7話
あの後、キトラさんは部屋に戻り、僕はトイレに行った後にベッドで爆睡していた。
少し腹が痛いけど、動く分には問題ないので、次の日も朝食を食べて騎士さん達と訓練をした。
そしてギルドで依頼を受けて、無事に帰り報酬を受け取った。銭湯『和の湯』に行き、その後キトラさんやアドルさん達と談笑し、アルの世話をし...そんな日が続いていた。
因みに勇者召喚は、やはり慎重にやろうとなってまた後日行うこととなり、聖女捜索はちまちましているようだ。
...僕がこの世界に召喚されてから、2週間と3日経った。
今日、再び勇者召喚が行われる。
...聖女がいないと、この国は更に危険に晒される。
スキル『浄化』を持っているのは聖女である僕だけだから、それを隠して過ごしている以上勇者に魔王を倒してもらわないといけない。
え、なんで聖女だということを明かして国を救わないのかって?
そりゃあ、僕がそんなことをする理由がないから。
...つまり僕は、やはり勇者召喚の成功を願っているわけである。勇者さんには悪いが。
ここはいい人がいっぱいいるけど、僕にも帰る場所があるんだ。それから引き離されたのに簡単に国に手を貸すわけがない。
──僕は、「許す」と言った覚えは無い。
っと、こんなのいつもの僕じゃないな。
勇者さん、ここに来ても同じ召喚者である僕がいるから大丈夫だよ!
「今回は成功してくれよ〜...」
「.......」
背後から若い男の声。
王太子様だ。またか。
「頑張れよ、お前ら!」
と言いながら、王太子様は側近に強制連行されてどこかに去って行った。
魔導師さん達はあの言葉に応えるように、王太子様が連れて行かれた方向をじっと見つめていた。
...あ、ただ呆れていただけみたいでした。
僕含め召喚に関係の無い者は皆扉の前に立っている。多分30人。
気になって来たんだろう。
頑張って、皆さん!
***
「おお...!!」
と、中から声が聞こえてきた。
成功したのかな?
何が話している。説明とかしているのだろう。
すると、扉が開いた。
僕達は道をあけるように壁際にずれた。連帯感凄い。
...出てきたのは、ローブを着た人と...。
お、あれが勇者さん?遠い方にいるからよく見えないな...。
まぁそのうち城内で会うだろうし、戻ろう。
***
「ワン!ワンッ!!」
部屋の扉を開けると、カゴから脱走したのか、アルがいきなり飛び出してきた。
「ちょ、アル!?」
最近大人しかったのに、めっちゃ走るじゃん!速い!
アルが、結構離れたところにある扉を前足で叩き始めた。
な、なに?ここほれワンワンならぬここ開けろワンワン?
何があるのか...?と思い、一応ノックをして扉を開けた。
「...誰ですか?」
「えっ、あ、すみません!アルが...じゃなくて犬がここを開けろと行動で示してきたもので...!」
「犬...?まさかその犬は」
え、この人のワンちゃん!?
「...近所の子供が飼っていた変な名前の犬...」
「.........」
「...はぁ...。で、あなたは誰ですか?」
『誰ですか』の部分を強調して言ってきた。
あ、さっきも訊いてきたから...。
「僕は、小鳥遊紫暮です。召喚者ですけど、間違いだったらしくて詫びとしてこの城で過ごしています」
「召喚者...?日本人ですか、貴方」
「そうです。.....?...よく見たら何処かで...って、星崎高校の生徒会長さん!?」
星崎高校とは、僕が通っていた高校から近い場所にある超エリート校である。
暗くて気づかなかったけど、この人が着てる赤い制服は確かに星崎高校の制服だ。
そしてこの顔...、星崎高校に通っている知り合い(生徒会)から『真ん中の人会長なんだけど、眼鏡取ったら凄いイケメンだよ☆』というメッセージと共に写真を送られたのだが、あの時見た真ん中に無表情で座っている人の顔と一緒だ。
「...はい、俺は星崎高校の生徒会長ですが...、何故それを?貴方の名前は我が高校の生徒名簿には載っていない」
「知り合いに生徒会の方々が集まって撮った写真を見せられたんです。僕は隣の高校の生徒です」
「.....チッ」
え、舌打ちされた?泣いていいですか?
「...あの、もしかして、あなたが...勇者さん...?」
「そのようですが、俺はこの国を救う理由なんてありません」
あれ、最初に僕が言ったようなことを...。
って、それは困る!勇者さんには頑張ってもらわないと...!!
...あ、アルがちゃっかり寝ようとしてる。
さりげなく僕がアルを捕まえて抱き抱えると、生徒会長さん...いや、勇者さん?は眼鏡をくいっと人差し指でかけ直すと、僕をじー...っと見てきた。
「本当に男ですか、小鳥遊さんは」
肩がビクッと跳ね上がるのをなんとか抑えて、僕は言い返した。
「よく女みたいって言われますけど、れっきとした男ですよ」
「.......そう、ですか。...では、早く帰ってください」
「あ、はいっ!失礼します!!」
がばっと礼をして、部屋を出た。
...ふぅ、危なかった。
あの人、部屋に入った時ベッドに座って俯いてたけど、やっぱり悲しいのかな。
なんで僕、勇者さんに任せっきりにしようとしたんだろう。僕は最低だな...。
剣士になるという目標ができたんだし、少しくらいは国に協力しよう、かな。うん。
僕の部屋の近くの廊下を歩いていると、食事を持ったアドルさんが奥の廊下から歩いてきた。
「...散歩にでも行ってきたんですか?夕食持ってきましたから、食べてください」
「...ありがとうございます」
食事の量はあの時よりも格段に少なくなっていた。アドルさんが頼んでくれたのだ。
アルもお腹が空いているみたいだし、ドッグフード食べさせよう。
***
次の日。
よし!今日もギルドの依頼ばんばんこなすぞー!
