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9話

 僕は今、夢を見ている。


「紫暮、最近休んでただろ?風邪かー?」

「.......」


 こいつは...僕が召喚される前、一緒にいた友達だ。

 ...実は、こいつの名前を僕は知らない。

 突然話しかけてきて、仲良くなったのはいいけど...向こうは名乗らなかった。

 僕が訊けば済む?とっくに訊いた。

 彼は、「卒業する時に教えてやる」と言った。

 それなら途中で知ったら面白くないな、と思いその時から詮索するのはやめた。

 だから僕は彼のことを「友達」と呼んでいる。

 周りから見たらすごい変だけどね。


「ぼーっとしてどうしたんだよ。熱あんじゃねーの?」

「.....ねぇ、名前なに?」


 自然と口が動いた。

 友達はそれを聞くと、悲しそうな、嬉しそうな、そんな複雑な表情を浮かべた。

 夢の中だし、本当の名前が分かるはずはない。

 けれど、僕は答えをただ待っていた。

 数秒後、彼は口を開けた。


「俺の名前は───だ。そして、お前」


 お前、と言ったあとに夢は終わった。


 ***


 僕は今、夢を見ていた。

 見ていたはずだけど、思い出せない。


「小鳥遊様、失礼します」

「どうぞ」

「おはようございます。あなた宛に手紙が届いていました」

「僕に、ですか」


 その手紙を受け取り、封筒を見てみると端のところに「和の湯 ユリ」と書いてある。

 ユリさんって...確か、あのおばさんの名前だった。

 ...中の手紙には、こう書かれていた。


『タカナシ シグレ様へ。

 今夜8時半に、「和の湯」で待っています』


 ラブレターにも見えるんですが気の所為ですね。

 今夜8時半、か。

 あそこの銭湯は8時に閉まるはずだけど。


「これ、僕宛てってことは城に届けられたということでもありますよね?」

「はい、門番に渡されていました」

「僕、城で生活してるなんて言ったことはないと思うんだけどなぁ...」


 不思議に思いながらも、朝の支度を終えて朝食も摂って訓練に向かった。


「タカナシくん、おはよう!」

「おはよー」

「はよーっす!!」

「おはようございます。今日もよろしくお願いします!」


 騎士さん達は本日も絶好調だ。


「そうだ。そろそろ筋トレじゃなくてタカナシくんも手合わせに参加させてみないか?ギルドでは結構依頼こなしてるんだろ?」

「皆さんがいいのでしたら、ぜひ!」

「アドルさんも参加されますか?絶対勝てないと思いますけどね、俺らが」

「私は見ているだけでいいですよ」


 木剣を渡されたので、しっかりと握りしめて手に馴染ませた。


「じゃあ、早速俺が相手になるぜ!」

「お願いします」

「手加減はしないぜ!!」


「ぜ」が必ず語尾につく人なのかな。


「始め!」


 先手必勝!

 ...は、僕はあまり考えないものであるためにまずは相手の様子を見た。

 相手も僕のことを見ている。

 お互い、木剣を構えた体制のまま。

 すると、相手が動いた。


「っ!」


 カンッ!


 木と木がぶつかり合う音が響く。

 相手は、どうやら回転斬りをしようとしている。足の位置でわかった。

 相手が右にぐるんと回って木剣を思い切り振った。


 ガンッ!!


「...!」


 予測していたのだ、防げて当然。

 若干驚いた相手は、それからにんまりと笑った。

 これは、連続で斬ってくるのかな?

 答えはマル。

 ギルドの依頼の魔物退治で鍛えられた剣術と反射神経のおかげで、全て防ぐことが出来た。


「うお、短期間でこれはすげぇぜ」


 次は僕から仕掛けようか。

 木剣を一旦相手の方に強く押し付け、素早く回転斬りをした。

 相手が木剣を持っている手のすぐ上に力強く当てると、相手の木剣が吹っ飛んだ。


「...うぇ!?」

「ふぅ、ありがとうございました」

「おおおお!!」

「次は俺!」「いや、俺が!」「じゃあ俺も!」

「「「んだとコラ」」」


 ここであのネタが見れると思ったらただの喧嘩になった。


 ***


 手合わせも終わって、中庭のベンチで休憩していたところ、ふと思った。

 ...今の騎士団長って、誰なんだろう。

 アドルさんは元騎士団長と言っていた。

 現騎士団長には会ったことがないし、どんな人かも聞いた事がない。

 隣に花に止まっている蝶をガン見しているアドルさんが座っているのだが、訊いていいものかな?

