25話
黒葉さんが来て数日経った。
王太子様が黒葉さんが召喚された国に掛け合い、この国は今安全であることなどを伝えると、魔導師達は物凄く落ち込んでいたらしい。黒葉さんはここの方が日本にいる感じしていいと言っていたので、大丈夫だそう。
⋯⋯黒葉さんが黒魔道士なのはわかったけど、魔法の使い方とかわかるのかな?
あと、僕が言えたことじゃないけどあの人物凄い冷静だったよなあ。え、普通はパニックになるでしょ?
「あれ、この前の子じゃん」
「⋯⋯黒葉さん!?」
今僕はいつも通りギルドにいる。
何故黒葉さんがここに。
「魔法使いたいんだけど、どうすればいい?って聞いたら、ギルドに行かれては?と答えられたから来たんだけど」
「よ、よく一人で来られましたね⋯⋯。護衛とかいないんですか?」
「地図貰ったんだよ。護衛は特にいないよ?なんなら君がなってくれる?」
「僕護衛いる身なんですけどね」
「そっか、君も召喚者だった。で、何すればいいの俺」
「じゃあ、まずギルド登録を──」
しましょう、と言いかけた時に、女性の声がそれを遮った。
「あ、あのっ!よろしければ、私が担当しましょうか?ギルド登録っ!」
見かけない職員だった。新人?
なんか萌え声使ってる感じするんだが。それにぶりっ子オーラが凄い⋯⋯。
「ああ、そう?じゃあよろしく」
黒葉さんは、僕に向けた笑顔と変わらない表情で彼女に返した。
「は、はい!では、こちらにどうぞぉ!」
明らか黒葉さんに一目惚れしたなあの人。
心配だけど⋯⋯黒葉さんなら平気な気がする。
優雅にコーヒーを啜っていると、黒葉さんと職員が戻ってきた。
「済ませてきたよ。で、次は?」
「⋯⋯⋯⋯え、いや、どうしたん、ですか」
僕が戸惑っているのは彼女を見たから。
彼女は先程までは完全にぶりぶり言ってたのに、今は凛としている。
「ん?少しちょうk⋯⋯⋯⋯調教しただけさ」
調教っておい!!言いかけてまた言ったな!
「サディスト⋯⋯」
「そうだね」
「自覚あるんですね」
自覚ありのSとは、タチ悪いな。
殺気を感じたのでこれ以上はやめておこう。
「あ、次ですよね。あそこの依頼ボードから⋯⋯」
ギルドについての説明をし、何故か黒葉さんと一緒の依頼を受けることになった。
***
そういえば僕魔法ちゃんと使えないんだけど。教えれないんですけど。
「⋯⋯魔導書とか必要なんですかね?黒魔道士とかって、魔導書持ってるイメージあるし」
「魔導書?もしかしてこれのこと?」
「へ?」
黒葉さんは上着のどこからか本を取り出した。
「召喚された時に渡されたんだけど。ほら、色々書いてる」
「これは⋯⋯呪文ですかね⋯⋯?黒魔法かなんかでしょうか。言ってみたらどうですか?」
「うん、そうだね。⋯⋯〈闇の炎よ、光を燃やし尽くせ〉」
そこら辺にいたスライムが焼かれた。
「光を燃やす?何を言っているんだ」
「ああ!マジレスしなくていいですからっ!他も試してみましょう!」
「⋯⋯〈漆黒の雷よ、その光に鉄槌を下せ〉」
晴れのはずなのに一箇所だけ雨雲になり、黒い雷が複数落ちた。
そこら辺にいたスライムが焼かれた。
「光に恨みでもあるのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
「まぁいいか、次だ。〈光よ、影に呑まれろ〉」
そこら辺にいたスライムが黒い何かに引き摺りこまれた。
「⋯⋯あの、その本貸してくださいませんか」
「?どーぞ」
渡された本を開き、一ページ目から順に読んでいく。
「これ、厨二病患者が書いた黒歴史帳じゃないですか?」
「だよね?」
あっ、薄々気づいてましたか。
これ、完全に厨二の言葉だし。そもそも、よく見たら本自体が昔の手帳だし。
「昔この世界にきた厨二病の方が本当に魔法使いかなんかで、色々と言葉を書いていたら本当に呪文になった感じですねこれ」
「ええ⋯⋯俺厨二病にはなりたくないんだけど⋯⋯」
「念じて発動できませんかね」
「やってみる」
黒葉さんの体が微かに黒く光だした!行けるか!?
ドガァァアアン!!
