10話
銭湯・「和の湯」に着きました。
明かりはついていないが、奥にある建物はついている。
これ、正面から入っていいのかな?
「...お邪魔します!」
ガタッ!
...鍵がかかっていた。当たり前ですよね。
じゃあこれ、そのまま奥の方行っていいのかな。時間になっても誰も来ないし。
一応大声でユリさんを呼んでみたが、近所迷惑になるので1、2回でやめた。
「ごめんねぇ!遅れちゃったわ」
奥の建物から出てきながらユリさんが僕に言った。
「いえ。それで、何かあったんですか?急に手紙送って...」
「...会ってもらったほうが早いかもね」
「...会う?誰に...?」
僕はユリさんについていき、奥の建物に入った。
多分ここは従業員さん達の寮的な所だ。
「ほら、どうぞ」
「あ、はい」
2階に上がってすぐの部屋に案内された。
入ると、小さめのベッドに人が座っていた。
僕はその人を知っていた。
「.....友達...?」
「...よ、紫暮」
「なんで、ここに」
ユリさんは「後は2人で」と言い、部屋を出た。
「...紫暮がこの世界に召喚される時、魔法陣みたいなのが紫暮の足元に見えただろ?」
「...うん、確か」
「あの時周りには俺しかいなかった。そして、紫暮が消えた後も魔法陣は光っていたんだ」
「まさか、自分から?」
「いや。焦って劇の道具につまづいて転んで魔法陣に入っちまった」
「.........」
こんなドジ踏む奴だったっけ...。
「気がつくと、この建物の前に倒れてた。そんで、そこをユリさんに助けてもらったんだよ。紫暮もどこかに居るんだろうと思って、勝手だが特徴とか色々吐いた」
「別にいいけどさ...」
「そうしたら、ユリさんが『ついさっき城で聖女召喚が行われたはずだから、多分その子聖女じゃないの?』って言ったんだ。俺は城に行こうとしたんだが、運悪く熱出しちまってまた倒れたんだ」
「ほぉ」
「...紫暮、聖女なのか?」
「.......そうだよ。でも、この事は秘密にして。他に誰も言ってないから。女だってことは銭湯にいる人の一部は知ってるけど」
「わかった。理由聞いていいか」
「...聞いてもつまんないよ。僕の自己中心的な考えだし。そのかわり、というわけではないかもだけど、剣士目指してるんだ。結構上達したんだよ」
「...そう、か」
友達は安心したように笑った。
「はー、手紙を送ってきたのは友達に会わせるためか。2、3週間は経ったけどずっと寝てたの?」
「俺って風邪とか引くと長引くタイプだから」
「はは、そうだったね。もう大丈夫なの?」
「ああ。ユリさんにはここに住んでていいと言われてるから、まずはそうするつもりだ。お前は城にいるのか?」
「うん、間違いで召喚された可哀想な人になってるから、詫びとしてね」
「あー。それじゃあお前が黙ってる限りは聖女捜索は続いて、国は救われないんだなぁ」
「勇者さんも最近来たんだけどね。その人もやる気ないから」
「マジか」
それから数十分、友達と話し込んだ。
そうだ、こいつのステータスどうなってるんだろ。
「ねぇ、ステータス教えてよ」
「いいけど。確かこうやるんだよな...?『ステータス表示』」
「どう?」
「んー、基準がわからんからなんとも言えない」
「...僕も初期のステータス値忘れちゃった。職業は?」
「...騎士」
「おー」
友達は頭上にハテナマークをたくさん浮かべている。ように見える。
「俺別に剣の扱い長けてねぇし、なんで騎士...?」
「剣の才能あるんじゃない?職業がもう騎士ってことはそれになれってことじゃ...?」
「嘘だろ...。んなめんどいことしたくねー」
「まぁまぁ。気が向いたらでいいんじゃない?僕は王城で働いてる騎士さん達の訓練に参加してるよ、皆優しいし楽しいよ!最初の筋トレはキツかったけど」
「筋トレ...?.....ってかお前、男だらけ所にいんのか!?」
「メイドさんならちらほら居たよ。というか性別詐称してるんだしそりゃそうだよ」
「.........騎士、なるわ」
「え、まじ」
どういう心境の変化なのだろう。
僕全然わからないや!
「.....王城の騎士って、どうやってなるんだ?」
「知らない.....。アドルさんに聞いてみる」
「誰だそれ」
「僕の護衛してくれてる人。元騎士団長さん」
「凄いな...」
「明日また来るよ。もう遅いし...、じゃあね、友達」
「じゃあな、紫暮」
***
城に帰ると、時計の針は10時を超えていた。
アドルさんに若干怒られたが、気にしない気にしない。
「ところでどうやってここの騎士になるんですか?」
「話を変えて回避しないでください」
「僕の世界の友達がこっちに来てたんですよ。それで色々話してきて、騎士になりたいと言ってたんで」
「.....ご友人が...?そ、それなら仕方ありませんね...。王城付きの騎士になるには、まず城に申請書を送り、試験を受けて合格しないといけません」
「なるほどよくわかりません」
「...................」
「冗談ですからそんな目で見ないでくださいよ。それで試験とは?」
「...第一試験は、ステータス値のみを鑑定し、一定の値を超えていれば合格です。第二試験は、騎士としてふさわしい剣術を身に付けているか。魔力で生成した剣士を倒せれば合格です。最終試験は、面接です」
最後の面接で全部持ってかれた。
***
繰り返し説明を受けて、翌日の午後に友達の部屋に行った。
「──ふぅん。一定の値って、どんくらい?」
「攻撃力40000超えてればいけるみたいだよ」
「超えてるっけ...。『ステータス表示』。.......あぁ、超えてる。大丈夫だ」
「次は剣術だけど。講師をお連れしました」
「は?」
「入ってきてくださーい」
「失礼します」
「.....誰?」
「アドルさんです」
「どうも」
「アドルさんって、お前の護衛人じゃなかったっけ...。いやでも、元騎士団長なら剣術は凄いはず...。よろしくお願いします」
「はい。ある程度教えこんだら、面接についてもお教えします」
「はい!」
師匠と弟子...?
