2011年11月刊の森先生の研究 二
二月になった。今年は北国で多量の降雪が続いている。それで、いつもは温暖な湘南にも冷たい風が吹き込んでいる。田沼にクリニック院長から、肝臓の疲れも取れたから、そろそろ退院も良いですねと伝えられているが、稲村ヶ崎の丘の上の自宅に帰っても、がらんとした寒々とした家に一人っきりになるばかりだからその気にもなれなかった。田沼はもう少し、ここでの療養を続けるつもりでいた。
「寒いながらも、海の反射光はまぶしいくらいになった。もう少し、あたたかくなったらクリニックをでるとするか」昼過ぎ海の見える窓辺で、そう呟いていると、戸がノックされて祐司が入ってきた。
「先生、読みましたか」
「ああ、閑だけはあるんでね。じっくり読んだよ。なかなか大した第二作だね。中国人の割り出しで終わっていた、第一作を引き継いで、それを補強する内容には感心したね。新本では述作者の背後にいる、サブタイトルにもある『書き換えの主導者は誰か』と、いう点に良く迫っていると思う。つまり、このサブタイトルは、述作者の背後にいる、真の述作者の存在を暗示しているのだね。その点では先日我々が話した黒幕の話と良くにているね」
「そうです、僕はこの本を良くできたミステリー小説のような面白さを感じながら読んでいました。特に最後は圧巻でした」
「そうだね、今日は『日本書紀の謎を解く・述作者は誰か』の第二巻ともいうべき『日本書紀成立の真実・書き換えの主導者は誰か』を、分析してみよう。今日のコメントは僕がやるよ」
「どうぞどうぞ」
「まず、『日本書紀の謎を解く』の本を読んでやり残した事が、ある。中国人の述作だと知りながら、それを飛ばして、この話に入ってきてしまっているね。森先生は克明にそれを書いているにもかかわらずだ。何故そうした流れになってしまったかというと、その時はまだ、第二作と言うべき『日本書紀成立の真実・書き換えの主導者は誰か』という著作が有ることを知らなかったからなのだ。第一作でいう述作者は、真の述作者では有りはしない。恐らく中国人は、背後にいる作者の原作を、中国語に翻訳しただけなのだ。それで、我々は、真の作者を捜すべく先を急いでいた。そこに、この第二作ともいうべきこの本が現れたのだね。・・・それもそのはず、この本は2011年11月10日初版になっているから、今日から数えて、3ヶ月前に出版された、できたてほやほやの著作なんだ。だから、ここでは、先を急がず、まず中国人述作者をしっかり捕まえておくべきだとおもうのだ。その上で、彼らの黒幕を探るために、第二作に入って行くべきなんだ」