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太安麻呂の野心 三

 聴いていただけの沙也香が口を開いた。「田沼先生の言われていることをまとめるとこういうことですね。書紀の言葉使いや、訓音の使い方で中国人一世と日本人が書いた部分の判別をしたけれど、それは、あくまでも言葉というハードの問題で、書かれる本文の内容、つまりソフトは太安麻呂ら、一部の専門文書官によって作成されたということですか」

「そう言うこと」

 祐司はその言葉を受けて言った。「そうすると『いもは、古来妻の呼び名としても用いられた』と言ったというような中国人が書きそうな文章はどのように位置づけたらいいんでしょうね?これなどは、中国人がオリジナルも作成した証拠のように思うのですけど」

『書紀が純正漢文で作成されていることを考えれば、その答えは出るよ。書紀が純正漢文で書かれているのは、この日本正史が、対中国向けでもあることを考慮にいれなければならないと思う。韓国の一国、百済が新羅と唐の連合軍に滅ぼされたのは660年の事なんだ。百済復興のために日本が兵舟を出して百済の港である白村江はくすきえで全滅するのも663年なんだ。これは書紀が成立する720年の60年前にしか過ぎない出来事なんだ。当時の大和国にとって、唐が攻めてくる危機感は切実なものであったとは思わないかい?国史を中国語で書くと言うのは、今のイメージでいえば、戦前の日本が対米政策のために日本史を英語で書くようなものなんじゃないかな。だから、『妹』という言葉も、中国人の使い方と違うから、中国人に解るように説明したということなのではないかな。これでこの文章の違和感は解消されるとおもうのだがな」

「なるほど、それでこの文章に説明がつきますね。そうですよね、日本書紀成立の直前に、日本は海外に出兵していることを忘れていました。・・・しかし、話はそれますが、この頃に日本が海外で活動しているなどとは思いませんよね。白村江における日本軍の全滅の事などは書紀にどう記載されていましたっけ?」

 田沼は日本書紀をめくった。「えーと、日本書紀はのころについて面白い書き方をしているね」


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