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傷跡と花の君  作者: 納涼
第ニ章 わたしと私の共同生活
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#8 ドキドキショッピング

「どう千秋!これもかわいくない!?」

「すっごいかわいいよ~えへ、えへへ」

「ち、千秋ちょっとキモチわるいよ?」


 ふたりの店員さんが服を選び、未春がそれを着る。まるでファッションショーだ。わたしは更衣室のカーテンが開くたびに褒めちぎりながら写真を撮る係。店員さんたちは最初こそ未春の傷を気にしていたが、次第に警戒心を解いてくれたようでノリノリで服を選んでくれている。

 そして何より未春がかわいい。やっぱり素材がいいから何着ても似合うんだなあ、ずるい。


「ぜんぶかわいいし選べないから、ぜんぶ買っちゃおっか」

「え!?ほんとに大丈夫なの?」

「心配しないで。その代わり、この服着てまたお出かけしようね。あ、じゃあこれ全部お願いします~」


 店員さんが笑顔で服を運んでいく。未春はまた更衣室に引っ込んでしまったので、お会計をしてくれている間店内をぶらつく。あ、このキャップもボーイッシュな感じで似合いそう...買っちゃお。

 キャップをレジの店員さんに渡すと、周りを確認してから小声で話しかけられた。


「あの、妹さんですか?」

「あ、いえ...妹ではないんですけど、妹みたいなものです」

「そうなんですか...すごく仲がいいのでてっきり姉妹かと思いました」

 昨日出会ったばかりです、とは言えない。確かに会って2日目にしてはわたしと未春の距離は縮まりすぎている気がする。

「お会計、こちらになります。カードですね」

 傷のことに触れないあたり、さすが接客のプロだ。お客との距離感は心得ている。

 計10着+キャップでわたし史上最高額の買い物になったが、わたしの眼福も兼ねているので全く懐は痛くない。


 平日で他のお客が少ないのもあり、店員さん総出で店の外まで見送りに来てくれた。

「ご来店ありがとうございました!」

「いえ、こちらこそ。また来ますね~」

 着替えを済ませた未春と一緒に店を出る。

「いきなり大荷物になっちゃった」

「最後にすればよかったね」

 大きな袋二つ分の服をわたしと未春で半分ずつ持ち、空いた方の手は未春に握られる。

「ありがとね、千秋。大好き」

「う、うん」


 つい顔を背けてしまった。未春のそれは違うとわかっていても、面と向かって言われるとドキドキする。繋いだ手から未春に悟られないよう、なんとか深呼吸して平静を保つ。すーはー...。


「じゃあ、あとは日用品とご飯の材料買って帰ろっか」

「...どんかん千秋」

「へ?土管?」

「なんでもなーい」


 土管...珍しい悪口かな。よく分からないけど、本気で怒ってるわけじゃなさそうだしいいか。ぷりぷりしてる未春もかわいいし。


「今日の晩ごはんはいかがしましょう、未春シェフ」

「うむ。未春はハンバーグをしょもうする」

「ははー」


 好きなものを食べたら機嫌も直るだろう。作るのは未春だが。いやわたしも手伝うけど。

 わがままお姫様シェフ(設定が渋滞している)の指導の下、買い物を楽しんだ。


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