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2011年刊の森先生の研究

 ここまでは、黙って聞いていた沙也香が言った。「あの私、実は森博達もりひろみち先生の、最近出版された本を少し読んでしまったんです。・・・祐司さんが、森先生の本を勉強中と聞いたんで、森先生がどんな方なのかなという興味で、少し調べてみましたら、2011年に中央公論新社から新しい単行本がでている事を見つけました。森先生は、中央公論新社から新書版で1999年10月にこの『日本書紀の謎を解く・述作者は誰か』という本を出版された後の12年後の2011年11月に『日本書紀成立の真実・書き換えの主導者は誰か』という本を出版しているのです。タイトルからも解るように、この本では述作者の背後にいる、本当の執筆者に迫っているので、手に入れて、ここに三冊持って来ました。これをみんなで読んで、これからの究明をすすめたらどうかなと思うんです」

 田沼と祐司は驚いたように目を見あわせた。そして田沼が言う。「そうか、森先生ほどの人ならば、当然研究を進めて、述作者の背後にいる、黒幕フィクサー捜しという事になるだろうな、そのような本が出ていることを僕は知らなかった。祐司君はどうだね」

「さすがの本屋さんですね。目の付け所がプロです。その本が出版されていることに僕も気がつきませんでした。沙也香さんは見かけより頭がいいなあ」

「ちょっと、その見かけよりは余計なんじゃないですか」と、沙也香は微笑みながら祐司をキッとにらんだ。

「イヤ、アハハ冗談ですよ。その大きい目は怖いです。・・・ところで、我々の究明は森先生の研究と同時進行ですね。2011年11月といえば、つい3ヶ月前ではありませんか」

「そうだね。森先生には迷惑かも知れないが、なんだか不思議な縁を感じるね。ふむ、これが新刊か、よしそれでは今日はここまでだ。あとは、この本を読んでからと言うことにしよう。今晩これからは北鎌倉の日本料理店『鉢木はちのき』に行って懐石料理を食べよう。君たちは普段、コンビニの弁当しか食べていないだろうからね。優しい親心だ。君たちは、お酒。僕はノン・アルコールビールだ。鎌倉で日本料理と言えば、やはり鉢木だな。この店名の『鉢木』は、室町時代に流行った謡曲『鉢木』からとっているんだよ。鎌倉幕府第五代執権、北条時頼が、僧に身を変えて、諸国を放浪し、ある武士の家に宿泊を乞うと、武士は親族に家を乗っ取られて貧乏なのに関わらず食事を出し、暖をとるために、大事にしていた

鉢木はちのき〈盆栽)を火にくべてもてなす。武士は言うのだね。このように貧乏はしているが、武士の魂は忘れず、一端鎌倉に急が有るときには、痩せ馬を駆って、鎌倉に参上するつもりであるという。のちに鎌倉に急があり武士が参上すると、そこには、僧ならぬ執権北条時頼がいるのだ。時頼は、その質実な武士の気風に打たれ、褒賞を与える。という話なんだよ」

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