森先生の新刊「日本書紀成立の真実・書き換えの主導者は誰か」
「さて、我々は、森先生の『日本書紀の謎を解く・述作者は誰か』という本を卒業して、森先生の新刊『日本書紀成立の真実・書き換えの主導者は誰か』という本の精読に入って行こう。我々の行く先はどこか?この新刊にはどうやら、中国人の背後にいる、真の執筆者が究明されているようだ。しかし我々の行く先は恐らくそれに留まらないだろう。予感としては森先生は、真の執筆者の究明だけで終わってしまうように思う。僕はかって僕の歴史随想『磐井の反乱伝説の真実』を書いた時、ずぼらな僕としては随分日本書紀を読み込んだと今でもおもっているが、日本書紀は読めば読むほど不思議な書なのだ。なぜなら、書紀は、大和王朝でない『出雲王朝』に非常に多くの書面を割いている。自分の王朝の祖である武烈天皇をこれでもかというぐらい悪し様に書く。小勢力の神武天皇が九州から大和に攻め入って、王権を奪取したことを書く。継体天皇が、ほとんど血のつながらない天皇であることをほとんど情熱的と言っていいくらいに書く。継体天皇に磐井の反乱に際して『今は国家存亡の危機である、破ることが出来たなら、お前に九州をやろう』とまで言わせている。古事記では数行で済まされている磐井の反乱を、非常に詳細に記述している。とりわけ継体天皇の没年について、わざわざ韓国の歴史書『百済本紀』にある、『この年、日本天皇並びに一族ことごとく死すという』という文書をひいてきて、この記事に日本の歴史を合わせるために継体天皇の没年をずらしておきながら、どうやら後の記事で、調整した時を、あからさまに戻しているように思える所がある。・・・このような一連の不可解な記事は、『宇宙開闢より万世一系の王である大和王朝』と言うことを表現することによって大和王朝の永遠の繁栄を期すという、書紀の目的を損なうことはなはだしいところがあるのだ。
僕が思うに日本書紀は、自分の身のなかに、自分を食い殺す魔を飼っているようなところがある。述作者たる中国人一世の反乱であろうか?または大和王朝を滅ぼそうとする藤原不比等の策謀であろうか?いずれにしろ誰かが、魔を仕込んだに違いないのではないだろうか。森先生のこの新刊はそこまで究明してくれるだろうか?それは今はまだ解らないのだ」