誤解
早朝
フハハハッ!理性なぞ睡眠の前に勝てる訳なかろう!!貴義起床。
「っぬい!!」
奇声、発生。
貴義の腕、重みと柔らかさを感じる。そう、シエラが腕に抱きついているのだ。
落ち着きたまえ、フッ、他愛ない…。フラグなんてない…。
「発動、テレポート…」
全力を尽くすのみだっ!! カッ!!
「ふぁあ~…、おはようございますぅ」
寝起きのシエラは目をこする。
「眠かったらまだ寝てていいぞ」
一仕事終えた英雄は優しく言う。 ああ、もう少し感触を楽しんでおけばよかったなーと思う今日このごろ、母さん元気ですか、ムスコは元気です。
「さあ朝飯タイムだ、下いくぞー」
煩悩を打消し、朝食へ期待する。
「は、はい!」
健気についてくるシエラ、可愛い。
「さーて、腹も膨れたし!(賞金首だし)!ほかの国へいくぞー」
ポンポンと腹を叩きながら宿を出る。
「国をでちゃうんですか?」
シエラが不安そうに聞いてくる。
「ああ、まあ旅とかはいろいろ準備してるから大丈夫だよ?」
事実である、異常であるが。
「は、はい!私、頑張ってついていきます!」
あまり解ってないみたいだ。
「なあ、ちょっと待てよ!嬢ちゃん可愛いな、俺の女にならねぇか?」
ああ、来てしまったか。テンプレというか、イラつかせてくれるゴミが。
「えぅ…その…」
困ったシエラがこっちに視線を向ける。
「ああ?あの子ブタの女って事か!?ゲハハッ!おい、この女くれよ!そうしたら逃がしてやるからよォ!」
朝から盛るゴミだな。
粗暴な冒険者がシエラを掴む。
「痛いっ…!」
そう呟いた。
「発動…、パペットマジック」
男へ指を指し、カードが光る。
男は固まる、そこへ貴義がシエラを掴んでる手をゆっくり外していく。
「シエラちゃん、外にはこういう変な人がいっぱい居るから気を付けたほうがいいよ…」
人形の指を曲げるように外れた手、異常を感じた周囲がざわめく。
呼吸はできるが、会話することができない男。シエラは混乱する。
「ハヒー、ハヒー…」
口を開けたまま呼吸するというのはどういう気持ちだろうか。男の口からは飲み込まれることの無い唾液が溢れ出している。
「タカヨシ…さん、えっ…?」
貴義はシエラの手を掴み、引く。 しかし、シエラは振り払った。
「そこまでだ」
突如現れた白金を纏いし騎士。
なにやら誤解されたようだ。