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性転換の一時的な解除

前回のあらすじ

 ハリベルが家系図に加わった(テレレレッテテテーン)


 話があると冒険者ギルドの仮設テントへ来るようリカルドに呼び出され、そこで『ワイバーンの巣窟』にある宝玉の破壊を依頼された。

 今回は他の冒険者たちも怪我から復帰したリハビリも兼ねて手伝ってくれるとのことだった。


 破壊不可能だった宝玉だが、ネイマーは俺たちの情報を元にとある『装置』を制作したらしい。


「なあ、ネイマー。その装置はいったいどんな原理で宝玉を破壊するんだ?」


 大の男、それも剣を払うほど筋肉があるハリベルでさえ壊せなかった宝玉。

 それを掌よりも小さな装置程度で壊せるとは思えないようで、ハリベルやルチアたちも懐疑的な視線を送る。

 ネイマーの頭脳を疑うわけではないが、にわかには信じがたいというのが俺の見解だ。


「ふむ、よくぞ聞いてくれた!」


 傾いた眼鏡をくいっと直し、皺がついた白衣の襟を立てる。


「ダンジョンというものは魔物の骨に刻まれた真言よりも強力な言語が使用されている。つまりは、魔術よりも上位の奇跡に準ずる法則によって命令が刻まれ、実行されているのだ」


 ネイマーの雨のように捲し立てる声に、バーリアンが静かに柔軟を始めた。

 話を聞いて理解するつもりは毛頭ないらしい。


「奇跡、ですか」


 ネイマーの忖度しない発言に、静かにルミナスが眉をひそめた。

 教会の人間は奇跡と魔術を混同すると怒り狂うので、いつルミナスが怒り出すんじゃないかと俺はひやひやする。


「これはその法則を解読し、無効化するものだ。これを使えば……」


 そう言ってネイマーは俺の額に機械をかざす。

 ピッという初めて聞く不可思議な音が響いた次の瞬間、カッと閃光が仮設テント内を照らす。

 俺はあまりの眩しさに悲鳴をあげ、


「うわ、まぶしい!」


 己の喉から飛び出した懐かしい低音に驚く。


「────は?」


 誰が聞いても変声期をとっくに過ぎた男の声と答えるだろう。

 ルチアやルミナスと同じぐらいだったはずの視線の高さは、いつのまにか俺よりも低くなっていた。


 呆然としながら、己の掌を見つめる。

 ……男の手だ。

 服は長袖の緩いローブを着ていたから大惨事にはならなかったが、いかんせん縦に伸びた分の丈が足りない。

 剥き出しの足首が外気に触れて、とてもスースーする。


 ネイマーは突然変化した俺の外見を眺め、満足げに頷く。


「うむ、一時的にではあるがダンジョンコアの効力を無効化することに成功したみたいだな」


 能天気にそんなことを呟きながら、装置のメンテナンスを始めるネイマー。

 唖然とする仲間たちの視線を浴びながら、俺はぷるぷると震えた。


「男に戻れてよかったじゃないか、なあバーリアン?」

「おお、そうだな。なんだかんだこっちの方が見慣れてるからしっくり────」


 まるで喜ばしいことのように顔を明るくするハリベルとバーリアン。

 ルチアとルミナスは口元を押さえ……エルザの方は怖くて視界に入れたくない。


「え……そんな……!?」


 ネイマーの眼鏡に映っていた姿は、たしかに男の姿になった俺だった。

 短く刈りそろえていた金髪はすっかり肩に触れるまで伸びている。


 どさり


 俺は膝から崩れ落ちて地面に手をつく。


「くっ、殺せ……!!」


 美少女じゃなくなった、ただの一般人の(おれ)に価値なんてない。

 絶望に暗くなる視界に俺は意識を手放した……。





◇◆◇◆




 なんて、精神的ショックで倒れるほど俺の心はやわじゃない。

 喪失感から目を逸らしてハリベルたちと共に仕事に向かう。

 その途中、父さんが満面の笑みで俺に『本当は五年前にお前に渡したかったんだが」と言って鉄製の杖を渡してきたらしいがまったく覚えていない。


 今の俺は無心でダンジョンに巣食う魔物を薙ぎ倒す一介の魔術師だ。それ以上でもそれ以下でもない。


「な、なあカイン……」

「なんだ、追加の敵か?」

「いや、そういうのじゃなくて……なんか、変だぞお前……」

「道中のつゆ払いという、自分の役割を果たしているだけだ」


 父さんがくれたという杖を振るう。


 ──ズパァン……


 今にも飛びかかろうとしてきたスライムは、一瞬で動かない粘液の塊へと姿を変える。

 スライムの弾ける音が洞窟内に木霊した。


「お、おお……無理はするなよ……」

「勿論だ、身の程は弁えている」

「あ、あぁ……」


 スライムが霧散していく姿を見守りながら、俺は手に持った杖で地面をコンと突く。


「今ので最後か。ここが四層目だから、次が目的地だな」


 各自、休憩を取る仲間たち。

 何故かチラチラと俺を見ては仲間内で目配せをして、俺の背後にいるらしいエルザに視線を送る。

 男に戻ってから、俺は極力エルザのことを視界に入れないようにしていた。


 俺は杖を伝い落ちる粘液をタオルで拭う。


 錫杖の形態ではあるが、それは異様なデザインだった。

 輪の代わりに鉄球が四つ、先端部分に繋がれている。

 鍛冶屋の父さんが作っただけあって、杖の攻撃力は高い。

 術具としての機能を損なうことなく、打撃武器にまで昇華していた。


 ぼんやりと杖の手入れをし、マジックポーションと毒への耐性を強めるポーションの確認をしながらネイマーの言葉を思い出す。


『それはあくまでも一時的なものでね。一週間で元の──元なのか? まあ、とにかく性別が変わる。ゆくゆくはこの技術を応用して……』


 一週間。

 ()()()()()()、俺はエルザから別れの言葉を切り出されないように上手く立ち回らないといけないのだ。

『クリスマスに投稿するなんて、作者くん彼女いないのぉ? プークスクス』『昨日、4°Cのハートのネックレスを貰いました♡』『これからクリスマスケーキを受け取って家族と食べます』という生き物は是非ポイント評価・感想をお願いします!

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ああああああああああああクリスマス滅びろおおおおおおおおおおおお!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] TSしてからこっち、かなり早く馴染んで女の子ムーブしてただけにショック大きいだろうな……
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