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風属性の剣使いの異世界物語  作者: SHIN=ALICE
3/12

孫馬鹿。

俺はある一室でエルフのお偉いさん、族長と対面した状態で座っていた。

家具は必要最低限しか置いてなく、とてもシンプルな部屋だ。

部屋は窓は一つだけあるが、どうやら日差しは差し込んでいない。

部屋の照明は天井に貼り付けられている?石のようなものが発光して補っているみたいだ。


「...《守界の刻印》か。」


見た目は中年男性の族長は模様を見つめて考え込んだ後にそう呟いた。


「《守界の刻印》...ですか...。」


青年も何やら深刻そうな表情で続いた。

守界...何やら面倒事に巻き込まれたのではないだろうかと心配だ。


「そうじゃな。お主がこの少年の話をした時に薄々そうじゃないかと思っていたのじゃが...まさかな...。」


俺が部屋に入れてもらう前に青年がある程度のことを先に話したのだろう。


「そうですか...それで、この少年をどうするつもりですか?」


この青年は族長に話す時は俺のことをボウズじゃなく少年という。

中身は幼くないからボウズよりその方が嬉しいなぁと思っていると...

突然、族長がこちらを向いて口を開いた。


「少年よ。いくつか聞いていいじゃろうか?」

「はい。」


特に断る理由はないので肯定する。


「うむ、では...何から聞くかの...」


少し考えた後に続けた。


「おぬしは親とか...親族はおるのかのう?」


保護者とかを確認したいのだろうか。

それはいるにはいるのだが、居る世界が違うから答えようがない。

そもそも名前すら思い出せないのにどう答えたらいいのだろうか。

少なくともいるとは言い難いところだ。


「いません。残念ながら。」


俺は悩んだ末にそう答えた。

すると、族長は申し訳なさそうに「そうか」と言った。

が、すぐに表情を元に戻し話を続けた。


「親がいないと言ったな...。それに行く宛も無いと聞いたのだが...おぬしさえ良ければなのだが...」


少し迷う素振りをした後に


「ウチの村に住む気はないかね?」


族長は俺の顔を窺いながら切り出してきた。


「えっと...いさせてもらってもいいのですか?」


あまりにも唐突過ぎたが、これは聞き逃せない。

この世界で途方に暮れてた俺に取っては凄く助かる事なのだ...。


「あぁ、普通はエルフの村にエルフ以外の者を住まわす事は好まれないが特別に許可しよう。少年はまだ幼いしワシが許可するのじゃ、誰も邪険にはしないじゃろう。」


『普通はエルフ以外は住まわせない。』

...恐らくそれだけこの刻印には価値があって手元に置いておきたいのだろうな。

では、それほど価値のある《守界の刻印》とは何なのだろうか。

見た目は子供だから、質問したらきっとわかりやすく教えてくれるだろう。

せっかくなのでこの刻印の事を聞いておく。


「途方に暮れていたので助かります...ところで一つ気になったんですがいいですか?」


お礼を述べた後に質問の許可を貰えるか聞いてみる。


「ほう?なんじゃね?」


族長は興味深そうに俺の顔を見たので続ける。


「《守界の刻印》ってなんですか?」


と、ストレートに聞いてみた。

族長は一瞬、困り顔になったが頷いて話し出す。


「詳しい事になると長くなるかもしれんが構わないか?」


特に時間に困ってはいる訳ではないので迷うことなく頷く。




「...何から話すかの。」


「ふむふむ...急に言われては信じ難いかと思うのだが、まずはその刻印じゃが、神に選ばれた者のみが持つと言われている刻印じゃ。」


「え...か、神!?」


予想以上にスケールがデカくて驚かざるおえなかった。

そして、この世界にも神というものが居たんだな。

実在するかは別として。


「そうじゃ、神じゃ。そして、その刻印を持つ者はこの世界を闇から守る為に絶大な力を持つとも言われている。」


闇?絶大な力?

世界を守る...!?

唐突に使命のようなものを告げられて俺は困惑する。


「具体的にどんな力なのかは知らんのじゃがな。」


わからないのかよ!!

でも、確かに世界を救えるようなやつを放っておいて野垂れ死にさせる訳にもいかないな。

不覚にも少し得意気な気分になった。


「それで村に在住の許可を...」


しかし、族長も力がどのようなものかも知らないし何故そんなものが俺に。


「そうじゃな。それも理由の一つじゃ。じゃが、もう一つある。」


「もう一つですか...?」


「うむ、先程も言った通り絶大な力を持つということは大国に目をつけられれば死ぬまで兵士としてこき使われる。じゃから、保護という目的もある。勿論、おぬしの同意があってこそじゃが。」