 よし、ここは思い切って訊いてみよう。


「...アドルさん、なんで騎士団長辞めちゃったんですか?」


 まず聞きたいのはこれ。

 アドルさんは、視線を蝶から僕に移した。


「...実は騎士団長といっても仮のものでして、本来はダネスト家の子息が20歳になるとそれを継ぐのです。ですが私の前の団長が体を崩してしまい、とても戦える状態ではなかったため、すぐにその方の息子を団長にしようとしました。しかしその息子はまだ16歳だったので仮の団長として当時副団長だった私があの立場にいたわけです」

「...じゃあ、アドルさんは4年間団長さんだったんですね。でも、元々副団長だったならなんでそこに戻らなかったんです?」

「歳も歳ですし、護衛もやってみたかったので」


 やってみたかった、で護衛人になれるんですか?


「てか、歳も歳って...見た目全然若いですけど」

「そんなことないですよ、今年で26歳です」

「若いやん」


 低めの声でつっこんでしまった。


「...じゃあ昨日の別の仕事って騎士の仕事だったんですか」

「はい、これでも団長と副団長だった身ですし、偶に騎士の仕事が来る時もあるんです。...これからはもっと増えそうなのですが...」

「僕も成長してきたし、大丈夫ですよ!たくさん仕事していて尊敬します!」


 純粋に言葉を述べてみると、アドルさんは額に手を付けて僕から顔を背けた。


「.....?」

「いえ、なんでもありません」


 具合悪いのかな。過労で倒れたりとかしないかな...。


「質問続きで悪いんですが、今の騎士団長さんはどんな人なんですか?」

「...強いのはもちろん、気配りもできる優しい方ですよ。ただ...」

「ただ?」


 アドルさんが一瞬顔を曇らせた。

 その時、背後から別の声が聞こえた。


「うおっ、アドルさんじゃないっすか!久しぶりっす!って、そっちの子は、護衛対象の人っすか?」


 男性にしては高い声で話しかけてきたのは、桃色の髪と瞳の小柄な少年だった。

 ...子供?


「騎士団長、お久しぶりです」

「エッ」


 思わず立ち上がる。

 立ってみてわかった身長の差。

 この騎士団長と呼ばれた美少年は、僕よりも5cm程身長が低かった。


「.....可愛いッ」

「なっ!?そんなキラキラした目でおれを見るなっす!」


 どうやらこの子は語尾に「す」がつくらしい。外見と合ってないけど。


「...すみません、召喚者の小鳥遊紫暮です。騎士団長って、本当ですか...?」

「そうっす!おれはダネスト家のライアで、騎士団長っす!」

「てことは、20歳超えてるんですよね」

「2ヶ月くらい前に成人したっす」


 この、見た目で。成人してるのに語尾が「す」の人初めて見た。


「シグレさんはおれより背が高いっすけど、いくつなんすか?」

「16です」

「........そうか、16か」


 語尾付け忘れてますよ。

『うわぁ、年下だったのかよ...』みたいな顔やめんか。


「.....あっ!仕事があったっす、じゃあまた会いましょうっす!」

「はい」

「.....はい」


 ...成程、アドルさんの言ってた『ただ...』っていうのはこのことだったのか...。


 ***


 時刻は夜8時。そろそろ行こう。

 1人で行かなければいけない感じだったので、アドルさんには休んでもらうことになった。

 一体何が待ってるのか...。

 僕は綺麗な夜景を観ながら『和の湯』に向かった。


冬休みの課題に出てる生活チェックの紙が全然埋まってなくて焦っている柊ですどーも(`・ω・´)

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