表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/58

2. 白い神官

前回アンケートのトップは「ありがとうございます」(45.6%)でした。

https://twitter.com/usagi_ya/status/1213280946914377728

ご協力に感謝します。


今回も、末尾に次の選択肢がありますので、これだと思うものを選んで投票していただけると嬉しいです。

「ありがとうございます」

 とっさに口をついて出た礼の言葉は、吐息に少し音をのせた程度のささやきだったにもかかわらず、大きく響いた。

 引率役の神官を含む全員の視線が、一気に集まる。

 叱責を覚悟したアリスティアだったが、意外にも、神官は無言のまま彼女に背を向けた。

 神官は姿勢を正し、〈聖女の御遺灰〉に向かって深々と一礼すると、脇に避けた。先頭に立っていた〈試練の乙女〉が、遅滞なく進み出て、胸の前で両手を組み合わせて頭を下げる。彼女が避けるとその次の乙女が同じように祈り、そうして順に祈りを捧げていって、最後に残ったのがアリスティアだった。


 ――もう、怖くないな……。


 さっきのあれは、なんだったのだろう。ほんとうに、立っていられないほどの衝撃だったのに……今そこにある〈聖女の御遺灰〉は、圧倒的な魔力をただよわせてはいるものの、こちらを圧するようすはない。

 ただ美しく、強くて、哀しいだけだ。

 アリスティアはほかの乙女たちを真似て手を組み合わせ、頭を下げる。


 ――そういえば、正しい祈りかたって、あるのかな。


 明日の糧を与えたまえとか、魔族の襲撃がありませんようにとか。誰かの病気が治りますように、怪我が治りますように、行方不明の者がみつかりますように。

 そういった日々の困りごとの解決を、心の中で念じる以外、アリスティアは祈りかたを知らない。でも、そんな素朴で現実的な祈りは、この場には不似合いな気がした。

 ひょっとすると、〈聖女の御遺灰〉を前にしたときの特別な祈りだって、あるのかもしれないが、知らないものはどうしようもない。

 しかたなく、アリスティアは、いつもの要領で念じた。


 ――どうか、誰かが聖女に選ばれますように。その力で、魔族をしりぞけてくださいますように。


 それだけ祈って、アリスティアは脇に避けた。

 替わって進み出たのは、先ほど、倒れかけた彼女を支えてくれた人だった。

 ゆるく編んだ長い銀髪は、月の光に似ていた。ほかの者と変わらない簡素な白い服を身につけているのに、まるで光の尾を引いているように見える。彼が身をかがめてようやく、首に飾り帯(スーラ)をかけているのがわかった。着衣と同じ白だから、身体をはなれて垂れ下がるまで、気がつかなかったのだ。


 ――飾り帯をつけているのは、位階の高い神官様だというけれど……。


 先導役の神官の飾り帯は、淡い黄色だ。裾には琥珀の玉と、飾り房がついている。

 どちらが偉いのか、さっぱりわからない。

 白い飾り帯の神官が拝礼を終えると、先導役は踵を返した。全員が〈祈りの間〉を出ると、外には次の神官が待っていた。どうやら、案内役を引き継ぐようだ。

 今度の神官は女性で、飾り帯は青だった。裾についている玉は、濃紺の色糸を編んだもので、飾り房も同じ色である。

 青い飾り帯の神官は、軽く頭を下げてから、一同を来たときとは別の回廊へ向かった。


 ――あのひとに挨拶してるのかも?


 神官が頭を下げた方を肩越しにふり返る。やはり、そこにはあの銀髪の神官がいた。彼は、はじめの案内役の神官と並んで扉の前に立ち、乙女たちを見送る風であったが、アリスティアの視線に気づくと、あるかなきかの微笑を浮かべた。

 うっかり見惚れそうになったが、ほかの乙女たちは列を作って歩きはじめている。アリスティアは最後尾で、多少は猶予があるとはいえ、そう遅れるわけにもいかない。

 向き直って、乙女たちの末尾に着いて行こうとするアリスティアの隣に、すっと影がさした。

 おどろいて見上げると、先ほどの白い飾り帯の神官が、かたわらを歩いていた。

 彼は右手を口にあて、声をださないようにと示した上で、ゆっくりとアリスティアの前に回り込み、彼女の足を止めさせた。


 ――えっ?


 白い神官の向こうを覗き込んでみると、アリスティアの前を歩いていた乙女がこちらをふり返ったのと視線が合った。

 が、彼女は少しおどろいたように眉を上げただけで、そのまま向き直り、しずしずと歩み去ってしまった。


 ――どうすればいいの、これ。


 アリスティアの勘では、白い神官はたぶん、偉い。

 青い飾り帯の神官が礼をとった相手が彼だとするなら、先導役よりも位階が上ということだ。黄色い飾り帯の神官はどうしているのかとふり返ってみると、彼はまだ、〈祈りの間〉の扉の前に佇立(ちょりつ)していたものの、今にも歩み去りそうな気配だ。

 白い神官に向き直ると、彼は微笑んで右手を下ろし、あちらへ、というように乙女たちが案内されたのとは別の方角を示した。

 突如、アリスティアは気がついた。


 ――落第したってこと?


 困る。

 それが、最初の感想だった。

 もちろん、〈聖女〉に選ばれるなんて思っていない。でも、判定を受けるところまでが、自分のつとめだ。司教区の代表として、なにもしないまま送り返されるのは、あまりにも申しわけない。

 自分以外の乙女たちは、暗い廊下の奥へと吸い込まれていく。

 アリスティアだけが、いつまでも動けずにいた。

 白い神官は微笑を浮かべたまま、移動をうながすように、ふたたび手を動かした。

 アリスティアは――


1)偉そうな人だし、指示通りに移動する

2)神官の横をすり抜けて、〈試練の乙女〉たちを追う

3)なにをするんですか、あなたは誰ですかと問う

アンケートは、アカウントのトップに固定しておきますので、ふるってご参加ください。

https://twitter.com/usagi_ya


肩からかけている飾りは、幅20cmくらいの帯状の布で、だいたい膝までの長さをイメージしています。両端には房をつけたり、貴石をつけたりしてありますが、本来、なくてもいいようです。

女神信仰は「じつを取る」というミモフタモナイ教えが根底にあるため、虚飾を避ける傾向が強いのです。

神官の衣装では、この帯が唯一のお飾り要素ですが、平神官はこの帯さえかけられません。

おしゃれしたければ出世するべし(そうじゃない)


あと、地方に行くとユルくなるので、刺繍を入れたり、模様を織り込んだりする不届きものも出るようです。

おしゃれしたければ左遷もあり(そうか?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