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幕間

長すぎたので分割します。続きは近日中に

 こうして、『ひとり』だったはずの僕は、『ふたり』になった。それでも、僕の存在そのものが認められた訳じゃない。だって、僕がいる事が許された場所は、彼女の隣だけなんだから。

(時々夢に見る。これからずっと、ふたりで歩いて行く未来を。彼女は笑っていて、僕は隣でその笑顔を眺めていた。僕がいてもいい場所を、彼女がくれる。ただその事が嬉しくて、生まれて初めて幸せ、という感情を知る。きっとそれが、僕にとって一番、楽しい未来なんだろう)

 でも、と思う。そう思っているのが、実は僕だけなんじゃないか、って。僕みたいに何のとりえも無い、ただそこにいるだけのヒトが、彼女の隣に居続けていいわけがない。クラスでも中心にいる彼女と、その近くにいるだけの僕。例えて言うなら彼女は太陽で、僕はその光に照らされているだけの、宇宙に散らばるゴミなのかもしれない。

「―――さん、今日皆で遊びに行こうって話になったんだけど、どうかな?」

「うん、皆って事は、―――君も誘ったんだよね?彼が行くって言うなら、私も行くよ」

 いつだったか、クラスでそんな話をしているのを、ふと耳にした。というか、僕が教室に入って行ったにもかかわらず、誰も気付いていなかったんだけど。そう、彼女以外は。

 もちろん、僕はそれに誘われてもいないし、もし声がかかったとしても、行くつもりは無かった。中学に上がっても、僕の扱いは変わらなかったからだ。

「えっと、―――君って?誰の事、だろ?」

 その問いかけに、彼女は僕を見る事で答えた。僕の方を、じゃない。はっきりと、僕の目を見ていたんだ。

「分からないっていうなら、私は行かない。だって彼は、間違いなくここに『いる』んだから」

 そして彼女は、僕の手を取って教室を後にした。残されたのは、茫然と立ち尽くすクラスメイト達。何が起きたかわからない、そんな顔だった。


 変だな、と思った。そこには誰もいないはずなのに、確かに人の気配がある。考えてみれば、不思議な話だ。うちのクラスは三十八人なのに、机の数は三十九用意されていた。いつも空席だから、朝とか帰りとか、皆荷物置き場のように使っている。でも確かに、そこに人の気配はあるんだ。まさか怪談話、とかじゃないよね?

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