天から黒い何かが物凄い速さで降り注いだ。
平原にクレーターが出来た。後でなんとか治しとこ。
「ダメだ、力の加減が分からない」
「⋯⋯⋯⋯一緒に練習しましょうか」
手帳は⋯⋯まぁ言葉通りに魔法発動してるし持っていてもらおう。
ただ黒葉さんが厨二病になるのは僕も嫌なのでどうにか念じて発動させるようにしたい。
ちなみに依頼は黒葉さんがさっき落とした何かで達成された。
***
「紫暮、大丈夫か」
「⋯⋯何が?」
「あの手紙のことだよ。最近黒葉とどっか行ってるみたいだけど、つけられたりしてねーか?」
「特には」
あれからまた数日。
僕はナイトに呼び出されたので部屋に行った。そこで上の会話。
「アドルさんは?」
「アドルさんは僕の護衛人辞めたよ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は??」
そう、辞めた。
「ほら、アドルさんってちょくちょく別の仕事に行ってたでしょ?"元"騎士団長でも、処理とかたくさんあるらしくてさ。それだって。辞めたのは、ワルアの砦の管轄を任されたかららしいけど?」
「え、えぇ!?でも、アドルさんは紫暮の⋯⋯!」
「でも、王太子様や王様から頼まれたって。それに僕は表向きではただの剣士だし、事情を知らない一部の人達からは護衛なんていらないだろって言われてるらしくて」
「⋯⋯今からでも、聖女だということを明かせば⋯⋯」
「今更?それに僕が正体を隠してるのは、僕が国を救うのが嫌だからだよ。今は別に嫌とは思わないけど⋯⋯」
「だったら⋯⋯。お前、優しいやつだし助けてあげるのかと」
「⋯⋯⋯⋯」
「聖女なら、国を救うのは当然じゃ──」
「私がこの国を救う⋯⋯?笑わせるな、小僧」
「⋯⋯は?」
あれ、僕今なんて言った?
「ぼ、僕⋯⋯!⋯⋯ごめん、またね」
「おい!」
走った。
全力で城の外まで走った。
「はぁ、はぁ⋯⋯。さっきのは⋯⋯」
確かに、僕が言った。でもあんな言葉僕は言わないし、言おうともしてなかった。
私がこの国を救う?
"私"が?
──もしかして⋯⋯!
「ご機嫌麗しゅう、聖女様」
「!?」
後ろに突然現れたのは、ピエロのような仮面を付けた紳士服を来た男。
あの手紙の男か!?
「⋯⋯くっ」
再び走った。体力はまだある。
すると、見えない何かにぶつかった。
道は続いてるのに!
「無駄ですよ。結界を張らせて頂きましたので」
「目的は!」
「貴女様を『あの人』のもとへ連れて行きます。貴女なら、わかるでしょう?」
「あの人⋯⋯?」
知るはずがない。
それなのにどうして、今『あの人』が頭に浮かぶ?
「ヒビは少ししか割れていないようですね。ですが良しとしましょう。では、行きましょうか」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
動けるはずなのに、動けない。
何故僕は恐怖を感じている?
僕は今、取り返しのつかない事態に遭遇しているのではないか?
また、攫われて、皆に迷惑を掛けてしまう?
"僕"は"私"に捕われる?
「〈黒き虎よ、その者を喰らえ〉」
男の後ろに、黒い大きな虎が出現した。
男は避けたが右腕を怪我した。
この厨二臭い呪文は⋯⋯!
「誰、こいつ。侵入者とか?」
「黒葉さん」
「うん。で、こいつ誰っつってんだけど」
「し、知らない人ですね」
⋯⋯危なかった。黒葉さんが来ていなければ⋯⋯。
「貴方は、黒魔道士ですか。これは困りましたね」
「おじさん何者?その仮面と服全然似合ってないけど」
「これは手厳しい。さて⋯⋯逃げるとしますか。明朝、また来ます」
「チッ⋯⋯!〈黒蝶よ、その者を眠らせろ〉」
黒い蝶が数匹現れ、男に突進した。
が、男は消えた。
「⋯⋯助けてくれてありがとうございました」
「別に。⋯⋯それ、何?」
「⋯⋯え?」
いつの間にか手の中にあったのは、赤い宝石が埋め込まれた綺麗な指輪だった。
***
「明日の朝、城の騎士全員にこいつ護らせろ」
「Σ(||゜Д゜)ヒィィィィ」
城に戻った後、黒葉さんは騎士団長を脅していた。
目がマジだ。モデルじゃなくてただの借金取りだ。
「どうした?」
そう声をかけてきたのは、国王陛下でした。
「陛下!?」
「⋯⋯クロバ殿、だったか。離してやってくれ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
黒葉さんが渋々騎士団長を離す。
陛下が、僕の持っている指輪を見た。
「⋯⋯それは!先代聖女の指輪ではないか!?」
「えっ!?先代!?」
「シグレ殿、それをどこで手に入れた?」
「⋯⋯わ、わかりません。いつの間にか持っていて⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯そうか。シグレ殿、貴女は⋯⋯⋯⋯⋯⋯聖女、だな?」
騎士団長が目を見開いた。黒葉さんは外での話を聞いていたのか、驚いている様子は見えない。
違いますと言えばいい。
偽りを続けろ。
「聖女ではないのか?」
再び、陛下が優しく問いかけた。
僕は悲しく笑って答えた。
「ええ、そうよ」
今回のゲストは黒葉くんです!
黒葉「どうも」
作者「どうも!早速最初の質問です。モデルの仕事は楽しいですか?」
黒葉「芸能界の闇って深いよ?」
作者「⋯⋯⋯⋯⋯⋯次の質問です。漆黒の王子という2つ名?は気に入ってるんですか?」
黒葉「ファンが勝手に付けたやつだし、なんか厨二臭いし気に入ってはない」
作者「⋯⋯⋯⋯最後の質問です。前髪切ったらどうですか?」
黒葉「お前を切ってやろうか」
作者「ありがとうございます(ガタッ」
黒葉「⋯⋯⋯⋯」




