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太安麻呂の出自は本当か? 四

 祐司は呟くように言った。「太安麻呂が、王家の出であることは間違いなさそうですね」

「そうだね、どうやら多氏は大和の国が産声をあげたころ王家から分離した家のようだね。神武天皇は、やっと神話時代から抜け出して、王らしい姿を現した最初の天皇なんだけど、王家はまだ伝説のなかにあるようだ。この時代の記事はどうもは本当かどうか良く解らない。こうした状況の中、多氏は言うなれば、源氏、平家のように、皇族から臣下に落とされた家の、元祖なんだ。この事情は日本書紀が綏靖すいぜい天皇即位前記に次のように詳しく書いているんだ。


・・・神日本磐余彦天皇かむやまといわれひこのすめらみこと(神武天皇)かむあがりりましぬ。(中略)その庶兄(正妻でない者の子で兄)手研耳命たぎしみみのみこと、年老いて、久しくまつりごとを司っていた。それゆえ、そのまま政ごとをゆだねらていたが、喪中のあいだにも、自分の思うがままに天下を自由にした。そして邪心を抱いて、正妻から生まれた二人の弟を殺そうと図った。

 神渟名川耳尊かむぬなかわみみのみことと、兄の神八井耳尊かむやいみみのみこととは、ひそかにその企てを知り、その企ての成就を妨げた。すなわち、弓部稚彦ゆげのわかひこ(不詳)らに弓を作らせ、矢じりをつくらせ、矢を作らせた。

 たまたま、その時手研耳命たぎしみみのみことは、山の室(洞窟)で床をとって寝ていたという。渟川耳尊ぬなかわみみのみことは、神八井耳命かむやいみみのみこと

「いまこそはその時だ。このことは秘密を要する。そのため手助けする者もいない。今日の事はただ私とあなたと二人で行なわなければならない。私がまず室の戸を開けましょう。あなたは弓を射なさい」と言った。しかし神八井耳の命は手足が震えて矢を射ることが出来なかった。渟川耳尊は、急いで兄の持っている弓を取って、手研耳命を射た。一矢で胸を貫き、二矢で背中を貫き、遂に殺してしまった。これに神八井耳命は自分に度胸がないのを恥じて言った。

『私はあなたの兄であるのに、つたなく弱く、これからの事もうまく出来ないだろう。あなたは勇ましく、悪を平らげた。あなたこそは帝位について世を治めなさい。私はあなたを助けて、神儀のことを司りましょう』

 この神八井耳命かむやいみみのみこと多臣おおのおみの始祖である」


 

 

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