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17話

 翌日、僕はいつもと同じように過ごした。

 アルの世話、ギルドの依頼達成、訓練、銭湯で休む...。

 ああそうだ。最近橋良さんと話してないな。

 城でも全然見かけないし、引きこもってんのかな。

 扉を開けると、アルが狙っていたかのように丁度良いタイミングで籠から脱走し部屋を抜け出した。


「あー、もう、またか」


 アルを追いかけていくと、何故か橋良さんの部屋の前に辿り着いた。アルもそこで止まった。

 もしかして、案内してくれ...いやそんな訳ないか。エスパーでもないんだし。


「橋良さん、失礼します」


 アルを抱き抱え、ノックもせずにずかずか入った。

 部屋には誰もいなかった。外出中か?


「何をしている?」

「ひっ」


 背後に殺気!...と思ったら橋良さん!?


「すみません勝手に入って!!」

「それは別に良い。俺に用か?」

「...さ、最近見かけないなぁと思ったので、見に来ました。...ん?その剣どうしたんですか?」


 橋良さんのベルトには、綺麗な模様が彫られた剣が差さっていた。


「これは勇者の剣だから...とか言われて強引に渡された」

「あ、あはは...」

「様子を見に来ただけなんだろ?ならもう出て行ってくれ」

「...橋良さんは、まだ勇者として国を救う気は...」

「無い」

「で、ですよねぇ...。失礼します」


 この国...勇者はやる気ないし、聖女は嘘ついて剣士目指してるしで大変だな...僕が言えたことじゃないけど...。

 魔王やその部下(?)達も悪い奴ではなさそうだったし、国民達は何か勘違いしてるんじゃ...。

 ここに来て色んな人達と関わりを持ったと思うけど、やっぱり日本での人生を奪われたのに知らない国の手助けなんてする気も失せるよね...。

 僕は僕でなんか闇組織と魔王に目を付けられてるし...。

 ナイトもああやって笑って過ごしてるけど、本当は帰りたいんじゃ...。だってこっちに来た理由がコケて魔法陣に入っただなんて...。

 アルも元飼い主さんに会いたいだろうし。元飼い主さんも可哀想だし。

 あー、向こうの世界は今どうなってるんだろう...。

 せめて、死に場所くらいは選ばせてくれよ神様。


「...あれっ、ここどこ」


 考え事をしながら城内をうろつかない方が良かったか...。


「...アル、僕達の部屋の場所わかる?」

「ワン」


 微動だにしない。やっぱわからんか。

 階段は使ってないし、まだ地下のはず。

 ずっとうろうろしてればそのうち着くはず!


 ***


 着かない!!

 結局さっきの場所に戻ってきてしまった。

 地下ってこんなに広いの!?

 僕、よく今まで迷子にならなかったな!?

 ...扉はたくさんあるから、道をお尋ねしましょうかね。

 とりあえず近くの扉をノックした。


「誰かいますか?」

「はいー?」


 ...え、この声...。


「あ!シグレとアルだ!どうしたの?」

「キトラさん...!?」

「んー?」


 迷子になったということを説明すると、何故か部屋に迎え入れられた。

 キトラさんの部屋は、意外にも清楚な感じだった。


「...前に、部屋散らかってるって言ってませんでした?」

「気のせいじゃない?」

「...」

「そうそう、異空間に見たことない物があってさ〜」

「見たことない物?」


 キトラさん、見たことない物まで拾っちゃったの?


「えーと、ほいっ」

「...あ、大学ノートだ」

「ダイガクノート?」

「まあ普通のノートみたいなもんです」

「??」


 ノートを開くと、『日記帳』とペンででかく書かれていた。

 その下には、『橋良 颯斗』と書いてある。

 橋良...って、橋良さんと関係あるのかな?

 下の名前は多分「はやと」と読むのだろう。「そうと」の可能性もあるけど。

 次のページから、日付と文章が書かれている。


「『2016年8月24日。どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。俺が勇者?馬鹿馬鹿しい。早く帰りたい...8月25日。魔王を倒してくれと頼まれた。何故俺がやらなければいけないのか。ああ、弟に会いたい』」

「...日記?」

「はい、2、3年前の物です」

「...あー!ハヤトのだ、思い出した」

「え?」

「数年前に勇者召喚でハヤトが来たんだー。歳も近いし仲良くなって、ハヤトが亡くなる前の日に預かったんだ!」


 ...亡くなる?


