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本当に空腹のときは食べるときに周りを気にしない

「バシャ!」

風呂場のドアが開けられた瞬間、湯船に全身を突っ込んだ。


見られてない? いや、アウトっぽい。

顔がカーーっと熱くなる。


ちらっとドアの方を見てみる。

私と同い年ぐらいの男の子が、怒った様な驚いた様な顔で、口を開けて、こっちを見てる。


やや間があってから、向こうが口を開いた。

「おい、お前だれや。」


ぶっきらぼうな言い方に少しイラッときた。

「入ってるんだから、出てよ!!」

「誰やねんってきいてるやろ!

何かってに人ん家の風呂入ってんねん!」


声が大きくてびっくりして、一瞬黙ってしまった。

何か言おうと口を開いたとき、ドタッていう音がした。


「ちょっ、トキヨさん!

首! 首! 襟引っ張んのやめ、、、

トキ、、さん、、、ちっ、、そく、、、」

ズルズルと引きづられる音と一緒に、声が遠くなっていった。


サッと風呂場から出ると、さっき抜いだ服があった場所に着替えと布が2枚畳んで置いてあった。

布一枚を取って、身体を拭いて、着替えの服をバッと広げてみた。

白地に淡いピンク色の波模様が入っている浴衣て、下の丈は膝と足首の間ぐらいで袖も少し短めだった。

取り敢えず、着て、帯を締めてみた。

着終わってから、使ってないもう一枚の布が目に入った。

「あれ、この余った布どうするんだろ?」

少し考えていると、さっきと同じ様に、袖が引っ張られる感じがした。

見てみると、やっぱり袖の先が宙に浮いている。

呼んでいるらしい。






引かれるまま歩いて行くと、さっきの玄関を横切って、大きなドアの前にくると、食べもののいい匂いがしてきた。

ドアを開けると、フワッと焼き魚と醤油の香ばしい香りと熱々のご飯の美味しそうな匂いがしてきた。


中は食堂みたいに木製の長テーブルと椅子が2列になっている。

私の立っている所から一番遠いところに、二人、向かい合って話していた。


「ああ、入ったんか。

ちょっとこっちきい。」


さっきと服が違うショウが言った。

彼と話している人がこっちに振り向いた。

先程の覗き野郎だ。

改めてそいつの姿を見てみた。

緑と茶の間の色をした柔道着みたいなのを着ていて、

髪は上にお団子でまとめてる。

顔つきは可愛らしいけど、目付きと口元に生意気な性格が滲み出ている。


ショウの隣にはしが置かれてあったので、取り敢えずそこに座った。

目の前に私がくると、男の子がプイと顔を背けた。


私が入ってきたドアとは違うドアから大きな盆が沢山の料理を乗せて、ふわふわと飛んできた。


なんだかもう変なことに慣れてきた。


「よし。

この館の住民を紹介するわ。

まあ、メシ食いながらゆっくり聞いといてな。」

そんなことよりも私は目の前のことの方が重要だった。

香ばしくて、こまかな具材がたっぷり入ったソース? がかかった焼き魚はまだジュウジュウと音がしている。

そして、茶碗には山盛りの熱々のご飯が湯気をたてている。

他にも煮物やら漬物やらが色とりどりで、さっきまでお腹なんて空いてなかったのに、急に猛烈に空いてきて、口の中もよだれが溢れてきた。


目の前では男の子が手を合わせて、「いただきます!」と叫ぶと、すごい勢いで食べ始めた。

私も小さく、「いただきます」と言ってから、焼き魚を一口食べてみた。


美味しい。

こんなに美味しいのは生まれて初めてだ。


そこからはまわりなんて気にせず、ガツガツと食べ始めた。


「フッ、、ええ食いっぷりやなあ。

まあ丸一日何も食わんかったらそうなるか。」









机の上があらかた片付いて、ようやく、一息ついた。


「もっかい言うけど、ここの住民紹介するな。

目の前におるこいつが春雨(はるさめ)

妖モノと人間の子で、自分とおんなじで俺の弟子や。 年は14。

まあ、口悪い奴やけど悪い奴ちゃうから、さっきのことは許したってな。」


「ふん。」と春雨がソッポを向くと、ショウが

ジロッと睨んだ。

途端にビクッとなって小さくなった。

「こいつ年下か。」そう思った。














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