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2話

「け、剣士に...!?」


 アドルさんは、当然戸惑っていた。


「ただ、ここに居てもつまらないじゃないですか。折角なら、剣士目指して、国の為に働きたいです!」


 元の世界に帰りたいという気持ちも勿論あるが、方法がないのなら仕方が無いことだ。

 家族や友達には悪いが、僕はこの世界で暮らすことにする!


「小鳥遊様がそう仰るのでしたら、こちらでなんとか致しますが...。本当によろしいのですか?危険ですよ!?」

「覚悟の上です!」


 自信満々の顔でそう言うと、アドルさんは完全に呆れていた。

 ...が、どうやら僕の気持ちを理解してくれたらしく。


「...わかりました。あ、聞いていませんでしたが、職業は?」

「.......え、えと、無しです」

「.......まぁ、異世界の方ですから、無しでもおかしくはありません。剣士になりたいのでしたら、まずは騎士達の訓練に混ざり...ギルドで手続きをして、それからちゃんとした剣士になる、という工程になります」

「わ、わかりました。やっぱり大変だろうけど、頑張ります!」


 ギルドで手続き...ね。バレないか心配だけど、なんとかなるだろう!

 ...あ。


「あの、すいません。トイレどこですか」


 先程剣士になるという覚悟を決めた者が言うセリフとは思えないが、限界に達していた。


「トイレ?ああ、ここを出て左に進むとありますよ」

「は、はい...」


 小走りでそこに向かうと、...あった!

 あれは、日本にもあった、トイレの前についてる男と女の、なんか...看板みたいなやつだ!

 .....王城のトイレって、こんなもんなんだ...。

 それで、僕はどうすればいいのだろう。

 どちらに入ればいい?

 ...迷ってる暇はない!早く行かないと!!


「あ」


 男の方に来てしまった。

 幸い、中には誰もいないようだ。

 ...ん?

 お!全部個室じゃないか!

 男子のトイレなんて入ったことないけど、全部個室なのかな?

 そうじゃないなら、王城のトイレ凄い。


 ***


 男子トイレから出ると、すぐそこにアドルさんが立っていた。


「すみません、待ってくれてたんですね」

「当然ですよ。さて、これからどうしますか...」

「訓練!したいですっ!」


 即座にそう言うと、アドルさんはやはり呆れた表情を浮かべた。


「.....で、では、訓練場に向かいましょうか」

「はい!」


 僕の目はとても輝いていることだろう。

 なんだろう、1度剣士になりたいと思ったら、その思いがどんどん溢れてくるのだ。

 元々剣士になりたかったのかな?僕。


「あ!タカナシ様!」

「...はい?」


 後ろから僕の名前を呼ぶ声が聞こえたので、くるっと振り返った。

 そこには、王太子様の後ろにいた護衛人さんがいた。


「はぁ、はぁ...。ふ、服を持って参りました...。これでよろしかったでしょうか?」

「平民がよく着てる服...。へえ、こんな服なんだなぁ...。...はい!ありがとうございます」

「いえ、王太子様の命ですので。それでは!」


 護衛人さんは、一礼をして踵を返して戻って行った。


「良かった、この服のままじゃ動きにくかったからなぁ...」

「...その服、どこで手に入れたんです...?」

「これは、友達が作ったんですよ。劇をやっていたので...」

「...?そうですか」


 よし、部屋に戻ろう。


 ***


「着替えるので、一旦出て貰えますか?」

「え?手伝わなくで大丈夫ですか?」

「1人でできますよ!!!」

「は、はい」


 渋々、アドルさんは部屋の外に出て行った。

 危ない危ない...。

 ...これ、どうやって脱ぐんだっけ...。

 ああ、そうだ、ここをこうして...。

 よし、なんとか王子服は脱げたぞ!

 ちなみに、胸とかはサラシを巻いているので問題はない。そもそも僕に胸ないけど。

 平民がよく着てる服よ!今日からよろしくな!

 .....はい。茶番はここまでにして、さっさと着替えましょう。


 ***


「終わりましたよー」

「...失礼します」


 めっちゃ動きやすい。これはいいな。

 平民がよく着てる服グッジョブ!


「さ!訓練場行きましょ!!」

「...はい」


 アドルさんは、僕のテンションについてこれていないようだ。


 ***


「こんにちはー!」


 今は10時20分なので、一応「こんにちは」にした。


「お!タカナシ君だ!アドルさんもいるぞ!!」

「こんちゃーーー!!!」

「ちーーーーっす!」


 何人か挨拶の癖が強い人が居るようだが、気にしないでおこうか。


「今日から僕も、訓練に参加していいですか?」

「え、タカナシ君が?大丈夫なのか??」

「僕、剣士になりたいんですよ!」

「あ、騎士になりたいんじゃないのか...。まぁ、訓練に参加、だけならいいんじゃないか?」

「だよな...」


 上手く行きそうだ。

 朝に来ていて良かった。


「じゃあ、筋トレから始めよう!丁度、今やってたからなー」

「お願いします...!」


 ...簡単に言うと、筋トレの内容は地獄のようだった。

 え、嘘...。皆毎日これやってるの?

