16話
取引...。こんな状態でしたくないんですが。
今は敵のスキル封じ人に動きを止められている。
「子供達も、君の仲間も助けてあげるよ。そのかわり、君がオイラの組織に入るっていう話だよ」
「.....」
「早く答えてよォ?オイラのスキル、一定時間経過で全て解けちゃうンだからァー」
「ぅ.....。!声が出る...」
体はまだ動かない。
こうしてる間にも、あの人達が...!
それでも、敵の仲間になんて入るわけにはいかない!
「断る!!」
「...ふぅン。だってさ、カオル」
「...カオル?」
「ン?さっき言ってた幹部の人の名前。本名かはオイラも知らないけどさ」
『そーそー。全部聴こえてたよ〜。その答えなら、ここにいる奴ら全員殺しちゃってもいいカンジ?』
封じ人の耳元から、やけに明るい声が聴こえた。多分小型通信機だろう。
「えェ、それじゃ面白くないよ。こういうのは子供を1人ずつ──」
「はぁっ!!」
「うぉ!あー、スキル解けちゃったか」
動けるようになったので素早く剣を振ったが、かわされてしまった。
まずい。この状況。
僕が相手の言う通りにしなければあの人達は殺される。言う通りにすれば...皆助かる。
敵の言うことなんか信じられないけど、僕みたいな平凡な(元)高校生にはこんなの耐えられない...。
今、3m程離れた所に封じ人は居る。
そして僕の後ろには階段。
急いで降りて、皆の元へ向かうか...?
「仲間の所行っても、カオルにやられちゃうだけだと思うなァ」
『まだ誰も殺してないよ〜。来るなら今だよ〜』
「このサイコパスコンビが...」
「さいこ...なンだって?ま、君の好きにしたら?もし逃げたらそりゃ追うけどね」
「.....っ」
僕は全速力で階段をかけおりた。
「うん、普通は逃げるだろうけどさ、つまんないなァ」
後ろから音が聞こえる。追ってきてる...!
体は動くし、やっぱり封じには限度があるんだ...。
2段飛ばしで下り、地下室のような場所に着いた。
「皆さん無事ですか!?」
「うっ...」
無事ではなかった。
子供達は縛られてはいるが怪我をしてるようには見えない。
しかし、仲間の6人が床に伏していた。
死んではいない。
その奥には、今度こそあの依頼書の情報に当てはまる人物が立っていた。
「うそ...」
「殺してはないよ?君の目の前で殺ろうか?」
「あーあ。どうすンの?これじゃあオイラ達についてくるしかないねェ」
封じ人がゆっくり背後から近づいてくる。
封印スキルが発動してないなら魔法は使えるはずだ。
だが、僕は魔法の使い方はわからない。
無意識でなら何度か使用したことはあるが、意識しての魔法は発動したことはない。
「何黙ってんのォ?こいつら殺されちゃうよ」
「.............」
「怖くて動けない?臆病だね」
その通りだ。怖い。
アドルさんは、どうにかこっちを見て、目で「逃げろ」と言っている。
無理だ、だって僕は、
「はーい時間切れ!!こいつから殺るよー!!」
「え?」
グシャッ。
アドルさんの背中に、“刀”がぐさりと刺さった。
血が飛んだ。
子供達はそれを見て気絶した。
「あははは!髪色とよく合ってるよ!んじゃ、次は──」
僕は何も出来なかった。無理だ。
僕は、また封じられてしまったから。
「残念だったねェ、仲間が殺される姿を見てから行こうか?はは」
1人、また1人と刺されていた。
「あああああああああああああぁぁああああああああああああああ!!!」
叫び声が聞こえた。
僕の声だった。
「うああぁああああああああ!!!」
「...な!?」
途端、部屋中を光が包んだ。
僕の意識はそこで途絶えた。
***
夢を見ている。
教室の中で、僕と友達と2人だけしかいなかった。
僕達は会話していた。
「なんで名前を教えてくれないの?」
「ただのゲームだよ。面白いだろ?」
「...まぁ。周りの人も協力して僕にお前の名前を知らせないようにしてたなぁ」
「凄かったよな、俺らのクラスって団結力ついてるからな」
「うん...。ところで、帰らないの?」
「え?だって、帰れないだろう?」
帰れない?
ああ、そうか。
帰れないんだ。
いつの間にか、教室から見慣れた平原に移動していた。
「紫暮ってさ、本当に優しい奴だよ」
「...優しい?」
ナイトが微笑んだ。
***
夢を見ていた。
そんな気がする。
目を覚まし、体を起こす。
知らない部屋だ。ここは何処だろう。
誰かが、ベッドの横にいる。
「アドルさん?」
「.....!小鳥遊様!?」
「え、はい、そうです小鳥遊です」
「よ、よかった...!!4日も寝たままだったんですよ...!」
「...4日!?ええと、僕、何か...」
......ああ、思い出した、そうだ、僕はあの地下室で...。
「そうだ!アドルさんこそ刺され...て...。あれ?傷は...?」
「貴方が治してくださったんですよ」
「...はい?」
あっ、まさかあの光って回復魔法の!
倒れたのは魔力切れにでもなったのかな...結構あったはずなんだけど。
「子供達や、他の皆は!」
「子供達は全員救出しました。他の方々も無事です」
「て、敵は」
「貴方が魔法で追っ払いました」
「...へ?」
僕が?あの強い敵を...?
