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1話 王国(?)滅亡

 俺の名前は獅子王 ガイ、勇気あるGGGの隊員……ではない。普通の高校生だ。ちなみに本名。

 さて、突然だが俺はある問題に直面してる。べつに試験中で数学の問題が難しいとかそういうたぐいの問題じゃない。現実として直面している問題にどう対処すればいいのかわからないんだ。

 で、その問題だ。


「どこだここ?」


 周囲を見回してみてもドーム状の建物の中にいるらしいこと以外はわからない。足元には変な光を放っているなにかの模様みたいなもの。

 一応、俺以外に二人の人間がドーム内にいることは確認できたけど、少なくとも俺の知り合いじゃない。というか、ずいぶん面白いファッションセンスしてるな。特にデブの方。

 上着の方はべつにいいんだ。ごてごて宝石がついているだとか、ラメが入って妙にキラッキラッしてるってのは別に気にしないさ。ただな、チューリップ状の半ズボンに白タイツってお前……太ももパッツンパッツンでハムみたいですよ?

 もう1人の方だって、腰の曲がり具合から見ればじじいって呼べるぐらいの年齢っぽいやつがぼろ布みたいなローブを着てるし、俺は偉大なる魔法使いとか言い出す厨二病かよ……あ、顔見えた。やっぱじじいだな。いい歳して不治の病を患うとは……

 つか、なんで2人そろってそんな目を見開いて馬鹿みたいに口を開けてるんだ?


「おぉ!ようやく我が国も勇者の召喚に成功したでおじゃる」


 再起動したらしいハムがしゃべったけど、おじゃるだと!?

 まさか、現実におじゃるなんて言葉を使うやつに会うなんて思ってもみなかった。気持ち的にはツチノコ見つけちゃいましたってぐらい衝撃的なんだけど……

 誰かとこの感情を共有したいところだけど、残念ながらそれができそうな相手はこの場にいない。


「じゃ、じゃからい……言ったじゃろデ・ブー王よ。わしは天才じ、じゃとな」


 おいじじい何をそんなに焦ってるんだ? なんか自分でもすごい意外ですって顔してんじゃねえよ。しかもあれか?デブーってのはそのデブの名前か?見たまんまじゃねえかよ。


「むふふ、ジ・ジーよ。よくやったでおじゃる。約束通りお前を宮廷魔法使いにしてやるでおじゃるよ」

「おぉ~、宮廷魔法使いに……」


 両手を胸の前で組んで目をキラキラと輝かせてるじじい。むふふとか超個性的な笑い方をするデブ。うん、はっきり言おう。お前らキモい。

 こんな連中とはお近づきになっちゃいけないな。

 俺はとりあえず二人のことは無視して外へ出ることにした。扉は一か所しかないし、あそこから外に出れるだろう。


「こりゃお前、どこに行くでおじゃる!」


 っち、さすがに堂々と真横を通るのはまずかったか。

 呼び止められるなんて俺のスルースキルもまだまだだな。


「あ~、いや。なんか喜んでるみたいだし邪魔しちゃ悪いと思ってね。とりあえず外にでも出ていようと思ったんだけど?」

「むふふ、さすが余が召喚した勇者でおじゃる。説明せずともバルデンフェルトに攻め込もうとするなんてさすがでおじゃる」

「わしわし、召喚したのはデ・ブー王じゃなくてわしじゃよ」


 は?ばるなんちゃらってなんだよ。つか、自己主張してくるじじいがうぜぇ。

 ったく。さっきからこのデブとじじいの言葉から予想は立ってるだけに認めたくないな。

 異世界への召喚?

 普通こういう場合は、すげぇ可愛い巫女さんが召喚して「頑張ってください勇者様!」的な展開になるか。そうじゃなくともすげぇ可愛いお姫様が召喚の場に同席して「どうか、この世界をお救いください」的な展開になるもんじゃねぇの?

