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古事記に日本旧記の三韓記事が追加され書紀が成立した!

「このたった一度の海外侵攻譚ですら、なぜか筑紫の国のみの出来事っぽいのに沙也香君は気がついたかな?神の怒りを静めるための供物は明らかに、日本列島全域から集めているのでなく筑紫の国から集めており、お払いも筑紫国内に限られているように読める点がおかしいね。また、神功皇后の夫の仲哀天皇は事もあろうに穴門あなど(現在、山口県長門)と筑紫の訶志比かしい(現在、福岡市東区香椎)に、宮殿を造り天下を治めたという記事は、まさに驚きだね。この二つの宮は、古事記によれば単に、一時的な出張所といった趣の行宮こうぐうと違って、れっきとした都だったようだ。長らく飛鳥各地を都としてきた大和朝廷が、突然まるごと移ってきて都をつくり国の中心としたという事に僕は不自然さを感じるのだ。これは次のように分析出来ると思うのだ。


 現存の古事記以前に、大和王朝は大和王朝史たる『古事記原型』を持っていた。この『古事記原型』は、近畿を中心とした海外侵攻の経験を持たない大和王朝の史書であるから当然ながら、海外侵攻の記事はなかった。この『古事記原型』には大和王朝の領域や敵対国の記事が書かれていて、大和王朝が戦乱の末、誕生した事が描かれていた。六世紀前半に筑紫を中心とした磐井王の倭国を降伏させた継体王の率いる大和王朝は、倭国王朝史である『日本旧記』を『古事記原型』にどのように加筆すべきかに悩んだ。倭国と大和王朝の天下をかけた大戦争『磐井の乱』に勝った大和王朝には倭国の歴史書である、日本書紀の引用するところの『日本旧記』をどのように処理すべきかという良い考えがないまま、『古事記原型』と『日本旧記』は、そのまま現存していた。・・・蘇我氏は、これらを整理したようだが、それでも出来上がったものは古事記に近い物であっただろう。蘇我氏をを倒した天智天皇の時にも、はっきりとは整理されずにいた。天武天皇と藤原氏たる中臣氏は、この史書の混乱をはっきり意識した最初の支配者であった。このままでは、いつしか唐の国にあなどられ、百済、高句麗のように征服されかねない。ここに天武天皇は、古事記序文にあるように太安麻呂に声をかけて、史書の整理統合を命じたという事なのだろうか」

沙也香は言った。「すると古事記原型に太安麻呂が追筆し古事記が出来上がったわけですね。そうして出来上がった古事記も、天武期以降に至って大和朝には不満足なものであったから、日本旧記の海外侵攻の記事などが付け加えられた上、再編集されて日本書紀となったと言うことですか」

「そうだね、太安麻呂の手になる古事記はできあがってはみたものの、すでに満足すべき内容ではなかったという事だ。時は藤原不比等の娘が母の聖武天皇と不比等が政権を独占していたが、天智天皇二年(663年)の百済海上における日本水軍の全滅は百済の滅亡を決定づけたから唐の軍力を再認識させるものだった。こうした状況の下、国史も、唐に対して勢力を見せる内容でなければならなくなった。古事記はこの時点で、現代史でもなく、対外国記事も不備で、大和王朝にとってみても唐帝国的立場に立ってみれば、古事記はどう見ても田舎の諸国の史書に過ぎなく思われたであろうから、より国際的な史書編纂を急がせたのではないだろうか。何度も言うけど、古事記の表記は漢字の訓読みを多用した日本文であり、中国人の理解できない文章であるが、日本書紀は最終成立時に中国人の博士の目を通して校正していることが、記録に残されている事からも解るように純正漢文に正されているのは、こうした理由によるのだね。また古事記には三国史記にみられる日本と三韓との交流記事が全く欠如していて、大和王朝が古くは韓国と交渉を持たないことが明らかになってしまっているし、顕宗けんそう天皇(487年崩御)をもって記事が途絶えて、後は推古天皇(628年)の終章まで系図のみとなっていて、すでに記事がいささか古い。こうした事では、古事記はすでに一級の国史とは言えなくなって来ていた。ここに日本書紀が編纂される理由があったと考えられるるね。・・・ところで太安麻呂は日本書紀成立の720年にもまだ生きていた。太安麻呂が古事記をまとめ上げたとすると、記事が、少なくとも200年前で途絶えているのはいかにも不自然だ。だから僕は思うね。古事記序文にあるようには、古事記作成には、太安万侶は関わっていなかったのだと。古事記本体は太安万侶が生きた時代にはすでに出来上がっていて、誰かが序文を太安万侶名で付け加えたに違いないとね」



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