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田沼と祐司、二人の検討会

「さて、日本書紀の国生みの記事はと言うとだね・・・陽神おがみ陰神めがみに問うて言った。『あなたの身体でなにか出来上がっているところがありますか』答えて『私の身体がでできあがっての始めという一所があります』と言った。それを聞いて陽神おがみは『私の身体にも出来上がっての始めいう一所があります。私の身体の陽の始めでもって、あなたの身体の陰の始めにあわせようと思う』と言った。 そのために天の柱を回ろうと決めて『あなたは左に回りなさい。私は右に回りましょう』と言った。

 そうして二神は別れて回り、ふたたび出会った。陰神めがみは言った。『あらまあ、良い男だこと』陽神おがみはこれに答えて『あれ、まあ良い女だこと』と言った。ついに夫婦のなす事を果たして、蛭子を生んだ。蛭子は葦の船に乗せて流してやりました。次に淡島あわしま吾恥島わがはじしま)を生みました、これも子供の内には、いれませんでした。このことによって天に帰り昇って、そのありさまを細かく天の神に申し上げた。天の神は鹿の骨を焼いて占いなさって、言われた。『女が最初に声をあげた事がその原因でしょう。もどってやり直しなさい』と。二神は改めて、また柱を回った。陽神は左に回り、陰神は右に回った。お互いが出会った時に、陽神がまず言った。『あれ、まあ良い女だこと」陰神が答えて言った。『あらまあ、良い男だこと』そうした後、宮を同じくして共に住んで児を生んだ。・・・・・・以上が、書紀の記事だ」


 田沼はプリントから目を上げた、そうして祐司を見ると言った。「どうかね、古事記と日本書紀の国生みを比べるとどう感じるかね?」

「ふーん。古事記の方がずっとエロチックですね。日本書紀は、極力エロチックさを出さないようにしているように見えます。古事記の原文を日本書紀がなおしたとは言いませんが、古事記的な表現が元で日本書紀的な表現が後だと思います。もっとも中には、日本書紀的なモラルある表現を変えて、後宮向けに作ったのが古事記なのだという説もあるそうですが、古事記の表現は、エロチックながら、文学性としては日本書紀をはるかに越えるもので、どうも改作とは考えられない完成度がありますね」

「そうだよね、日本書紀は変に、モラルにこだわっている面があるね。古事記は、蛭子を平然と『流し捨てる』のに書紀は蛭子にいたわりの目をもって、『流してやりました』と書くのだ。古事記の記事と日本書紀の記事の中に、創作年代の違いがまざまざと出ているような感じがするじゃないか。それから・・・生々しい男、女という表現を陽神おがみ陰神めがみというソフトな表現にかえているのも、それだね」



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