗い海底に消えたウミは、すぐに宝箱を抱えて戻ってきた。
波を巻き上げながら、彼女は船の上に降り立つ。
空中でまた変身し、ほっそりとした白い足で堂々と仁王立ちしている。
「ふふん、私にかかればこんなものよ!」
海のように深い青色の髪を揺らし、海水の雫を手で払いながら小さな宝箱を掲げる。
「これが、かつて勇者たちが持っていたというアーティファクトよ! さあ、ハリベル様、私の気持ちを受け取って!!」
「まあ、ウミ王女殿下、誠にありがとうございます! 回収していただいたアーティファクトをみなで有効活用いたしますわ!!」
「は?」「なにか?」
バチバチと火花を散らすルミナスとウミ。
その光景をハリベルは早くも遠い目をしながら眺めていた。
「アーティファクトってどんなものなんだ? ルチアは知ってるか?」
「カインが知らないことを私が知ってるわけないじゃない……うえっぷ」
「たしかに」
ルチアの冷たい一言に思わず納得してしまった。
しかし、何も知らないでいるのは気持ち悪いので、大まかな予想を立ててみる。
かつて、プロセクールの王族から勇者が生まれたことがある。
第八王女の彼女は、人の才能を見抜くことができたという。
一目見ただけでスキルの名前だけでなく、過去すら知り得たとかなんとか。
魔術に長けていたというから、杖や魔道具の類だろうか。
「まあまあ、二人とも。喧嘩はそれぐらいにして、アーティファクトの確認をしたらどうだ?」
一向に話が進まないことに苛立ったバーリアンがついに口を開いた。
ルミナスとウミは同じタイミングで咳払いをして、ハリベルを見据える、つーかあれはもう睨んでるってカンジだ。
「ひえっ、わ、分かったよ……じゃあ、開けるからな」
ビクビクしながら、ハリベルはウミから受け取った宝箱を開けた。
そして、彼を不幸が襲う!!
宝箱を開けた隙間から、黒い液体が噴出!
「ぎにゃあっ!?」
その液体を避けることも叶わず、ハリベルの顔面に直撃。ガボガボと口に入った液体を噴き出しながら、彼は悲鳴をあげた。
「まあ、タコですわ! めでたい!!」
宝箱に手を突っ込んだウミが引っ張り出したのは、にゅるにゅると八本足を動かす海洋生物のタコ。
(なにあれ、魔物?)
(普通の動物だぞ。狭いところを好むらしい)
(へえ〜)
エルザとヒソヒソ囁きながら、タコを海に返すウミの背中を見守る。
いかにもヌルヌルした生き物を素手で触るウミは凄い。
……近衛侍女が黒い液体のついたドレスを見て青ざめているのは見なかったことにしよう。
「ぺっぺっ、なんだこの黒い液体は。んで、肝心の中身は……巻物?」
海水を吸った巻物を手にしたハリベルが困った様子で俺とルチアを見る。
水を吸ったそれを受け取って、破らないようにそっと開いてみる。
「なあ、カイン。これ、何が書いてあるんだ?」
「あ〜、これは一昔前の言い回しだけど、なんか小難しいことが書いてあるな」
隣に立っていたルチアが、文字を読んだせいでさらに顔を青くしていた。船酔いなのに無理するから……
巻物は水を吸っているのに、文字を読むのに全く支障がなかった。これも古の技術というやつだろうか。
「『【数秘術】が一柱、魔神フォーミュラの力を利用したレベルという概念とそれに伴う社会理論』? なんじゃそりゃ」
アーティファクトと称された巻物の中に記されていたものは、どこかで聞いたことがある単語を文章に混ぜ込んでいた。
色々と迷走してましたが、初心に帰って頑張ります。




