再会
前回のあらすじ
いちゃいちゃした
『ワイバーンの巣窟』での死闘から数日後。
俺はエルザと手を繋いで村を散歩していた。
すっかり息が白くなるほど寒くなって、雪も降り始めてきた。
いよいよ冬本番ってカンジだ。
「雪が降ると冬だなーって思うなあ」
「そうだね。この時期は村のちびっこと一緒に雪合戦してたのが懐かしいよ」
「なにそれ面白そう」
「びしょ濡れになるからやめた方がいいよ」
俺がぼんやりとびしょ濡れエルザについて思いを馳せていると、エルザが「あ」と声を漏らす。
名残り惜しくも妄想を一時停止して、思考を現実に戻す。
「ねえ、カイン。あの二人ってガイストス研究所にいた人たちじゃない?」
「ガイストス博士にネイマー、二人してパイポカ村に来たのか」
魔物に関する調査に情熱を燃やすネイマーはともかく、足を悪くしたガイストス博士まで辺境の村に来るなんてよっぽどのことがあったに違いない。
二人が冒険者ギルドに向かうなか、背後から最近は見かけなかったルチアとルミナスが声を掛けてきた。
買い物の途中だったのだろう。
「あら、カインさんにエルザさん。こんにちは」
「こんなところでもいちゃついてるなんて本当に見境がないのねアナタたちって」
【聖女】の称号に恥じない優雅なカーテシーで俺たちに挨拶をするルミナス。
その横ではルチアが腕組みしながら顔をツンと俺たちを見下している。
顔は双子でそっくりなのに、趣味嗜好や振る舞いから性格に至るまで正反対な二人だ。
この二人を見ていると、育つ環境が違うとここまで差が出るのかと思わずにはいられない。
「ルミナスさんにルチアさん、こんにちは。体調が回復したようでなによりです」
エルザはにっこりと微笑みながら、わざとルチアに見せつけるように俺と繋いでいた手をほどき、今度は指を絡めて繋ぎ直した。
不敵に微笑むエルザと無言で睨むルチアの間に火花が散る。
これが女の戦いってやつか(ゴクリ)
「何をやってるの、ルチア……そういうのを藪蛇って言うのよ」
「煩いわよ、ルミナス姉さん」
呆れた様子で釘を刺すルミナスに噛み付くルチア。
病み上がりでも相変わらずな二人だ。
「二人はもう出歩いて大丈夫なのか?」
「ええ、さすがにまだ戦闘は無理ですが日常生活程度ならば問題ありません」
「むしろ元気なアンタがおかしいのよ」
ルチアは腕組みを解くと、肩までの長さを持つ髪を指でクルクルと弄び始めた。
「どうせ二人とも暇なんでしょ。ちょっと顔貸しなさいよ」
「俺たちが?」
エルザと顔を見合わせ、ルチアの顔をもう一度見る。
俺の記憶が正しければ、ルチアは複数で行動することを嫌う。
人嫌いといっても差し支えないほど、単独で行動したがるのだ。
それで何回、迷子になったルチアをみんなで探し回ったことか……って今はそんな話はどうでもいい。
問題は何故、ルチアが俺たちを誘ったのかということだ。
「カインさん、私からもお願いします」
「ルミナスまでどうしたんだよ」
すっとルミナスが俺に近づいて耳打ちをした。
「少し……ハリベルのことでご相談が」
「ハリベルが?」
ルミナスの真剣な表情を見て、ただ事ではないと判断した俺はコクリと頷いた。
「ここではなんですので、私たちが借りている宿でお話でも」
そう言って、ルミナスは俺たちを宿屋へと案内したのだった。
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