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転生したらハゲておっさんになりました。  作者: 蒼月毘人
1章 異世界生活編
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01.毛が無い・・・?

 眩しい。窓から日差しが差し込み、俺の顔を照らしているようだ。

もう朝か。そろそろ起きて会社に行く準備をしないと。


重い瞼を開き、天井を見つめる。

目に映る天井はいつもの自室の天井ではない。

木目調の天井がそこにはあり、ところどころガタがきているようだ。


ん?俺の部屋の天井って、こんなにボロくさかったか?

というか、急性虫垂炎とかで、手術をするって話じゃなかったか?


身体を起こそうとするも、激しい頭痛が俺を襲う。


いってえ!なんだこの頭痛は!

頭を押さえようと何とか手を頭部へ運ぶ。

そして、違和感を感じた。


無い。『髪』が無い……。

待て待て待て待て。俺は大いに混乱する頭を整理し始めた。

俺の名前は、池城英司。29歳だ。彼女はいない。

物流系の会社に勤務し、順調な人生を送っていたはず。

3億円の宝くじに当選し、有名な企業さんの仕事を引き受けて、

更に輝かしい人生を送るはずだったんだよ。

そんで、急にお腹が痛くなって、救急車で運ばれて……。


 やっとこさ、重い身体を動かし、何とかベッドから起き上がる。

そしてもう一度頭を触る。無い。というかスキンヘッドだ。ツルツルなのだ。

何気なく手を見ると、手も何かおかしい。しわも多いし、ちょっと色が違う。


部屋の一角に大きな姿見があったのでそこまで移動して自分の全身を確かめてみた。


 おい……。誰だよお前。誰?このおっさん……。


鏡に映し出された姿は、かつての自分の姿と大きくかけ離れた、40代くらいのおっさんが

布製の少しやつれた服を着て、だるそうに突っ立っていた。


 これはいったいどういうこと?もしかして手術が何らかの原因で失敗して植物人間に

なって、10年くらい寝たきりになってた、とか?

いやいや、それは無い。

だとしたら、病室に寝てるはずだし、身体の状態をモニタリングする

機械に繋がれているはずだろ?

試しに、「あ~」と発生してみたものの予想通り、

今までの自分とは違う声が自分の口から発声された。


 ひとつだけ、思い当たる節がある。これは、あれだ。

小説とかアニメで出てくる、『異世界転生』ってやつだ。

あの手の話は大体主人公が最初の方にサクッと死んで、チートみたいな

スキルだの武器だのを手にして異世界に転生し、沢山の女の子から

好かれてハーレム状態!

……みたいな話だった気がする。


 もし、そうだったとしたら、これはあまりにも酷い仕打ちだ。

だって、そうだろ?俺は何にも能力なんて得てないし、むしろ大事な『毛』を失った。

しかも全く別人のおっさんになってるんだぞ?

爺さんも親父も確かに毛が無いほうなので、いずれ自分もそうなることは覚悟して

いたけども……。

 それに、もし本当に異世界転生したとしたら、俺は文字通り『サクッと』死んで

しまったわけ?虫垂炎の手術なんて誰もが経験することじゃないの?

なにか手違いがあって、手術中に死んでしまったというわけか……。


 せっかく、3億円も手に入るところだったのになぁ。

……と、なかなか現実を受け入れられない俺は思いっきり自分の頬をつねり上げてみるも

虚しく痛みが残るだけだった。


 ほっぺ痛い。夢じゃないのね、これ。……待てよ。

この世界はもしかして、ゲームの中の世界ってやつなんじゃ?

そう考えた俺は手を振ってみたり、コマンド!だのステータス!だの叫んでみたのだが

いっこうにアイコンが飛び出たり、視界の中にステータス画面等が表示されることは

無かった。


 ゲームの世界でも無い……と。こりゃあ、本当に違う世界に転生してしまったのかもしれない。

とりあえず、鏡の前にずっと突っ立っていても埒が明かないので、家の内部を散策してみる

ことに。12畳くらいの部屋の中に、ベッドと、古臭い木で作られたテーブル、椅子。

先ほどの姿見と、ボロボロの木製棚のみ。当然冷蔵庫や、照明など、電化製品は皆無だった。


 この家、何も無いな。よくこんな殺風景な部屋で生活できるもんだ……。

そこで俺はふと疑問に思った。この身体の持ち主っていたのか?俺はいきなり

こんなおっさんに転生したのか?家の前になら表札くらいあっても良いんじゃないのか?


