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風属性の剣使いの異世界物語  作者: SHIN=ALICE
6/12

鍛錬だ!

翌日の朝。


俺は目覚めると奇妙な感覚に襲われた。

人の視線を感じるような感じだ。


眠気でボヤける目を擦りながら体を少し起こしたところで視線の正体に気付いて目が合った。


「...何やってんの?」


ベッドの側で俺の顔を覗き込んでいた美少女エルフ...エルザだ。

ここは確か俺が借りた部屋なんだが。


「えへへ、意外と可愛い寝顔だね。」


人様の部屋で人様の寝顔を覗き込む。

コイツは何をやってるんだろうな。

付き合いがまだ昨日だけと短いのに随分と打ち解けた感じで来たのだが、正直に言おう...


可愛いから許せる...!!


顔には一切出さないが普通に嬉しいな。


実は、目覚めたら元の世界に戻ってたらと思う気持ちもあったのだが、残念ながら戻れなかった。

しかし、この世界は意外と僕には優しいのか、住む場所もほぼ無償で提供されたし、同じ村の住民は皆優しいし、おまけに美少女揃いな村だ。

サージの事も勿論忘れてないぞ?

不安もあったが、今はそれよりもワクワクしてる気持ちの方が強いし、これからの生活も楽しみだ。

そんな中で仲良くしてくれてるのでそりゃ...


「────ぇ...ねぇってば!」


エルザが何か言おうとしているのに気付き、我に返る。

どうやら彼女はさっきから呼びかけてきていたらしい。

すぐに拗ねそうになるが、少し褒めればすぐにデレるので心配はなさそうだ。


「どうした?」


「どうしたじゃなくて...フィロードさん外で待ってるよ!衛士なんでしょ!早く行きなよ!」


コイツ...起こさずに寝顔を覗き込んでたんだよなぁ?

何を今更...。

まぁ、仕方ないので起き上がって族長に貰った寝巻きを脱ごうとする。


「ちょー!?ちょっと待ったぁ!!着替えるなら部屋出るからっ!!」


そそくさと立ち上がり顔を真っ赤に染めて部屋から出ようとするエルザ。

そういえば体は幼いからエルザと年が近いように見えるのかと思い出す。

あんな子でも異性とか気にするんだなぁと思った。

反応が初々しくて癒される。


「人の部屋には勝手に入るくせに恥じらいはあるんだな。」


ギクッと一瞬固まったエルザだったが振り向いて舌をベーっとだして出ていった。

その仕草もまた可愛く、愛嬌があった。


「やれやれだな...」


ササッと着替えを済ませた俺は族長に軽く挨拶して家を出た。

そして、表ではフィロードさんが待っていた。

割と嬉しそうに。


「ようボウ...リオン!」


「......おはようございます。」


「おう!」


わざとらしく間違えたフィロードの挨拶に対して冷たい目で挨拶を交わす。

当然のようにスルーされるが。


「さぁ!衛士初日だぞ!早速、鍛錬しに行こうじゃねぇか!」


気が早いフィロードは挨拶を交わしてすぐにそういうと、鍛錬を行うところに向かって歩き出す。


「え、ちょ...」


あまりに急なので置いていかれそうになる。

鍛錬が好きなのかフィロードは割と笑顔なんだが...。


フィロードはクールにしていれば普通にかっこよくて、強いのもあって憧れの対象にもなりそうなのだが、見た目に反して熱血キャラでとても残念な気がするな...。


フィロードについて行ってると、村の出入口近くまで来たのだが...鍛練って村の外なのか?