たしかに絶大な力があれば大国は欲しがるだろう。

戦争で使う兵器と同様に他国との力の差を見せ付ければ交易などで有利に物事を進められるだろう。

目をつけられてしまうのも無理はない。


「なるほど...断る理由もありませんのでお願いします。」


「そうか...それは良かった。」


族長は安心したように笑顔を浮かべた。


「それと...じゃな...これはワシの我が儘なのじゃが、ワシにはおぬしぐらいの孫がいてじゃな、仲良くして欲しいなというのもあったりするんじゃよ...。」


唐突に孫の話をぶっ込んで来たかと思いきや仲良くして欲しい...ですか。


「孫...ですか?」


先程の壮大な話のせいか些細な事のような気がして戸惑いを隠せない。


「そうじゃ、エルフは長寿なもんでな。子作りを滅多にせんのじゃよ。っと子供に子作りなんか言っちゃダメか、ホッホッホ!」


何かを話し始めたのかと思ったら突然笑い出すもんだから先程までの少し重い空気が見事に崩れさった。

それと、たしかに子供に子作りなんて言っちゃマズイな。

何かと聞かれたら誤魔化すのが大変だ。


「え〜...なんじゃったかな?...そうじゃ、ワシの孫の話か!実は村に同年代の子が一人しか居らんくてな。遊んでやって欲しいのじゃ。」


なるほど、少子高齢化が進んでいるので孫には友達がいないと?

いや、その一人どうした?

そいつでいいじゃないか。

そして、子供を作らない村が悪い気がするんだよ。

色々と考えてると族長は不思議そうに俺を見てきた。


「う〜む、おぬし子供っぽくないの...」


何故そう思ったのかわからないが少しつまらなそうに言ってきた。

そして、その通りです。

大学に入学したので青年って言った方がいいような歳です。

個人情報が思い出せない為、年齢は出てこないが、少なくとも十八以上だ。


「いえ、族長。ボウズは子供ですよ。」


何故、ボウズと呼んだ...。

先程まで少年と言っていただろう。


「うーむ、そうだ。長寿と言ったな。では、ここは一つ、ワシの歳を教えよう。」


唐突に何の自慢だよと思っていたら...


「七八三じゃ!」


「...は!?」


さすがに驚いたな。

中年のような見た目からせいぜい八十ぐらいまでだと予想していたが...

まさか、八百歳手前とは。

誰が予想出来るんだよ。


「ホッホッホ!人族の子供は反応が面白くて飽きぬな!」


「族長...」


隣の青年も...きっと青年なんて歳じゃないのだろうな。

どうせ三百とか四百歳だろうな。


「ホッホ!ちなみにこやつは二百...何歳じゃったかな?」


「...三十八です。」


楽しむ族長を呆れたような感じで青年...のようなエルフは話す。

そんなんでもないな。

いや、族長がおかしいのであって充分過ぎる程に長寿だよ...。

それにしても、長寿とはそこまでなのか。

これは思わず感心してしまう。

人である俺が10回は生まれては死んで、ってのを繰り返したような歳だぞ。この族長。

まさか、孫って...!?

俺が考えている事がわかったのか族長は、


「安心せい。孫はまだ十二歳じゃ。可愛いじゃろ?欲しがってもワシが生きている間、おぬしに孫をあげるつもりはないからな!」


(いや、いらねぇよ。)

心の中でつっこんだ。

族長はとんでもない親...いや、孫馬鹿だった。

ただの馬鹿かもしれないが...。


「ふむ、孫とは仲良くしてくれそうで結構!...で、何を話してたんじゃったかな?」


「《守界の刻印》の事でしたね。」


「そうじゃったな。うむ、神に選ばれた者しか持っていないのと絶大な力で世界を救う。《守界の刻印》とはそういうものじゃ。実際に見るのは初めてじゃがな。」


ざっくりしてるが大変なものを持ってしまった事 はわかったの刻印の事はこれぐらいでもういいだろう。

と、思っていたのだが....。


「まずはじゃな...」


族長が話終えたのは恐らくこの一時間後くらいだろう。




────────────




「...という訳じゃな。」


族長が長々と話してくれたことをまとめる。

歴史はともかく...



