表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/249

田沼 飛鳥への旅 六

 田沼は二杯目に運ばれてきたカクテルのマティーニの汗をかいたカクテルグラスを見て微笑んだ。「そう、僕はこの奈良ホテルでマティーニを飲むために、長い病院生活と禁酒に耐えたのだと言っても過言ではないよ。マティーニはカクテルの王様と呼ばれていてね、多くの愛好家を持つ酒なんだ。ニガヨモギという香草などを砂糖をいれた白ワインに漬けて造った酒がヴェルモットなんだが、このヴェルモット1に対してジンを3入れてシェイクしたものがマティーニなんだ。これ以上にジンの割合が強いカクテルをドライマテイーニと呼ぶんだが、作家のヘミングウエイは、きわめてジンの濃いマティーニが好きだったようだね。その配合率は1対15だったな・・・・。ヘミングウエイは別だけど酒の味について良く知りもしないのに、ああだこうだ、酒場でウンチクを傾ける俗物を『スノッブ』と言うそうだよ。余談だけど、ヴェルモットの材料である香草のニガヨモギは、一種の毒草でね、麻薬的に精神を高揚させる作用があって、これを主原料として造られる「アブサン」は、フランスの高名な詩人ヴェルレーヌの愛飲酒だった。彼の後半の人生が伝説的な青春詩人ランボーとの共同生活でめちゃくちゃになってしまったのも、アブサンの飲み過ぎが原因だったともいわれているんだ」

「そうなんですか。じゃ、二杯目はちょっと、マティーニに挑戦してみようかしら」

「そう、ニガヨモギの味を知ることで、女は本当の女になってゆくのだなあ。アハハ。このホテルで人生最初のマティーニを飲むなんてのは、なんて運の良いことだろうか。ここはカクテルが美味しいことで定評があるのだからね。・・・ところで今日は、ずいぶん引きずり回してしまったね。飛鳥時代の都から藤原京、平城京とこれではまるで時間旅行のようだ。しかし、おかげさまで天皇家が、大化の改新をきっかけとして大和の地方国王と言った存在から全国の王となっていった様子が究明できたと思う。・・・ところで不思議なのは、大和国が飛鳥の小さな国王であった時代の遙か以前に、韓国や中国の歴史書に、国際的に活躍する日本と思われる倭国が登場する事だね。今は、その謎をを追いかけてみたいと思うようになったよ。詳しく言うと飛鳥板葺きの宮の頃までは、つまり640年のころまでは、今日の見聞で大和の天皇家は周辺の葛城氏や大伴氏や物部氏や新興の蘇我氏によって支えられていた連合政権であったことがこ読み取れるのだが、そうした状態は、海外の史料が描く倭国とひどく異なっているのだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