そう思った俺は、ドアを開け、外に出てみることに。

目の前に広がった光景に俺は驚愕した。

地面には石畳が敷かれており、白を基調としたヨーロッパ風の街並みが広がっている。

街の中をかなりの人々が行き交っているところを見ると、なかなか規模の大きな街のようだ。


 すげー。海外行ったことないけど、中世ヨーロッパって感じだな。

ということは、ここは完全に日本じゃないな、やっぱり。

……そうだ、表札はあるのかな、と。お、あった。


 ドアの横に表札らしき札を見つけたのだが、不思議なことに何も書かれていなかった。


うーん。空き家なのか?空き家に出現したとか、そんな感じなのかな。

というか、さっきから腹が鳴ってしょうがない。腹が減った。

腹が減っては戦ができぬっていうし、とりあえず街の散策がてら飯を探そう。


 すれ違う人々の話声を聞きながら何か食べ物が売っている場所は無いかと探す。

街の人たちの話し方の感じから、英語などの外国語ではなく、自分の言語と同じ

つまり、日本語として聞き取ることができた。どういう訳だか、言葉の壁は無いらしい。

街の中央っぽい広場に出て、パンのような物を売っている出店があるのでそこに近づく。

出店では、感じの良さそうなおばさんが接客をしているようだ。


 うまそう……。見た感じ、普通のパンだけど、味が気になるな。

とりあえず話しかけてみるか。


「すみません、このパン1個いくらですか?」

「そのパンなら、銅貨1枚だよ」


 良かった。ひとまず俺の言ってることはちゃんと伝わっているらしい。

大体銅貨1枚で100円ってところか?

とりあえずこれをいただくとするか……って、俺お金持ってたっけ。

焦ってズボンの後ろからいつものように財布を取り出そうとするが、

もちろんそこに財布は存在しない。ポケットを探ってみると、

幸いなことに、古ぼけた銅貨が1枚だけ入っていた。


 どうする俺……。所持金これしかなかったら、パン買ったら無一文だぞ。

ええい、背に腹は代えられない!


「じゃ、1個ください……」

「はい、まいどあり~」


俺は近くにあったベンチに腰掛けると、なけなしの1銅貨で買ったパンにかじりつく。

かったいなこのパン……。一番安そうなやつだったし、しょうがないか。

それにしても、ほぼ所持金0でスタートって、最初から積んでるわ、俺。

パン屋のおばちゃんに仕事無いかどうか聞いてみるか。


「すみません、お金が全くないんですけど、どうやったら稼げますか?」

「はぁ!?あんた、そんな歳して仕事も無いのかい?まったく、

いままで何をしてきたんだか。言っておくけどうちで雇える余裕は無いよ」


 うん、見た目おっさんだもんね。この言われようはしょうがない。

ここはあくまで下手に出ないと。


「ちょっと、色々ありましてね、今仕事が無いんです。お金が稼げるので

あればなんでも良いのですが」

「そうさねぇ……。あそこにある掲示板にその日限りの仕事やら

依頼やら貼りだしてあるから見てみたらどうだい?」

「冒険者ギルドとかそういうのは無いんですか?」

「ギルド?そんなものはこの街には無いねぇ」


 どうやら良く小説で出てくるような『冒険者ギルド』なるものは

無いらしい。この街に無いだけなのかもしれないけど。

それにしてもその日限りの仕事……所謂日雇い労働ってわけか。

出世街道を歩んでたんじゃなかったのか、俺。


そうは言ってもこちらの世界では既に一文無し。というわけで、日雇い労働の

募集をしているという掲示板の前に俺は足を運ぶのであった。



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