表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高生だけど隠密活動してます  作者: 柚貴ライア
3/4

3・私は前世をうっすらと思い出した

6歳の誕生日───


私は前世をうっすらと思い出した。

誕生日のプレゼントで貰ったパソコンのスペックが、私の知識よりも遥かに低くかった事がきっかけである。


「ママ、これ古い?」


処理スピードが遅く、私がやりたいと思った作業も上手くできないのだ。


最新式だと怒られた。


貰ったノートパソコンは、もちろん最新式だった。当然子供向けに使用制限は掛けられていたが、それにしても処理スピードが遅すぎた。


私が前世で愛用していた物とは、大きさも重さも容量すら段違い。今、手元にあるのは私にとってはレトロ───アンティークに近いかもしれない。


初めは何故、こんなにも記憶している科学レベルとの差があるのかが解らなかった。


細かい事はこの時代の───この世界、と言った方が良いのかな?───基礎的なレベルは合わせると説明しにくいので省くことにするけど。

なんとなく私の知っていたはずの歴史とは差異があるようなので、別の世界なのだと思うことにした。


何よりも教育体制が、私の前世とは大きく違っていた。


私の元の世界ではほとんどの子供は、「学校」へは通わない。少子化やいじめ等の問題が重なり、ほとんどの子供は自宅学習になっていた。特殊な事情を持った子供だけが学校に通うという世界だった。

その子供というのが、自宅にいることによって命が脅かされ危険性のある子供というのがまた重い。

世帯別の格差が激しかったのだ。子供たちは国の予算や寄付による学校給食で命を繋いでいた。


今の世界でも少子化やいじめ、格差は確かに存在しているけれど前世程ではない。


私にとってはこの世界は平和そのものであり、色々な出来事もイベントのようなものだったから。

学校に通う事すら楽しかった。


この世界ではほとんどの子供が、高校を卒業する位の年齢になると成人として扱われる。大学へ進学するのは医師や弁護士、研究者等の一部の特別な職業を目指す人達だけだ。


高校自体も高度な教育を教える場なので、中学を卒業してすぐに働きに出る者の方が寧ろ多いのだから。

大半の高校生は、裕福な家庭の子供達や特別な才能(タレント)を持った子供達だった。


と、まぁ───「高校進学の設定がファンタジーだ」と思った瞬間から、比較的スムーズに前世の記憶が蘇って来た。


6歳の時に「うっすら」だった前世の記憶は10歳の時から「まだら穴あき」に思い出すようになり、最近では「比較的スムーズ」に思い出してきている。


理由は、御堂グループ創立記念パーティーで起きた例の幼馴染み五人組がらみの出来事が関係していた。


御堂、弥高、月岡、葛城、広見はそれぞれの分野における国内トップクラスの企業の創立一族であり、小さな頃から頻繁に交流していた。


そして人間、10歳くらいになるとある程度顔立ちがはっきりしてくるのだ。


御堂琢磨と月岡海翔、弥高光希の三人が並んでいる姿を目にし、弥高尚希と葛城梨陽人のじゃれあいを見ているうちに違和感を覚えたのだ。


(この子達、どこかで見た?)


幼い頃から見慣れているので気が付かなかったけれど、よく考えてみたら元の世界の日本人はほとんどが黒目黒髪だった。

金髪、青い髪、クリーム色に緑色に紫、地毛のカラフルな日本人はこちらの世界のものだった。


思い出したのは、自分も前世では黒髪黒目であったこと。その後しばらくは、鏡を見る度に今の髪色に違和感があった。


現在の私には兄がいるのだが、彼の髪色がやはり私と同じような色をしていた為、その姿を見る度にその違和感はゆっくりと事実として馴染んでいった。




「琢磨君、私の事をお嫁さんにして下さい!」


突然、琢磨少年は一人の少女から求婚された。

その場面に出くわしたのは、そのプロポーズを受けた本人と海翔少年と私の三人だった。

因みに光希君は、尚希君と梨陽人君がケンカを始めたので止めにいっていた。


プロポーズして来たのは、ピンクブロンドの長い髪をいくつもの縦ロールにした少し猫目の女の子だった。

多分、この髪型は今日のパーティーの為にわざわざ巻いたのよね?まさか、普段からこの髪型?


里乃内真理亜(さとのうちまりあ)

海運会社のご令嬢だったはず。私達とは違う私立のお嬢様学校の初等科に通っている。


何時も子供らしくない、と言われている琢磨君だったが───この時ばかりは、びっくりして固まっていた。


真理亜ちゃん、面白いものを見せてくれてありがとう。


んん?

むむむ?


真理亜ちゃんの登場で、私の頭の中に一気に流れ込んで来る色々なシーンが氾濫をおこしていた。


なんだろう、このデジャブ感?

以前にも見たことのある映像───


うん。実写じゃない!

私が見たのは……イラスト……アニメ絵……乙女ゲームのオープニング映像だ!






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






さすがに一度だけしかプレイしていないゲームの内容は詳しく覚えていなかった。


「日本人設定なのに何でこんなカラフルな髪色?」

「攻略対象は同じ高校の生徒だけかぁ……先生は対象に入っていないのね」

「攻略対象が卒業するまでがゲーム期間か~。ってことは先輩を選ぶとゲーム時間が短くて、難易度が高くなるのね。同級生だと長くなるから難易度低いってことか」


ゲーム内容に関してはそのくらいにしか覚えていなかったのだが、お助けキャラの「ヒロミちゃん」情報なら多少はある。


だから、高校入学目前に自分の隠密活動用の姿を鏡で確認をして、驚いたのである。


「ヒロミ」はファーストネームではなく、ファミリーネームだったらしい。


私がヒロミちゃんだったのね!


真新しい高校の制服を着て姿見に映っているのは、赤毛のセミロングのボブヘアの大きな黒ぶち眼鏡の小柄な「広見桃華」だった。


それが高校の入学式直前だったのは、一応ラッキーだったかもしれない。

私はこれから秘密を抱えながら、高校生活を送って行くのだ。


今判るのと、ヒロインに出会ってから知るのでは大分違う。


私の任務はこれから出会うであろう「ヒロイン」と、「攻略対象」である我が幼馴染み達を見守る事だ。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