「カルハさん、これお願いします」
「.....はい、これでいいわ。気をつけて行ってらっしゃい!」
「いってきまーす」
アドルさんは別の仕事があるので、今日は1人での行動となった。
ギルドを出ようとすると...。
「兄ちゃん、久しぶりだな」
「...あなたは...」
いつの間にか失踪していた、カルハさんに恋する残念なイケメンだ。
前に僕が『ラブレター渡せば?』的なことを言ったら『それだッ!』みたいなこと言ってたよね?確か。あんま覚えてないけど。
「...カルハさんとはどうなったんですか?」
「いやぁ、きっぱりフラれたよ。ははっ」
そんな笑顔で言われてもなぁ...。
「新しく好きな人でも出来たんですか...」
「ああ...実はな。お前の顔、よく見たら俺のタイプにどハマりなんだよ。だからちょっと女装を──」
「さようなら」
ダメだこいつ早くなんとかもしたくない。
周りの人も引いてるぞ。
僕は早歩きでギルドをやっと出て、目的の場所に向かった。
***
「はぁっ!!」
「グァァ!」
これで依頼達成。
この期間で僕は剣術がかなり上達した。
久しぶりにステータス見てみよう。
「『ステータス表示』」
─────────────────
小鳥遊 紫暮/タカナシ シグレ 職業:聖女 Lv32
攻撃力:63400 体力:296500 魔力:7020
防御力:6410
・聖属性魔法Lv99
・回復魔法Lv85
・支援魔法Lv56
《スキル》
・治癒
・状態異常無効化
・浄化
《称号》
・女子高校生
・神の愛し子
・聖なる光
・召喚者
─────────────────
お、Lvが結構上がってる!
魔法は全然使ってないから何も覚えてないし、Lvも上がってない。
さて、ギルドに戻ろう!
「うわぁぁぁぁあああん!!!」
「っ!?」
突然、泣き声が聴こえてきた。
そこら辺をうろつくと、小学生くらいの子供が大泣きしていた。
「どうしたの!?迷子?」
「うぐっ、う、ん...。」
「ここは危険だから、移動しよう。歩ける?」
こくっと頷いたのを確認し、手を繋ぎながら街に向かった。
***
「お母さんはどこにいるかわかる?」
「お母さんはいないよ、お兄ちゃんとお散歩してたの」
「そっか...。じゃあお兄ちゃんはどこかわかる?」
「ううん」
泣き止んではくれたけど、どうしたものか...。
「...その人の特徴とかある?」
「とくちょう?」
「その、お兄ちゃんだとわかるような物とか...。あ、写真とかない?」
「あるよ、これ」
小さい子は、ポケットからくしゃくしゃの写真を出した。
「この人がお兄ちゃん?」
「うん」
.......お兄ちゃん、完全に魔王なんですけど。
...いや!そんなわけないよね!この子は普通の平民の子っぽいし!
きっとコスプレイヤーさんなんだね!
「どこから来たの?」
「お城」
「し、城...ね。お兄ちゃんは何してる人なの?」
「んっとね、まおう」
「.......君、魔族?」
「まだ9歳だけど、そうだよ!」
え、この子魔王であるお兄ちゃんと散歩してきたんでしょ?
え、ちょ、魔王普通に街の近くに来てんじゃん。
「で、でも君は人間の姿してるよね?」
「お兄ちゃんが魔法でへんしんさせてくれたの!」
や、やばい、ガチだ。
マジで?ガチのコスプレイヤーではなく?
...ここは人があんまりいない所だからいいけど、もしも連れて行ったのが商店街だったら絶対殺されてる!
ええと、じゃあ魔王も人間の姿して来てるってことか。
魔王なら早く来てくれ!さっさとこの子連れて城に帰ってくれ!
今の状況で戦えないよ!
...あ、ちょっと地味に魔王の情報聞くか。
「お兄ちゃんは、どんな人...魔族なの?」
「とっても優しくてね、人間が大好きなんだよ!」
「人間が...?...お兄ちゃんは、魔物を引き連れて悪いことしてる?」
「そんなことしてないよ!こっそり人間の住んでる所に来て、遊んでるよ!」
「へ、へぇ。どんな所で?」
「遊園地とか!」
普通!
ま、待てよ。まだ決めつけちゃ行かん。
というか魔王何してんの、魔王なら一瞬で見つけられるものじゃないの!?
「い、一旦さっきの所に戻ろうか。もしかしたら探しに来てるかもしれない」
「うん」
あそこなら誰もいないし、魔王にこの子を帰せる。
***
「いない...お兄ちゃん、どこー?」
「ま、魔王さーん!弟くんはここですよー!」
念のため若干小さめに叫んだ。
すると、周りに生えている木が揺れだした。
「ブラード」
「あっ、お兄ちゃん!」
「...!!」
振り返ると、そこには恐ろしい魔王...ではなく、優しそうな青年が立っていた。
本当に魔王なのか?あの子の妄想だったのか...?そしてあの人はコスプレイヤー...?
「すみません、貴方は魔王さん...ですか?」
「.....いずれ」
「じゃあねー!」
2人は消えた。
えっ、怖い。
コスプレイヤーじゃなかった。
紫暮の黒い部分が見えた話でした(´―ω―`)
冬休みがもう少しで終わるのに一向に早起きしようとしない柊ですどうも٩( ᐛ)و




