#1 出会い
「退屈だぁ~」
「わ、どしたん千秋。まだ講義中だよ」
「え?あ...ごめん、なさい」
考え事が口に出てしまっていたらしく、教授に睨まれた。こわい。ごめんなさい。
しばらく真面目に講義を受けているとチャイムが鳴った。
「では今回はここまでにします、レポートは前に提出」
教授と目を合わせないようにそそくさとレポートを提出し、依玖と一緒に食堂に向かう。
「千秋は今日もうどん?」
「うん...わたしそんなにうどん食べてる?」
「ほぼ毎日」
「じゃあ今日はざるそばにする」
「・・・・・」
だって食堂の麺おいしいんだもん。
そばをつるつる食べるわたしに呆れながらパスタサラダを食べる彼女は皆守 依玖。お互い家が近くて小学校から大学まで同じ。親友と呼んでいいだろう、たぶん。
わたしの黒髪と違ってウェーブのかかったブロンドの髪をお団子にしている。涼しそうでかわいい。
「でさ、千秋」
「んぅ?」
「何が退屈なのよ」
「いや、あれは」
うっかり心の声が出ちゃっただけ、と言おうとしたが依玖の言葉に遮られる。
「もう5月なのにあんた相変わらずあたし以外友達いないんでしょ?サークルとか入らないの?」
「だって...運動は苦手だし得意なこともないし...依玖がいるから寂しくないし...依玖?」
「...そういうとこよ、あんた」
依玖の顔と耳が赤い。五月病かな?いや五月病ってなにか詳しく知らないけど。
「その顔の良さで今の台詞言われたら、大抵の男はポンよ」
「わたしが男の子苦手なの知ってるでしょ、からかわないでよもう」
小学生のころ、男の子によくいたずらをされた。筆箱を隠されたり、わたしが座る直前に椅子を引かれて転んだり。幼い私はいじめられていると思っていたので、それが今も軽くトラウマになっている。
もちろん今はそれがただのいじめではなかったのは分かっているのだが、どうにも男性と接するのは気が引けるようになってしまった。
依玖はどうでもいい嘘をつくような子じゃないし、わたし自身もまあなんとなく自分の顔が整っているのは知っている。でもそのせいで街を歩くと知らない男性から急に話しかけられたりするので、あまり嬉しくはない。
「まああんたがいいならいいけど。そんなに退屈ならまた休みの日にどこか遊びに行く?」
「うん行く!依玖大好き!」
「はいはい、じゃあ今週末にでもね」
午後の講義を終え、サークルがあるらしい依玖を見送ってキャンパスを出る。
うちの大学には学生寮があるが、大学の周辺がわりと不便なので両親が便宜を図ってもう少し駅周辺に近いアパートの部屋を借りることになった。ちなみに依玖も同じアパートに住んでいる。
週末依玖と行く場所をあれこれ考えながら歩いているとすぐにアパートが見えてきた。
「ん?誰かいる...?」
遠目からなのでよく見えないが、わたしの部屋(2階の203号室だ)の隣の部屋の前に誰かが座っている。
確か隣の205号室は空き部屋だったはず...と思いつつ階段を上がる。
そこにいたのは女の子だった。しかしただの女の子ではなく、
「それ、どうしたの...!?」
「...?お姉さんだれ?」
全身傷だらけの少女が、虚ろな片目でわたしを見上げた。
初めまして、納涼と申します
拙い点ばかりではありますが優しく見守っていただければ幸いでございます