足切りちゃんフィフティーン
足切りちゃん:15歳♀。受験が終わって今度からJK。身体完全同一性障害で足を切りたい。
単眼さん:足切りちゃんより年上♂。足切りちゃんの友達。単眼っ子好きすぎてあだ名にされる。
「15歳おめでとう、足切りちゃん」
にこりと笑われたけど、わたしはわけがわからなくて苦笑い。
「…わたし、誕生日とっくに過ぎましたよ」
「いやあ、そういう意味じゃなくってさ」
単眼さんはそう言ってわたしの隣に立つ。単眼さんとは言うけど、本当に一つ目なわけじゃなくて、単眼がすごく好きなのであだ名にされているのだ。
「受験、終わったろ?」
わたしは単眼さんの顔を見上げる。単眼さんは背が高い。わたしが背が低いのかもしれないけど。
「終わりましたね」
「あんなに苦しそうだった足切りちゃんが、清々しい顔してるから」
笑う彼の細目は少し魅力的だといつも思っている。彼の考えることは変だとも、いつも思っている。
「受験から解放されたわたしは、やっと15歳になれたんですね」
「そう。足切りちゃんフォーティーンから、足切りちゃんフィフティーンになった」
ふふっと笑う単眼さんに、わたしは面白くありませんよと言う。相変わらず足切りちゃんはクールだねなんて言われたけど、無視した。
「でさ、足切りちゃん」
「なんですか?」
「まだ、切りたいかい?」
わたしは黙った。単眼さんの微笑みはひどくわたしの心に刺さった。わたしはわたしが普通じゃないことを思い知らされている。
「いやさ、受験のストレスのせいって言ってたから」
もう切りたくはなくなったかと思って。単眼さんは笑う。ああ。そうでした。確かに過去のわたしは、ストレスのせいにしようとしたんです。でも、まだわたしは足切りちゃん。
「……切りたい、です」
わたしの脚などなくなってしまえば良い。カタワと呼ばれ、松葉杖あるいは車椅子で生活したい。ときどきひどい後悔の念に襲われながら、それでも自分のしたことに酔いたい。この強い願望が、消えることはたぶん無い。
「そっか」
単眼さんはわたしの目を見て、そして逸らした。
「当分、足切りちゃんは足切りちゃんだねえ」
「…はい」
きっとずっとそうでしょう。
「とりあえず今は、足切りちゃんフィフティーンです」
わたしはわたしの足を見た。高校の制服、あの短いスカートは、どうしたって似合わなさそうだった。
受験終わったね足切りちゃん!今度はクソ高校生活の始まりだよ~!(^o^)