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第1話 夢で目が覚める

再投稿です。よろしくね。

 ここはどこなのだろうか?


意識が覚醒してまず始めにそれを思う。

いつもなら生活している部屋の天井が視界に入り安心する。

そんなことから自分の中で1日が始まるはずのだ。


しかし、今視界に入るのはそんな日常では無かった。

真っ白な、ただただ真っ白な空間が広がっている。

地平線も継ぎ目も模様も歪みもない。

言葉通り、何もない。


真っ白で塗られた絵なんかよりも無機質なそこにただ一人、自分だけが立ちすくんでいた。


いや、横たわっているのかもしれない。どちらかは判断できない。


「死んだ?」


無自覚にそんな言葉が口からこぼれ出た。

いやいや、そんなことはないはずだ。死ぬようなこと

をした覚えもないし殺された記憶もない。


夢だ夢、レム睡眠とかそんなやつで頭が記憶の整理をしてるってだけだ。

明晰夢なんて人生で初めての経験だがここまで意識がはっきりしているものだったのか。


とりあえず分析から入ろう。せっかくの機会なんだ。なにか新しいものがあるかもしれない。


広がっていく

「とはもいえ、これはなぁ。」


改めて自分の状況を確認する。やはり、目に入るのは何もないただの白の空間だ。なんの変化もない。


夢は自分の記憶と願望の結晶だって誰かが言ってた。まさか自分の中身がこんなに空っぽだという結論にでも至れとでも自分の脳味噌は判断しているのだろうか。

というよりもこれは夢なのかさえも分からない。もしかしたら自分の気づかぬうちに衰弱死でもしてここは死後の間だったり空間の狭間だったり輪廻転生の呼び出し待ちなのかもしれない。

……それはそれで楽しそうだ。



とまぁ現実逃避の方向に思考がずれてくことになりそうだが本当にどうしようか。

何かイベントが起きもらわないと分析のし甲斐がない。何かがあってそこでものを考えることができるというのに。さすがに前情報全くなしで想像しようとすると選択肢が多すぎて困る。

これがただの夢ならいい。それはそれで自分の脳内が心配になるけど……

問題はこれが超常現象の場合だが、その時はどんな風にふるまうべきか考えておく必要があるかもしれない。



何か変なものが出てきたらたまったもんじゃない。などと考えているとふとめのまえの空間に変化が起きた。それは小さな波紋、いやそう呼んでよいかはわからない。本当にそれが波紋なのか詳しい人に聞いたら頭の上に大きなクエスチョンマークを浮かべてくれるだろう。その小さな広がりは普段自分たちが見ているような水面にモノが落ち広がっていく儚くも風情のある波紋と違う。なにに例えるべきかは語彙に乏しい自分にとっては判断つかないが中心から全方位に広がっていくようなそんな感覚だ。


……もうちょっと詩的表現の広がるような正統的な小説を読んでおくべきだったかもしれない。大学生になり本を読み始めた時にビジネス書しか読む機会なかったし明日目を覚ませたら文豪の書いた小説を読破してみるか。


何はともあれはじめは曇り空から一滴二滴落ちてくる雨の前兆のようにまばらなものだった。しかしそれは次第にそのテンポをあげていき、次第にそれは安定するかのように一定のリズムに近づいていった。


さて、何が出てくるのか。

息を潜めて様子をうかがう。


隠れるところなんてないから少し姿勢を低くしただけなのだけれども。


警戒しながらそれを待っているとその波紋から音が、声が届いた。


『やあ、初めまして。僕の声は聞こえるかな?』


落ち着いて、よく通る明快な声だ。

もうすぐ二十歳になる自分と同い年くらいの印象だろうか。

目的がはっきりしていて自分の意思を強く持てているように感じる。

うらやましいことだ。

しかし、その姿は全く持って見えない。なんか水晶のような通信機器を通して声を聴いた気分になる。


話しかけられたまま何の反応もしないのはどうかと思ったので返事を返す。


「うん、聞こえてますよ。現状はさっぱり把握できないですけどね。」


「よかった。どうやら相性は悪くなかったみたいだね。」

さりげなく自分の愚痴は流されてしまった。悲しい。


それにしても、大きな相性か……波長みたいなもんが合わないと認識できなかったりするのかね。


「まぁいいです。とりあえずここはどこなのかとなぜここにいるのかだけでも教えてください。」


「意外と冷静だね」


仕方ないじゃないか、なんだかんだ5分以上まっていたんだ驚くものも驚かない。

ドッキリさせたいなら畳みかねないといかんよ。


「まぁ冷静になる時間はありましたからね。あと夢って自覚ありますし。」



死んでたら夢なんて見ないだろう?