フィロードが居れば確かに魔物にやられる心配もないのだが、俺は魔物を見たことがないので少し不安だ。


そのまま村を出て十分程度歩いたところに鍛錬場らしきものが見えた。

いや、グラウンドにしか見えないが。


広さとしては三百メートルトラック程で見張り担当の二人を除けば残り四人しか使わないので、広過ぎる気がするのだが、模擬戦をやる時に広い方が良いのだとか。


広場の地面は整えられており、雑草が生い茂っている森の中と違い、草が全く生えていない。

まさに学校のグラウンドみたいな広場だった。


広場の隅の方には木製の的がいくつも設置してあり、弓の練習も出来るようだ。

俺も男だからこういうを見ると心躍る。


昨日、魔法が使えたと発覚したばかりの凡人である俺が戦えるかどうかは微妙なところだが。

ボコボコにやられそうだ...。


広場に着くと、二人のエルフが既に居た。


一人は金色の髪が腰あたりまで伸びた青眼の女エルフ、弓を持っているので弓使いだろう。

露出度が高く、動きやすそうだがセクシーな服装をしている。

スタイルも良く顔もお世辞抜きで美人と言えるのでモデルとしても生きていけそうだ。


もう一人は茶髪が肩にかからない程度に短く、身長も高めな紫眼の女エルフだ。

二メートル超の長い槍と一メートル程の短い槍を背負っている。

これまたセクシーな服装なのだが、やはり動きやすさを重視しているのだろう。

雰囲気からしてかなりの強者だ。

槍が無ければただの美人なのだが...。


...エルフって美人しかいねぇのかよ!!


突っ込まずにはいられなかった。

村の女性陣も美人揃いでとても複雑な心境になる。

気にしない男性陣はおかしい気がする程と思う程にだ。


「あっ!フィロードさん!」


「おはようございます!」


「おう、元気があっていいな。」


二人は俺たちに気付き駆け寄って来る。

かなり強そうな雰囲気を放っていたが、フィロードを慕っているのがよくわかる。

...フィロードって実はとても凄い人?


「えっと...そちらの可愛らしい子が先日おっしゃってた...?」


金髪美女エルフが俺を見てからフィロードに聞く。

他の衛士達には俺の事を紹介済みでしたか。


「あぁ、俺の弟子だ。」


おい。


俺はいつあんたの弟子になったんだよ。


「おはようございます。弟子ではないです。」


フィロードを無視して笑顔で挨拶する。

隣のエルフがガックリした気がしたが、絶対に反応してあげない。


「可愛らしい子だねぇ...フフッ」


金髪エルフに挨拶して早々に褒められた?

金髪美女の方が可愛い。

弟子になるならフィロードより金髪エルフさんの方がいい。

まてまて...抑えるんだ。

ニコニコと金髪エルフが俺を見ていると隣の茶髪エルフが一歩前に出る。


「自己紹介まだだったね。私はターシャだ。よろしくね、坊や。」


茶髪エルフが名乗ると隣の金髪エルフもそれに習う。


「私はリーフィアよ。よろしくね。」


「俺はリオンです。よろしくお願いします。」


フィロードから既に紹介されているだろうがここはしっかりと名乗っておく。


「うむ、仲良くしてやってあげな!」


「はい!」


「は〜い!」


いやだからなんでアンタは上から...いや、上なのか、よく考えてみると上司なのか。

フィロードが上司にあたるのを忘れていた。


「さっ、挨拶と自己紹介はこの辺までだ。鍛錬だ!やるぞ!リオン!」


フィロードは準備運動しだした。

俺は女性二人に軽く会釈して準備運動をする。

一瞬、哀れんだものを見るような目をしたが、なんだろうか?



準備運動を済ませた俺にフィロードが鍛錬内容を挙げていく。


1.広場を百周...だが、フィロード流でやるので三百周。


一周あたりおよそ三百メートルなので九十キロだ。

元の世界だったら特番が出来そうだ。


2.剣の素振り千回...これまたフィロード流なので三千回。


聞いただけで腕がもげそうだ。


3.拳による組手...本来、武器無しでの鍛錬は行わないのでフィロードだけの特別メニューだ。


普段は他の衛士に混ざって模擬戦として行っているらしい。

他が武器持ちなのに素手で立ち向かうとかバケモンかよ...。


4.武器や魔法を使った模擬戦。


素手から武器持ちに変わるだけで一つ前のメニューとほとんど変わらないという。


...これ一日で終わるか?


