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傷跡と花の君  作者: 納涼
第三章 わたしと私の深まる関係
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#19 揺蕩う愛の逢瀬

 目が覚めると、見慣れた天井があった。時計を見るとまだ朝の4時を過ぎたところだけど...何か違和感がある。

 昨日は...愛華たちと買い物に行って、カフェで話して、それから...どうしたんだっけ?

 まだ寝ぼけてるからかな、とひとまず布団から出て顔を洗いに洗面所へ。鏡に映る私は髪も少しぼさぼさで、どうやら昨晩お風呂にも入っていないらしい。

 顔を洗ってリビングに戻り、ベッドですーすーと寝息を立てる千秋の顔を見た瞬間、昨晩の記憶が蘇ってきた。


 そう、愛華たちと別れた後、路地に入って、千秋が私にキスを...んん?

 いつもの千秋はそんなことしないだろうし、さっき見た夢が記憶とごちゃまぜになってるのかな。

 ...ま、いっか。千秋が起きたら聞けばいいや。

 お腹までずり落ちた千秋の布団をかけ直してから、お風呂に向かった。



 久しぶりの朝風呂はとても気持ちよかった。頭もすっきりしたし、髪もきっちりいつも通り。

 そろそろ朝ごはん作らなきゃ、とリビングに戻ると、千秋がぼーっと座っていた。

「千秋、おはよ」

「......おはようございます」

 うつろな目をしたまま千秋は私に向かい、


「申し訳ありませんでした......」

「え、ええ......?」

 額が床につくほどの綺麗な土下座をした。



「......なるほど。それで千秋は土下座してるわけね」

「本当にすいませんでした...なんでもします......」

 千秋いわく私が夢だと思っていたのは本当にあったことで、千秋が私を路地に連れ込み無理やりキスを繰り返したあげく、私は倒れてしまったらしい。そして千秋が私をおぶって帰って布団に寝かせて、私はそのまま朝までぐっすりと。


「まあ、千秋が積極的になってくれるのは私も嬉しい。ちょっとその、よかったし」

「.........」

「でも、意識がなくなるまでちゅーするのは流石にダメ」

「全くもってその通りです......」


 うなだれる千秋。まあ正直私は全然怒ってないけど、なんでもするって言ってるしここはひとつ聞いてもらおう。


「まあそのことはもう許します。代わりにひとつお願い」

「なんなりと...」

「今、千秋から私にちゅーして。えーと、じゃあ10回」

「え!?それは......うん、わかった...」

「よろしい。じゃあ来て」


 千秋の前にぺたんと座って、じっと目を見る。

 一瞬びくっとしつつも観念したようで、千秋も私を見る。

 私の肩に両手が添えられ、ゆっくりと顔が近づく。

 すっと目を閉じると、くちびるにふにっ...と何かが触れる。数秒ののち、それは離れていき、次は右の頬に触れる。今度はちゅっ、と感触だけを残すキス。次はおでこに。そして首筋に。触れた場所に残るじんわりとした感じが、私という存在を蝕んでいくように。千秋の所有物になっていく感覚が、たまらなく心地いい。


 最後にまたくちびるがちゅーっ...と吸い上げられて、ついに離れた。閉じていた目を開けると、上気した千秋がとろんとした目をしていた。その表情は...ずるい。

 我慢できなくなり、千秋の首に手を回して押し倒すように唇を奪った。千秋に与えられた唾液を、私のそれと一緒に返した。吸い上げ、押し付けて、食んで、貪った。

 乱れる呼吸を整えながら千秋を抱え起こして、もう一度だけキスをして。


「千秋、大好き。愛してる。ねえ、千秋も言って?」

「...私も...私も愛してるよ、未春」

「えへへっ。じゃあ大好きな千秋のために、朝ごはん作ったげる」

「うん、嬉しい。私も手伝うよ」




 一目見た時、恋をして。


 途方に暮れる私を拾ってくれて、居場所をくれて。


 身体の傷も、心の傷も包み込むような癒しをくれたあなたが好き。


 私の全てを受け入れてくれて、生を共にしてくれるあなたのことが好き。


 少し天然で、おっちょこちょいで、どこか抜けてるあなたが大好き。


 恋を唄うふたりから、愛を囁くふたりへと。




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