22話
今日はお祭りの日だ。
この祭り自体は昔からある。そこに花火が追加で入った。
商店街とは別の場所にも、出店のようなものがやられている。
というのがキトラさんによる話。
「やっほぉー!!」
キトラさんが部屋にやって来た。
「じゃあ、行きましょう」
「はい」「はーい」「ワン!」
3人と1匹は、城を出発した。
***
リーナさんと橋良さんは急用ができたので遅れるそうだ。
リーナさんはともかく、橋良さんに急用ってなんだろう。
考えても仕方ないか、と思いながらとぼとぼ歩いた。
どう回るかはキトラさんに任せているので黙ってついて行ってるが⋯⋯。
なんか、人気のない所に進んでる気がする。
「あの、お祭りって向こうでやってるんじゃないんですか?」
こそっとアドルさんに聞いた。
「すみませんが、私は祭りに参加したことはありませんので⋯⋯」
そうか、アドルさんも団長だったんだし出られないよね。
てか、アルがさっきから大人しい。
まあそれはいいとして⋯⋯。
こうなったら直接聞いてみよう。
「キトラさん、僕達は今どこに向かってるんですか?」
スキップ混じりの歩き方をしていたキトラさんは足を止めた。
え、偽のキトラさんでした〜とかやめてね?
きっと秘密の何かがあるんだよね??
「え、言ってなかったー?」
「⋯⋯何がですか?」
キトラさんがゆっくりとこちらに顔を向けてくる。
「⋯⋯祭りは夜からだよ」
「?」
じゃあ何故昼に出た?
アドルさんも多分そう思っている。
キトラさんはにっこりと笑い、また歩きだした。
ええ、怖い怖い。このまま異世界に連れられたりしない?異世界から更に異世界に行かないよね??
「着いたー!」
「ここは⋯⋯」
「服屋、ですね」
ショーケースの中には、浴衣を着たマネキンがある。
⋯⋯なるほど。
「はぁーい!三人で浴衣着よ〜!!」
僕は別にいいけど⋯⋯なんかアドルさんが嫌そうなオーラを発っしていらっしゃいますよ。
「いいでしょ〜?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はい」
間が長いよ。
キトラさんはとても嬉しそうだ!
その嬉しそうな表情がアドルさんの心に突き刺さった!
「何を想像してるんですか」
「え、バレましたか」
「顔に出てます」
こりゃ失礼。
「さっさと中に入ろー」
「そうですね」
中には、浴衣しか置いていなかった。
浴衣専門店でありましたか。
浴衣ねえ⋯⋯何年も着てないから、着方とか忘れたんですけど。
それっぽくすればいいか。
「いらっしゃいませ!」
美人なお姉さんが駆け寄ってきた。
「あらあら、キトラくんじゃないの!大きくなったわね〜!」
「うん、久しぶり〜」
お姉さんから近所のおばちゃんの気配がした。気のせいだといいな。
「アドルさん、どれ着ます?」
「⋯⋯⋯⋯」
「そんなに嫌なんですか」
「動きづらくなるので、万が一の時に⋯⋯」
「お祭りですよ?人も沢山いますし、ナイト達も来ますから!」
「そう、でしょうか」
ソウデス。
話しているうちに、キトラさんがもう浴衣を選び終わっていた。はっや。
「試着してくるから選んでてね〜」
「はーい」
さて、どれがいいかなぁ。
僕は青系統の色が好きなので、その色の浴衣を探した。
「お、あったあった」
変に柄がついてるのはやめておこう。
無地でいいや。帯は⋯⋯濃いめの青にしとこう。
「アドルさんはどれにしますか?」
再び質問した。
⋯⋯あぁ、この顔はどれでもいいと思ってるな。
「えぇと、この浴衣はどうでしょうか?」
何故か僕が店員のようになっている。
手で指し示したのは、濃い赤色の生地に、白の細い縞模様が入っている浴衣だ。
アドルさんは赤髪だし、こんなの似合いそうだけどな。
「でしたらそれで」
「はやっ!?」
「折角小鳥遊様が選んでくださった物ですので」
「あっはい」
帯も同じような色のを取った。
選んだものを手に取り、サイズを確かめに試着室に向かった。
あ、アルは店員さんに見てもらってます。
三人ともサイズはちゃんと合ってたので、お会計を済ませて一旦城に帰ってきました。
キトラさんは自室に行き、アドルさんは騎士さんに呼ばれたのでそちらに、僕とアルはいつも通り部屋で遊んでいた。
5時半に時計台に集合らしい。
時計台は、街の中心にある公園の中に立っているやつ。
「駄目です!!」
突然、廊下から声が聞こえた。
この声はユキトさんだ。
廊下に出てみると、部屋から少し離れたところで誰かと言い合いをしていた。
あ、王太子様だ。なんで地下に⋯⋯。
「えぇ⋯⋯仕事は終わらせたからいいじゃないか」
「庶民の祭りに殿下が参加されたら大騒ぎになります!」
「それなら、変装すればいいじゃないですか」
「そうだ!俺が変装すれば──って、タカナシ!?」
さりげなく混ざりました。いぇい。
「ですが⋯⋯バレてしまったら元も子もないですよ!」
「眼鏡かけて帽子被って庶民の服着て村人Cのふりすればいいだけですよ」
「Aじゃないのか」
「単純に僕が村人C好きなだけです」
「殿下が庶民の服だと⋯⋯?」
「それくらい構わんが」
「殿下!!もっとご自分の立場を考えてくださいよ!!」
ユキトさん、諦めよう。王太子様の目は輝きすぎている。
「祭りくらいいいじゃないですか。競技に出るわけでもないんですし」
「そーだぞ!今年はやっと仕事が落ち着いてきたんだ!俺だって花火が見たいんだ⋯⋯っ!」
「⋯⋯⋯⋯くっ⋯⋯」
ユキトさんが何かと闘っているッ!