「あの魔法は...確かに聖属性魔法です。その上、完璧な回復魔法。やはり小鳥遊様は」
「僕は、間違いでここに来てしまった、剣士です。それ以外の何者でも、ありません!」
「.......そう、ですか」
「...というか、ここどこですか?病院?」
「城の病室です。もう少し休まれますか?」
「いえ、大丈夫です。頭の整理はできました。...ん?あ、僕が寝てる間何もしてませんよね!?」
「してませんよ!?強いて言うならナイトが手を思いっきり握っていたくらいで...!」
ナイトなにしとんねん!!
いや、僕が気にしてるのは女とバレないかだからナイトは別にいいんだ。
...うん、アドルさんには感づかれてるけど...。多分、他の5人にも...。広まってなければいいけど...。
「軽く運動したらギルドに行きたいんですが」
「構いませんよ。私は報告しに行ってきます」
「はい」
アドルさんが病室から出ていった。
僕は両腕を天井に向けて伸ばしたり、軽くジャンプなどしてから病室を出た。
ああ、着替えもしないと...。
ストックに貰ってたやつ着よう...。
***
ギルドに着いた!
4日ぶりです。
「ど、どうも」
と言いながら、扉をゆっくり開けた。
ギルドの皆は僕を見て固まった。
すぐに、歓声を浴びせてきた。
「兄ちゃん!ほんとによくやったなー!!」
「よっ、ギルドの英雄!」
「敵と勇敢に戦って倒れたって?若いのにすげーなぁ!」
.......。あ、はい、ありがとうございます。
奥のテーブルには、一緒に倉庫に行ったメンバーが酒を飲んでいた。あ、こっち見た。
不良さんが、無表情のまま親指を立ててきた。
僕が聖女が使うような魔法使ったこと黙ってくれたのか...。勘良すぎでは...。
すると、カルハさんがこっちに来た。
「お疲れ様でした。タカナシさんは『見習い・剣士』から『初級・剣士』へと昇格です!」
周りの皆が拍手した。
え、めっちゃ恥ずかしい。
大勢の前で告白されてるような感じだ。されたことないけど。
ギルドカードを見ると、確かに見習いの所が初級に変わっていた。色も灰色から銅色になってる。
「しっかし、子供を攫った犯人近くの国の闇組織だったとはなぁ」
「え?隣国の?」
「ああ。海を跨いだ所にある国だ。闇組織が多いんだが...最近力を上げてるのは今回の犯人でもある、ダーシャっつー組織らしい」
「なんでそんなこと知ってんだよ」
「巷では結構噂になってるぞ?」
「へー」
おじさん達の会話がたまたま耳に入った。
この国の組織じゃなかったのか...。
「依頼受けます?」
「...すみません、やっぱり精神的にも疲れたんで今日は挨拶だけで」
「そうですよね。ゆっくりお休みください!」
...何も言わなかったけど、普通に後ろにアドルさん居ましたよ。
城に戻ると、ナイトが泣きついてきた。
「あぁ...。マジで心配したんだぞ...」
「うん...ごめん...。とりあえず離して...」
「すまん」
「シグレさんっ!!大丈夫なんですか!?」
「あ、リーナさん。はい」
「よかったぁあああ!」
今度はリーナさんが抱きついてきた。
騎士よ仕事か訓練せんか。
「僕は部屋に戻るよ。またね」
「はい!」「おう」
なんでアドルさん黙りっぱなしなんだろう...。
部屋に戻ると、キトラさんがアルと遊んでいた。
ああそうか、アルの世話も4日間ほったらかして...。
「キトラさんすみません!任せっきりで...」
「全然大丈夫だよー?シグレは寝てたんだから仕方ないよ〜」
「う...」
「ああ、ここに居たのか...キトラ、仕事を手伝ってくれ」
「兄さん!わかったよー」
キースさんが開けっ放しのドアから顔を出して声をかけた。
「アルよろしくねー」
「はーい」
キースさん達が去った。
だからアドルさん、なんで黙ってるんすか...。怖いっす...。
「小鳥遊様」
「ひっ!は、はい?」
「...やはり、訊かなければと」
「...?」
「貴方は、聖女様ですか?」
...................。
「...いいえ。私は違います」
「.....分かりました...。では、食事の用意をして参りますので、休憩なされていてください」
「はい」
そう、私は聖女ではない。
王太子様の出番少ないなぁ...。
ということでこの話から、後書きには誰かしら登場人物をゲストとして呼びたいと思いま〜す!(本編に出る時はここの記憶は消える)
色んな質問とかしていきます。
今回のゲストは紫暮ちゃんです!(最初の文は無視)
紫暮「どうもー」
作者「はいはい、紫暮ちゃんは得意なこととかある?」
紫暮「強いて言うなら縄跳びですね。難しい技めっちゃできます」
作者「すごいね。俺全然できないんだが」
紫暮「ハッ」
作者「今鼻で笑ったよね?まあいいや、次。好きな食べ物は」
紫暮「辛いもの苦手です」
作者「(好きなもの聞いてるんだけどな...)」
紫暮「んで?」
作者「あ...はい、最後の質問は...好きな教科は何?」
紫暮「んーと、日本史は好きですよ。できるとは言ってませんけど」
作者「.....はい、次回のゲストは大体察せると思いますが、お楽しみにー!」
紫暮「あ、もう帰っていいん?さいなら」
作者「(俺に対してめっちゃ口悪いやーん)」
一人称俺ですけど女です( ー̀∀ー́ )