「そっか、それじゃあ説明するけどちょっとだけ待ってて。」


さすがに何もないところで話すのはいやでしょ?


というと空間から青い紐状の何かが集まり人のような形に変化していく。


それは大きなジンジャークッキーのような形になり自分の前で浮かぶ。

表情が見えないはずなのに感情豊かなのかなんとなく感じ取れる。


「やっぱりこの姿のほうがわかりやすいね。それじゃ本題に入っていこうか」


軽くうなずき促す。こっから先は聞き手に回ろう。



「実は君をここに呼んだのはほかならぬ僕自身でね。

君には今度この世界でないところに避難してもらいたいんだ。」


無言で促す。


「先に念を押しておくけど別にこの世界で大災害が起こるとか地球滅亡ストーリーが始まるわけではないさ。

こっちの都合で少しやらなくてはいけないことがあって、君の存在の穴をそのきっかけ。スタートラインとして利用したいってこと。

 別に異世界に移り住んでくれってわけではないんだ。いうならば異世界に単身赴任してくれってことさ。

どれくらいの期間になるかは把握できていないけど老人になるまで君を放っておく、なんてことにはしないつもりさ。ここまでは大丈夫?」


正直わからないところは多くある。とはいえある程度はこの後説明してくれることだろう。

それをふまえて、今の話の理解はできる。大丈夫だ。


 ただ、卑下するつもりはないがたった一人の人間の存在なんかで、そのやらなくてはならないことは達成できるのか。それがよくわからない。


「説明するつもりでしょうけど一つ聞きたいですね。なぜ私である必要はどのくらいあるんですか?」


これだけはぜひとも聞いておきたい。


「ごめん、僕のやることに関しては君である必要はないんだ。ただ、あっちの世界に存在できる器でこっちに戻って来ても悪影響がないであろうと判断したのが君って事。」


ほかの人だとパニックになったり無気力だったり傲慢になったりするからね。

と小さくつぶやいたのが耳に届く。


なんとまぁ過大評価なこった。うれしいね。

でもなるほど、この感じだと肝心なのはこの世界から|存在に穴が開く(●●●●●●●)という状況ってことか。なんとなくこいつのやりたいことが想像できてきたな。


「わかった。そっちの都合で私は一定期間異世界で暮らしてあんたのやるべきことが終わったら返してくれるって事なのですね。

ちなみにそれは今すぐ行かないといけないってことですかね?」


テンプレに当てはめるとその瞬間に行かなくちゃいけないけどどうなんだろ。


「理解が早くて助かるよ。

質問の答えだけどそんなことはないよ。何の準備もなしに異世界に投げるとかそんな鬼畜なことはしないよ。さすがに異世界に行くにあたって必要な知識なり体作りなりあるだろうからその時間くらいはあげるよ。」


それはありがたい。俺みたいなキャンプの経験もなくて専門知識もないような人間が異世界に行ったらどうなるか分かったものじゃない。


「それじゃぁ二か月くらいは時間ほしいですね。そういえば、物語とかでよくあるチートみたいな特典ってあったりするんですか? そうだ、どんな世界に行くのかも聞いていなかったな。」


でもあれか、元の世界に戻るってことはそんな力もらえるわけもないか。


「チート? んー、何かほしいものあったらある程度は融通するよ。試しにどんなものがいいか教えて。

ちなみに魔法があって魔物がいるようなベッタベタな世界だよ。そっちのほうが楽しいでしょ?」


それは僥倖。もらえるものはもらっておきたい。とはいえ、なにをもらおうかね……

肉体強化は好みじゃないし知識は自分で得たい。ってことはやっぱり魔法関連になるのかな?


「それもそうだ。

それじゃぁ魔法を使えるようにしてほしいですね。より厳密にいえば魔力と魔法のアシスト用の何かがあれば最高ですね。」


あとは二か月の猶予の間に慣れていけばいい。


「それくらいならいいよ。こっちとしても問題ない。あと、おまけで二か月頼りにしてほしい二人がいるから紹介しておくよ。明日目を覚ましたらこの人達のところに会いにいってあげて。たぶん君の助けになるから。


それじゃ、明日から二か月後に迎えに行くよ。よろしくね。」


実のところこの空間がいったい何なのかまだはっきりしていないしわからないところがたくさんある。

それでもこれからの二か月やらなくちゃいけないことがはっきりしたとは思う。


おっと、一つ大切なことを忘れていた。


「自己紹介をてっきり忘れていたよ。一色(ひとしき)です。こちらこそよろしく。」


今更な自己紹介をすると目の前にいる名前も知らぬ何かは面白そうな雰囲気を漂わせる。


「そうだね、僕のことは蒼とでも呼んでね。一色くん。



おはようなさい。」





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