「⋯⋯わかりました、ご参加ください」
「っしゃ」
「良かったですね!」
「ああ、ありがとうタカナシ」
でも⋯⋯王太子様が参加となると、多分側近の人達も来るだろう。
だって王太子様だぜ?護衛人何人必要なんだ。
「ユキトさんも来るんですか?」
「ああ⋯⋯役職は違うが、俺も殿下の側近みたいなものだしな」
なら、城の警備もより一層強めた方が良さそう。
***
集合時間まで残り1時間半。
アルと共に、中庭に来た。
ベンチに誰かいると思ったら橋良さんだ。
⋯⋯頭を抱えている。悩み事か?
「橋良さん、どうしたんですか?」
「⋯⋯⋯⋯聖女探しを手伝ってくれと言われた」
「⋯⋯ソ、ソウデスカ」
そうだった、城の人は聖女捜索中だった!
とうとう橋良さんまで駆り出されることに⋯⋯!
どうしよう、これは僕が正直に言った方がいいのか、黙って剣士やってればいいのか⋯⋯。
前者が手っ取り早いけど、どっちにしても面倒な事になりそうだ。
魔王さんの陰謀はよくわからないけど、魔物も攻めてこなくなったみたいだしこのままでいいんじゃないの!?
もう一度会えたらいいんだけどなあ⋯⋯。
そして捜索係の人に申し訳なくなってくる⋯⋯。
「どうした?」
「あっいえなんでもないっす」
「⋯⋯この石に聖女が触れると、赤く光るらしいんだが⋯⋯どうしたらいいものか」
あの石には触らないようにしよう。
「お前も手伝ってくれないか?一生見つからない気がする」
「ア、ハイ」
「じゃあ、2つ貰ったから1つは渡しておく」
「ドウモ」
え、光るんでしょ?やばいな。
こういう時は⋯⋯。
「あれ?あそこに何かある!」
「?」
よっし取れたぁ!
うわホントだ、赤く光ってる⋯⋯。
ポケットに入れとこ。
「何かってなんだ?」
「すみません、多分気のせいです」
「は?」
「スミマセンッ」
***
集合時間。僕は時計台に少し早く着いた。
アドルさんも一緒だ。
思ったよりアドルさんが浴衣似合っていてビビっている。
僕は多分普通だ。あ、サラシはキツく巻いたのでそれに関しては問題ないです。
「やっほ」
「ヒッ」
短い悲鳴が響いた。
キトラさん、驚かせるの好きですね。今度倍にして返すとしよう。
リーナさんと橋良さんも来た。王太子様達は別行動である。
「シグレさん、浴衣似合ってます!!眼福です⋯⋯」
「ありがとうございます」
リーナさんはピンクのフリフリなワンピースを着ている。
女装本当に似合うな⋯⋯。
「リーナさんこそ凄い可愛いです!」
「もう⋯⋯可愛いなんて当たり前のこと言わないでくださいよ!」
モジモジしながら仰ております。こんなに自分のこと誉めてる子だったっけ。
橋良さんはいつもの服だ。機嫌悪そうな顔をしている。
「早く行こー!」
キトラさんが浴衣で走り出した。
浴衣なのに走るの速っ。
必死についていくと、祭りをやっている所に着いた。
人が物凄いいる。
「⋯⋯たくさん廻りましょう!」
今回のゲストは王太子様です!
殿下「よろしく」
作者「ども。最初の質問は、⋯⋯名前はなんですか?」
殿下「⋯⋯⋯⋯黙秘」
作者「次の質問です。仕事は楽しいですか?」
殿下「⋯⋯⋯⋯楽しい」
作者「最後の質問です。ユキトさんのことはどう思ってますか?」
殿下「⋯⋯⋯⋯優しい」
作者「次に会う時は正直者になっていることを祈っています!ありがうございました!」
殿下「⋯⋯ありがとうございましたッ(泣)」