 訓練場に居るのは合計で40人ほどだが、本当はもっと居るのだろう。

 運動神経は悪い方ではないし、体力もちょっとはあるのでぎりぎりついていけた。

 ま、凄い息切れしてますけどね。


「おーい!休憩すんぞー!」

「「うぃーっす」」


 いつの間にか、12時を過ぎていたらしい。

 訓練場に、数人の騎士達が弁当を持って戻ってきた。


「アドルさんとタカナシ君の分もちゃんとあるぞー!タカナシ君は特にたくさん食えよ?そんな細い体じゃあ剣士になれるかわかんねぇぞ!?」

「ふぁい...」


 ばんばん!と肩を叩かれる。

 力つよ。

 それにしても、疲れた...。でも、剣士になるにはこれくらいは容易にできないと!

 ...明日、筋肉痛になってないといいけど。


 ***


 昼食を終えて、皆は訓練もとい筋トレに戻った。

 僕は、図書室に向かうことにした。

 その途中、なんと王太子様と廊下で偶然出会い、めちゃくちゃ話しかけられた結果、護衛人さん達に強制連行されて行った。

 あの人、人と話すの好きなのかな...。

 さて、アドルさんが言うには、ここが図書室だ。

 大きい扉を開けると、そこには本棚が大量にあった。

 読書好きでもある僕は、案の定興奮してしまった。

 はっ!ここは図書室だ。静かにしないと...!

 司書さんらしき人に睨まれそうになるのを回避。

 ...さて、僕が調べたいのは、この国のことだ。

 なんたって、国名すら分からないのだから。

 ...国名はアドルさんに聞けば済むことだった。


「アドルさん、この国の名前ってなんですか?」


 ものすごい小声で言うと、アドルさんも少し屈んで小声で答えてきた。


「キドネストです」

「ありがとうございます」


 き...。き.....。

 .............やべ、読めない。

 日本語で皆話してたから、文字も日本語だと思ったのに!


「すみません、文字が読めないんですけど、国について書かれてる本ってどこにあります?」

「...ここ、暗号本のスペースですよ」

「...............」


 隣の本棚を見ると、普通に日本語で書かれている本があった。

 ...恥ずかし。

 無言でカ行の所を探していると、見つけた。

『キドネストについて』

 そこにテーブルと椅子がある。

 テーブルの上には、『読書したい方はここでしてください。室内では静かに!!』と書かれた看板が刺さってあった。

 刺すなよ。そっと置いてあげてよ。

 早速椅子に座り、本を開いた。

 アドルさんはまた後ろに立っている。

 地味に怖い。

 さて、本の内容は...。


『キドネストについて。

 キドネスト国は、この世界でもトップを争うほどの戦力を持っている。

 国の治安はとても良く、誰しもが平和に暮らしていた。

 だが、突然魔王が現れたことにより、それまで大人しかった魔物達が大暴れ!

 魔導師や騎士達はすぐに対処できたが、魔物の数は減らないのだ!!

 西の森は既に魔物達が占領している。

 倒すには、浄化スキルを持っている聖女様が必要だ...!

 そこで、上級魔導師を数十人集めて聖女召喚を行った。

 しかし、召喚されたのは──』


 なんだこれ...。

 作者後半ふざけすぎじゃないか...?

 というか、この召喚されたのは...って僕のこと!?

 いつ書かれたのこれ!?


「ああ、この本には魔力が込められているので、作者が遠隔魔法で本を上書きしたのでしょう」

「す、凄いですね...。魔法ってそんなこともできるんだ...」


 で、でもまあ、今のこの国の状況はわかった。

 あ、やばい、司書さんがめっちゃこっち見てる。そろそろ行くか。

 本を棚に戻し、アドルさんに言う。


「行きましょう」

「はい」


 図書室を出て、部屋に戻った。

 アドルさんは部屋の前で護衛してくれている。さすアド。


「...『ステータス表示』」


 右手を宙にかざす。


 ─────────────────

 小鳥遊 紫暮/タカナシ シグレ 職業:聖女 Lv18

 攻撃力:56000 体力:196000 魔力:5890

 防御力:4860

 ・聖属性魔法Lv99

 ・回復魔法Lv85

 ・支援魔法Lv56

 《スキル》

 ・治癒

 ・状態異常無効化

 ・浄化

 《称号》

 ・女子高校生

 ・神の愛し子

 ・聖なる光

 ・召喚者

 ─────────────────


 お、筋トレのおかげか、Lvが少し上がっている。

 原理はよくわからんけど...。

 うーん、まだ昼だけど何しよう。

 ...あ、ギルドで手続きとかなんとか言ってなかったっけ?

 ギルド行こう!ギルド!!


「アドルさんっ!」

「はいっ!?」

「ギルド行きましょう!」


 扉をがばっと開け、アドルさんに言うと、それはたいへん驚かれた。まあそうだろう。


「ギ、ギルドですか?ああ、そうでしたね...。今から向かわれますか...?」

「はい!」

「わかりました。ギルドは王城から少し歩いたところにあります」


 ギルドってどんな所なのかなぁ、楽しみだ!


こんにちは!柊です。

1話を昨夜投稿したのですが、ブクマに追加してくださった方が数人...。

嬉しすぎて涙が...うっ...。

今は冬休みなので、投稿頻度は高めですが...来年度からは受験生なので、低くなる可能性もあります。忘れないうちに言っておきますね...!すみません...!

これから『聖女だけど男だと思われてるので剣士目指します』をよろしくお願いします!

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