始まりは足音と供に
コッコッコッコッ。
響く足音に目が覚める。
石造りの暗い天井に淡い橙色の光の筋が差し込んでいる。
ガバッと起き上がると使い古した白い着物を着て、黒色の手錠をはめられた自分の姿が目にはいってくる。
「は? え?何?」
戸惑いながら周りを見回す。
狭いマンションのリビングぐらいの部屋で三面が天井と同じ様に石造り、残りの一面は時代劇に出てくる様な木製の格子、下に目を向けると自分のいるところが周りより少し高くなっていて、藁が敷いてある。
「独房? いやなんで石造り?木製?着物?」
不安になり、頭を抱える。
「落ち着け、何があった? 確か私は、、、」
確か私は学校から帰って夕飯の支度をしていた。
ウチは父一人、娘一人の二人家族で先に帰った方が夕飯を作っていた。
「ピンポーン」
「はーい」
ドアを開けるとスーツ姿の背の高い男二人がいた。
「倉田直樹さんの娘さんの倉田綾さんですか?」
「はい、そうですけど、」
「私達は君のお父さんの元同僚でね、お父さんはいらっしゃるかい?」
「あ、いえ、でももうすぐ帰ってくると思います。」
「ああ、じゃあ、中で待たせてもらっても?」
「分かりました、どうぞ」
そのまま彼らを招き入れて、リビングに入ったとき、
スーーーッと意識が遠くなった。
それから記憶がない。
異常な状況に頭が回転する
「手錠をさせられて、着物を着て、変なところにいる、まさか、私、売られたの?」
父は製薬会社に勤めていたがウチはマンション暮らしで決して裕福ではない。だが父は厳しいがそんなことをする人ではない、そんなことをする人では、、、
「コッコッコッ」
さっきの足音が近づいてくる。
「もし、売られたんだとしたら、、、」
自分の手足をギュッと引き寄せる。今は薄いものを一枚、帯で留めているだけで、下着は着ていなかった。
「やばい やばい やばい やばい」