つまり、


闇が世界を滅亡しようとしたのを刻印を持った勇者達が神と協力して倒した。


神に使える予言者が千年後に闇が再び現れると予言した。


そして、闇を倒した年から新世暦が始まって今年は新世暦九九五年。


予言通りならあと五年で闇が再び現れる。


ということだ。



やはりスケールがデカイ。

元の世界でこんな物語の本がありそうだ。


「...ありがとうございます。」


必要以上に話してもらったのだが。

色々と知れたので良かったのかもしれない。

お礼を言っておく。


「いいんじゃよ、当人であるおぬしもいずれ知らねばならぬ事じゃしな。」


族長は頷き話を続けた。


「んでじゃな、村に住ませるにあたって一つ条件を付けたいのじゃが構わんじゃろか?」


タダで住ませてもらう上に恐らく食事も貰えるだろう。

それなのに条件の一つも了承出来ないのは流石に人間として有り得ない。


「大丈夫です。むしろ、無いと割に合わないと思っていました。出来ることなら何だってします。」


俺は迷うことなくそう言った。


「うむ、そうか。じゃあ、後のことは任せたぞ、フィロードよ。」


「かしこまりました。よし、改めてボウズ、俺のはフィロードっていうんだ。よろしくな!」


族長が話を振ると、青年エルフは自己紹介してきた。


「あ、はい。俺は...リオンっていいます。」


実名は思い出せないが『リオン』が俺の名前のような気がするからそう名乗っておく。


「リオンか。うむ、悪くない。」


俺が軽く自己紹介すると族長が口を挟む。


「ワシの名はオザじゃ。よろしく頼むぞ、リオンよ。」


そして、族長ことオザが自己紹介し、全員が自己紹介し終わったところでフィロードが説明をし始めた。


「じゃあ、ボウズ...じゃなくてリオンは俺と一緒に衛士になって見回りなどを行ってもらう。」


衛士ですか。

見回りや防犯か。

それで村を眺めてたら捕まったわけか。

意外と警備に気を使っているものだ。

やはり、魔物がいるのだろうか。


「衛士この村にあと四人居るんだが、二人一組になって別の日の見回りを担当してもらっている。リオンが加わったから全員で六人だな!」


衛士が増えてフィロード嬉しそうだ。


「で...だな。普段は二つのペアと俺が日毎で見回りの担当を回してやってるわけなのだが、リオンが加わってやっと三つのペアで回せるな、ハハッ。まぁ今日はこのまま俺が一人で見回ってくるが...。」


少し残念そうな表情になった。

最初は気難しい人かと思ったがフィロードは表情がコロコロと変わる。

意外と気さくな人なのかな。

族長もそうだったのだが、この村のエルフはみんなこうなのだろうか...?


「で、見回りがない日なんだが...無論、鍛錬を行う。強くなければ村を守れないからな。そしてだな、サボらずに鍛錬をしないと...」


凄く険しい顔なので相当いけないのだろう。

あまりの気迫に身構えてしまう。


「しないと...?」(ゴクリ


思わず固唾を呑む。


「...飯抜きだ。」


溜めに溜めた上で予想の斜め上をいく返答がきた。

これは...ふざけてるのだろうか。

となりで族長は凄く嫌そうな顔をしてる。

あんたは関係ないだろ。


「リオンよ...飯は...大事じゃよ?ワシも昔は衛士やってたからな...出来心でサボった事あるのじゃよ。飯抜きはメッチャつらいんじゃよ。」


おい、族長。

今、メッチャとか言わなかった?

メッチャって言ったよな?

確実に言ったよな?!

使ったよな!?


「お腹が空いてるのに隣で美味しそうに食うんだぜ...?リオンも同じ目に遭わないように気を付けることだ。」


フィロードは片目を瞑って言う。

これは、いちいちツッコミを入れていたら疲れるやつだ。

エルフはどうやら変な種族らしいな。

そんな概念が俺の中で出来上がった。

すると突然、部屋の扉が勢いよく開かれた。


「あ、お爺ちゃん。それとフィロード兄さん、こんにちは。そこの人は?」


そこには可愛らしい金髪の少女がいた。

エルフなのでもちろん耳は尖っているが。

顔は整っており、将来有望だ。


「おぉ、エルザよ。紹介しよう、この娘がワシの可愛い孫のエルザじゃ。」


オザは満面の笑みで紹介してきた。

とても可愛いのだろうな。

こんなに素晴らしい笑顔の中年などそうそう見れる

ものではない。


「こんにちは。」


笑顔でエルフの少女、エルザに挨拶する。


「うむ。で、こやつはリオンじゃ。これからこの村で暮らすことになっとるから仲良くするんじゃぞ。」


エルザはオザから俺の話を聞くと頷いて、


「よろしくね!」


と、俺の方に向き直り笑顔で言った。

お世辞なしに可愛いから族長のオザが可愛がるのもわかる。

俺も可愛がりたいぐらいだ。


「では、私はまた見回りに。リオン、明日また会おう。」


そう言ってフィロードは先に部屋から出て行った。

それを見送った後、


「ふむ、外にはサージもいるのじゃろ?どうせなら二人でリオンに村を案内してやりなさい。」


オザがエルザにそう言って俺の顔を見る。


「すみません、よろしくお願いします。」


案内してもらう身なので、俺からもエルザにお願いしておく。

と、行っても村に連れてこられた時にある程度見させてもらったわけなのだが。


「うん、わかった!...んじゃ、行こ!リオンくん!外でサージも待ってるから!」


僕は立ち上がってオザに一礼してから部屋を出ていった。

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