「死んでしまったんですね」

「うん、ここに来てから5ヶ月くらい経った時かな、闇組織に暗殺されちゃったんだ」

「暗殺...」


 その闇組織は、ダーシャなのか、別の組織なのか...。


「最後のページには?」

「...『2017年1月15日。もう少しで死ぬかもしれない。ダーシャとは最後の戦いになるだろう。死ぬ前にもう一度、仁に会いたかった。長く書いてきた日記もこれで最後だ。キトラに持っていてもらおう』」


 やっぱりダーシャか...。

 あとは、仁...完全に、橋良さんのお兄さんだ。


「ハヤト、弟いるって言ってたし...なら、今いる勇者は...」

「.....このノート、橋良さ...今の勇者さんに渡してもいいですか?」

「うん、もちろん」

「それじゃあ失礼しま...あっそうだ!迷子だったんだ!」

「案内するよ〜」

「ありがとうございます...」


 ***


 結構遠かった。


「橋良さん、再び失礼します」

「...なんだ」

「お兄さんの颯斗さんのことですが」

「ああ、少し前に行方不明になった」

「2年前に、この世界で亡くなられたみたいです」

「...は?」


 うーんそりゃそうですよねだから僕を睨まないでぇぇ!殺気!殺気抑えて!!


「キトラさん...ええと、宮廷魔導師の人とその人が仲良くて、もう部屋に戻っちゃったんですけど。その人が闇組織ダーシャに殺された、と」

「...そうか。勇者である兄さんが死んだから、弟の俺が継いだということか」


 ノートを見ながら、橋良さんが若干悲しそうな目でそう言った。


「しかし、魔王や魔物ではなく、なぜ闇組織に...」

「確かに。...この国の人って1度敵と見なしたら交渉術とか使わないと思うので魔王を勝手に悪い奴だと思い込んでいるだけで、本当の敵は闇組織...とか」

「魔王は普通悪者ではないのか?」

「所詮イメージですよ。魔族にだって、本当は...いえ、なんでもないです」


 魔王には1度会ったけど、全然怖くなかっし、魔族のカイン(仮)さんだって悪い人...には見えるけど性格はおもしろ...良い人だし。


「はあ...。兄さんには恩があるし、敵討ちでもした方がいいだろうか」

「それは橋良さんの自由ですけど...僕、ダーシャになんか狙われてるんでその方が助かります」

「何故...。まあ、闇組織を崩壊させるくらいはいいか」


 闇組織を崩壊って、表現の仕方怖いな。


「なら、剣の使い方とか教えますよ!なんならギルド登録しちゃっても!!」

「剣の使い方は何となくわかるが、ギルドとはなんだ?」

「.....」


 ***


 あの後は橋良さんにずっと異世界での基本的なことを教えていた。

 ぼんやり中庭を歩いていると、王太子様がこっち来た。


「王太子様...。お久しぶりです」

「ああ!元気そうだな。最近仕事が多くてな、城にはあまり居られなかったんだ」

「お疲れ様です」

「そうだ、父上が礼を言っていたぞ。誘拐事件にはオレも困っていたんだ、本当に助かった」

「いえ!皆さんにはお世話になっていますし、当然ですよ」

「...殿下、そろそろ」

「な...!もう少し!!」

「駄目です。書類がたまっていますので執務室に行きますよ」

「あ〜」


 王太子様は側近の2人に引きずられて行った。

 側近の人、しっかりしてるなあ。


 さて、午後からは珍しくギルドに興味を持った橋良さんとギルドへ行く予定なので、午前は訓練に行こう。要するにいつも通りである。


「シグレさん!おはようございます」

「リーナさん、おはようございます」


 挨拶を交わし、筋トレを始めた。

 ...だいぶ体脂肪率減ったと思う。


 訓練も終わり昼飯も食べ、午後1時。

 城の前で橋良さんと待ち合わせ。


「あ!服変わってる」

「学生服だと動きづらいからな、お前のと同じような服を注文しといた」

「僕も同じ感じでした。学生服ではなかったですけど」

「?」

「行きましょー」


 2度目のギルド登録付き添い、地味に楽しい。


はい、今回のゲストはアドルさんでーす。

アドル「よろしくお願いします」

作者「早速質問しますね。趣味はなんですか?」

アドル「仕事です」

作者「.....休日は何をしていますか?」

アドル「仕事です」

作者「.......したい事はなんですか?」

アドル「仕事です」

作者「この社畜が」

アドル「仕事ですかr」

作者「ありがとうございました〜」

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