5話 これから
星雲隊から逃げ延びた僕たちは、草むらに飛び込んで
息を潜めていた。
これからどうなるんだろう。
法律違反をした挙句、逃げ出してしまった。捕まれば
無期懲役、下手すれば死刑かもしれない。
そう考えると、すごく怖い。
「店長。スピカ店長」
「……え?ああ、どうしたの?」
「これから、どうしたいですか」
言葉に詰まった。きっと、今ここで謝れば許される。
あの副隊長も規則に従って処理するだけだろう、
たぶん。
でも、あんな人に頭を下げたくはない。
「店をたたむも、続けるも貴方の自由です。
私は貴方について行きます」
「……僕、あの店を続けたい。歴史を終わらせたく
ない」
「ーーそうですか」
仮面さんはそれだけ言って立ち上がり、僕の手を
取った。
「1つ聞かせて下さい。なぜ貴方は法律違反をして
まで、その人間の願いを叶えたのですか?」
僕は目を伏せる。胸の奥が、ズキリと痛んだ。
「……重なったからだよ」
声がかすれた。
「家族が居なくて寂しがっているのが……僕と
重なったからだよ」
ぐっと唇を噛む。
「せめて七夕の時ぐらい、家族全員で笑って
過ごさせてあげたいって、そう思ったんだ」
冷たい風が頬を撫でる。けれど、握られた手は
温かった。
「優しいのですね」
「そんなことない」
むしろ残酷だ。
あの子には、再び父親の居ない寂しさを思い出させ、
母親には、父親が死んだことを改めて突きつけて
しまった。
「あれは、僕の自己満足だから」
「……鵲屋に戻りましょう。ここは、冷えます」
鵲屋の周囲には誰の気配もなく、いつも通り静か
だった。
「星雲隊は来ていないみたいだね」
「ええ、今のうちに入りましょう」
僕たちは素早く戸を開けて中に入った。
鍵をかける音がやけに大きく響く。
「今日は、なかなかハードな1日でしたね」
「そうだ。仮面さん、助けてくれてありがとう」
「いえ。問題はこの後、彼らがどう動くかです」
あの副隊長の顔が脳裏に浮かぶ。
あんな性格の悪い人だ。何もしないはずがない。
「私にとって、本部を壊滅させることは非常に
容易い」
さらっと、とんでもない言葉が聞こえた気がする。
「ですが」
仮面の奥の視線がこちらへ向く。
「武力で解決することだけは避けたい。貴方のため
にも、この店のためにも。そのためには、証拠が
必要です」
「証拠?」
「ええ。仕分け人は自らが直接願いを叶えてはなら
ない。その法律を違反すれば罰金、あるいは懲役。
それはご存じでしょう」
僕は頷いた。
「しかし、例外があります。願いを叶えられた本人が
良い方向へ進んでいると証明できた場合、星雲隊は
目を瞑る。そういう隠れた法律があります」
「へえ、知らなかった。よく知ってたね」
すると、仮面さんはぷいっと目を逸らした。
「昔、この隠れた法律を使っていた人を見たことが
あるだけです」
「それにしても、良い方向に向かってる証拠か……
そんなのあるのかな」
「はい。写真、動画、手紙、何でも構いません。
しかし」
仮面さんは、一呼吸置いた。
「あの副隊長のことです、少しの証拠では絶対に納得
しないでしょう。ですから、証拠は多い方がいい」
「分かった。やってみるよ」
というか、やるしかないんだ。
「では、店番はお任せ下さい。今日は明日の準備を
して早めに休みましょう」