ま、アドルさんを連れてきて正解だったな。
僕もお手伝い頑張ろ。
「よし、んじゃ.......」
「.....どうしたの?」
「.....やべ、ずっと動いてなかったから体がギシギシいう...」
「あぁ〜...」
剣術身につけるどころじゃなかったね。
「ところで、貴方の名は?」
「...秘密です。紫暮からは『友達』と呼ばれてますし、アドルさんも適当にニックネーム付けてくれれば」
「.....?では、『ナイト』で」
おお、騎士の英語バージョンかな?
「なら僕もそれで呼んでいい?『友達』って呼ぶと勘違いされそうだし」
「いいけど、ならなんで今まで呼び方変えなかったんだよ」
「僕ネーミングセンスないから」
「そういう問題、か...?まぁいいや、着替えるから出てってくれ」
***
「終わったー?」
「おう」
と...じゃなくてナイトが部屋から出てきた。
「あ、制服だ。動きづらくない?」
「別に、ボタンとか外せばいけるし」
「...そう」
さすがに城でトレーニングできないので、魔物が少ししか出ない平原に移動した。
「ここならいいな。てか俺剣持ってないんすけど」
「武器庫から持ってきたので使ってください」
「ありがとうございます。でも試験の時にこれ使ったら捕まりそうなんで後で買ってきます」
確かにその剣は紋章的なのあるしなぁ...。
じゃあ、僕が使ってるこの剣はなんなんだろう...。
***
数時間経った。
...アドルさんの稽古はかなり厳しかった。
「おらぁ!そこだ!」
「くっそがァァァァァァ!!」
二人とも口が悪くなってきた。
今は魔物相手に戦っているところ。
この人達、戦場では人が変わるのかな?
まあ、ナイトの剣術もすごい上がってるけど。
やっぱり才能あったんだなー。
「...はっ!紫暮、後ろにスライムがっ!」
「あぁうん、わかってるわかってる」
くるんと右に回りながら素早く剣を鞘から抜いてスライムを斬った。
そして元の位置。
「上達が早いですね。これなら試験も余裕でしょう。次は面接についてです」
「はいっ!!」
あ、いつものアドルさんに戻った...。
この世界の人ってキャラぶれぶれなのか?
「訊かれるのは、何故騎士になりたいか。この国をどう思っているか。この2つだけです」
「...えっ」
「第一試験と第二試験が合格してたら最終試験も大体は通ります。力さえあればいけます」
アドルさんは親指を立ててドヤ顔で言った。
スパイとか来ない?大丈夫なの??
「おっしゃー!なんかよくわかんねーけどやったぜ!!」
「そんなに騎士になりたいんだ...」
「...まーな」
***
試験は1ヶ月に1度あるらしい。
なんと明後日だった。
「...剣買わねーと」
「そんならギルド行こ。依頼の報酬でお金貰えるから」
アドルさんはまた別の仕事が入ったみたいなので、数分前に別れた。
「ギルド、か。案内してくれ」
「うん。すぐ近くだよ」
こっち、と指をさした時、反対側から橋良さんが歩いてきた。
「あ、橋良さん」
「.......」
「...は!?なんで仁兄がここにいんだよ!」
「...じんにい?」
「お前こそ、何故ここにいる」
「あっ!俺はここでは『ナイト』と呼んでくれ、本名は絶対に言うなよ!」
「質問に答えろ」
え、知り合いかよ。
...場所を変えよう、すごい見られてる。
ナイトがここに来た経緯、勇者が橋良さんであることをお互いに説明した。
「...成程」
「仁兄、勇者だったのかよ...」
「あの、それで、2人の関係は...」
「俺が昔世話になってたんだ。実の兄のように思ってたから、仁兄って呼んでる」
「は〜」
橋良さんはため息をついた。
ため息つきまくりですね。
「高校生3名、行方不明...か」
「え?」
「向こうの世界ではそういうことになってる。そうでないなら、俺たちの存在が消えたか、又は忘れられたか」
「...その事、全く考えてませんでした...。確かにどうなってるんでしょう」
「難しいことはわかんねぇけど、まぁがんばろーぜ」
「「...........」」
「二人揃ってそんな冷たい目で見んなよ」
ナイトの言う通り、考えても仕方ない、か...。
「...橋良さん、散歩してたんですか?邪魔してすみません。僕達はギルドに行くので」
「あぁ」
元の道に戻り、橋良さんと別れた。
「...昔は優しかったのに」
ナイトがただ1人落ち込んでいた。
最近腹痛が続く柊ですどうもヽ(。・ω・。)