 何が好きで、じじいに召喚されてデブの言うこと聞かなきゃいけねえんだよ。


「さぁ、バルデンフェルトを攻め滅ぼすでおじゃる」

「断る」

「な、なぜでおじゃる?」


 なぜ? なぜときたかこのハムデブが。


「なんで俺がお前なんぞの言うことを聞かなきゃいけないんだ?」

「……余が召喚したのだからお前が余の言うことを聞くのは当然でおじゃる」


 召喚したから言うこと聞けだと? バカじゃないのかこのデブは。いや、馬鹿なんだろう。


「だが、断る」

「…………」

「ジ・ジー、なぜこの男は余の言うことを聞かないでおじゃる!」

「え? あぁ……隷属の魔法をかけ忘れたからじゃな。てへっ☆」


 おい、じじい……いや、もう何も言うまい。

 でも、隷属の魔法とかかけられてなくてよかった。このデブの言うこと聞かなくなるなんて恐ろしいことこの上ないぜ。


「ぶひー! なにやってるでおじゃる! お前はやっぱり宮廷魔法使いにはせん!」

「な、なんじゃとぉ!? それは話が違うぞい」


 いや……お前らそんな不毛な喧嘩を今この場でしてんじゃねえよ。

 まぁいいや、今のうちに外に行かせてもらおう。


「だからどこへ行くでおじゃる!」

「いや、また忙しそうだし外へ出てようかと思ってな」


 デブとじじいの不毛な言い争いを無視してドームを出ようと扉に手をかけたところで、再び止められてしまった。本当に俺もまだまだだな。


「むふふ、やっぱりバルデンフェルトへ攻めに行くつもりになったでおじゃるな?」

「……はぁ?」


 ……うぜぇ、マジでこいつうぜぇ。

 なんか、めんどくせえし、適当にあしらうかなぁ。


「さぁ、はやくバルデンフェルトを滅ぼすでおじゃる」

「あぁ、はいはい。わかりましたよ」


 扉を開いてとりあえず外に出る。

 わかっちゃいたけど、完全に異世界だな。なんかどこが違うって言われると詳しく説明できないけど。

 とりあえず、石造りの家が多くて、妙にでかい城がある。馬車が道を走ってて街を外れたところには草原が広がっている。

 あぁ、違和感の正体がわかった。こんだけ広い場所でも車がないのが地球との違いだな。


「マジで異世界っぽいな」


 こんな景色だけじゃヨーロッパの片田舎に来たってだけかもしんない。いや、さすがにそれはどうかって自分でも思うけどさ。

 でも、なんとなくわかるさ。空気が違う。

 とりあえず、この世界の景色も楽しんだことだしいったん戻るか。

 俺は再び扉を開いてドームの中に戻った。


「デブ王様、ばるなんちゃらっての滅ぼしてきましたよ」

「むほほぉ~い! よくやったでおじゃる!」


 え、まじで!? 信じるの? とりあえず適当にやる気のなさをアピールしてクビにでもしてもらおうと思ったのに。どうやら俺の想像以上にこのデブはおつむが弱いようだ。


「では、さっそく余は愛しのセリル姫を迎えに行くでおじゃる! 帰ってきたらすぐに結婚式でおじゃる! 勇者には褒美にフレアの性悪とシャイナのババアをくれてやるでおじゃる」


 デブは俺が種明かしをする前にさっさとドームの中から出て行った。というか、ずいぶんデブのわりに俊敏だなあいつ……。

 で、セリル姫とかフレア、シャイナって誰だ?




 翌日、俺にはよくわからない・・・・・・・が国境でデ・ブー王と、お供のじじいがバルデンフェルトに討たれたという話が国中に流れたらしい。戦争状態の隣国にまともな護衛も連れずに向かい、「お主たちは敗戦国じゃから余に従うでおじゃる!」と言っていたらしい。

 さすがにあれだけの馬鹿でも国王が討ち取られたというのは国的にも一大事だし、どうやらあいつには世継ぎも何もいなかったらしい。長年に及ぶ戦争の末に王族はみな倒れ、最後の一人だったあのデブが討ち取られたこの国はバルデンフェルトに無条件降伏。俺が召喚された国は俺が来てからたったの1日で滅びてしまったとさ。




………………え、俺のせい?


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