これを聞いたら普通にこう思うだろう。

疑問に思ってフィロードに聞いてみたが、俺は昼前には全部終わるぞ!だそうだ。

バケモンかよ。


「フフフッ、やるぞリオンよ。」


「これを...ですか。」


「勿論だ!」


「...マジすか。」


俺とフィロードは全力疾走した。

この世界では体が軽いような感じがするんだけど...魔力のおかげなのか軽く感じるんだけど...!!!

これはキツイですね!!!


フィロードは俺の五倍近くのペースで走ってるんだけど人間じゃないだろ。

まぁ、人間じゃなくてエルフだけど。


昼が過ぎておやつの時間と言われる頃合いに吐きそうになりながらやっと三百周が終わった。

足もガタガタでぶっ倒れてしまいそうだ。

これでも充分早いしよく体力が尽きなかったなと思ったけどフィロードはとっくに終わっていてもう何が何だかわからない。


そして、素振りの為に木製の剣を手渡されたが、これもまた軽くない。

三百周でもう身体が限界なんですけど...。


そう思っていたのだが...。

何故だろう。

剣の持った瞬間、内なる力が爆発的に上昇したような感じがした。

心做しか右手の甲の模様...『守界の刻印』が光を発したような...。

どうやらまだやれそうだ...。




なんとか素振りを終えた時には既に夕日が沈みかかっていた。


フィロードは最後まで付き合ってくれていたが、あと二人は俺が広場を走ってる時に帰っていた。

面倒見がいいのかフィロードはずっと振り方などを指導してくれていた。

まぁこの鬼畜メニューをやらせてきた張本人なのだが。


「お疲れさん!正直、驚いたぞ。よくここまでやったものだな。」


このメニューをやらせたアンタが言うのかよ。

俺は心の中で毒突いた。


「はぁ...はぁ...ふざけたメニューですね...とても人間がやるようなものだと思えませんよ...。」


「ハハッ、普通はエルフでもやらんよ!でも、それを初日でやり遂げたんだ。誇っていいぞ!」


フィロードは親指を立てて笑顔で俺に言う。

エルフでもやらねぇのになんでやらせんだよ。


「うむ、予想だと広場を百五十周したあたりでギブアップするかと思ったんだがな、なかなか根性があるじゃないか。リオン、お前強くなれるぞ!」


「キツイのが分かってんならやらせんなよ!!」


我慢出来ずに俺は突っ込んだのだった。



二人で村に戻ってから解散したのだが、体が悲鳴を上げているので早く寝たい。

しかし、夜に魔法の鍛錬も行った。

これは自主的にだが。


枯渇寸前までやって回復して〜っていうのを繰り返すとどうやら蓄えられるオドの限界が上がるらしい。

ゲートの魔力放出量の調節も上手くなり、何より魔法が洗練されていくというので欠かせないようにしようと思った。




俺は担当の日には夕暮れまで見回って、残りはフィロードだけに任せて帰り、見回りがない日には鬼畜な鍛錬をする。

そんな感じでこの村に来てから一ヶ月が経った。




────────────




「明日か...」


月が照らす部屋の中、俺は思わず呟いた。


明日はフィロードと一緒にオルニア...王都に行く予定なのだ。


前々から族長に紋章の件で相談していたので、やっと向こうで刻んで貰えるのだ。

これで魔法の鍛錬をコソコソやらずに済む。

なんせ紋章無しだと適正属性がわからず危険だと思われているからな。


俺の場合、風だと知ってしまったが。

他の人はそれを知らないので当然止めるだろう。


紋章を刻むと言っても魔法を行使して浮き上がらせるっていう方が正しいだろう。


そうなると村でも出来るんじゃないか?と俺は族長に聞いてみたんだが、長年修行した上級魔術師の中でも光適性の者しかこの魔法を使えないので王都に行くしかないそうだ。


村にも確かに優秀な魔術師がいるのだが、残念ながら光適性者がいない。

エルフの村では風、土の順で適正者が多いので光だけでなく、火や水適性の者すらいない。

風、土といっても九割と一割なのだが。


とにかく明日が楽しみだ。

フィロードも付いてくるので悪漢に襲われる危険性もほとんどないから安心だ。


俺はまるで修学旅行前の夜みたいに眠れないのであった...。

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