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鵲屋  作者: 鳩胸 錦
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4話 星雲隊


「法律違反?」


薄暗い隊長室に、低い声が響いた。


「はい。鵲屋の店主、スピカが1枚の短冊を紛失。

 その上、当該短冊の願いを私的に叶えたとの報告が

 入っております」


「鵲屋?確か、ボロボロの願い仕分けの店だったか」


ギジリと椅子が軋む。

 

「その店主を拘束しろ。抵抗するなら」


視線が、部下の腰の剣へ落ちた。


「殺しても構わん」


「しかし、その店主は1人で経営しているそう

 ですが……」


「フン。あんな店、潰れた所でどうということは

 ない。早く行け、副隊長命令だ」


部下は黙礼し、部屋を出ていった。


「あの隊長が居ない今、私が規則(ルール)だ」


それから、数分後。


「もうこんな時間か。そろそろお店、閉めないと」


「おい、待て」


振り向くと、紺色のロングコートの男が2人立って

いた。


「星雲隊だ。店主はお前か?」


「えっ、星雲隊……!?」


星雲隊。彼らは警察官のような存在で、天の川や

等星で起こるあらゆる犯罪に目を光らせている

組織だ。


「昨日の七夕、貴様は何をしたか覚えているか」


心臓の鼓動が大きくなる。


「……はい」


地上へ行き、あの子の願いを叶えたこと。

今でもはっきりと脳裏に焼きついている。


「仕分け人が直接願いを叶えることは、立派な

 法律違反だ。ご同行願おうか」


「皆さん、何の話をされているのですか」


星雲隊の2人は、ぎょっとした顔で仮面さんを見た。


「な、何だお前は!」


「私はこの店の従業員ですが。なぜ星雲隊の方たちが

 ここへ?」


「そこに居る店主が法律違反をしたからだ。

 ともかく、詳しい話はあっちに着いてから話す」


僕は黙って頷いた。

こうなるのは、最初から分かっていた。

後ろから仮面さんの視線が突き刺さる。


「……ごめん、仮面さん」


歩き出して30分。大きな黒い建物が視界に入った。

役所のようだが、どこか冷たい雰囲気。

正面の入り口には、銀文字で『星雲隊本部』と

書かれている。


「それにしても運がいいな、お前」


「え?」


「副隊長が直々にお前を尋問して下さるそうだ」


そう言う男の目は、嘲笑っていた。

 

「せいぜい頑張れ。クソガキ」


僕は5階まで連れて行かれ、長い廊下の突き当たりに

ある扉の前で止められた。


「失礼します、鵲屋の店主を連れて来ました」


「入れ」


僕は押されて、中に入れられた。


「……お前が店主か?」


中はアンティーク調の部屋だった。

重厚な木製の机、柔らかな照明、壁に掛けられた

古い時計。何となく、鵲屋に似ている気がする。


「自己紹介しておこう。私は星雲隊の副隊長、

 べテルギウス。今は隊長不在のため、私が星雲隊の

 隊長代理をしている」


彼は僕に背を向けたまま、窓の外を眺めていた。


「事実確認をしておこう。お前は1枚の短冊を紛失し、

 その短冊を書いた者の願いを叶えた。そうだな?」


「はい」


「フン、そうか」


ようやく彼は、椅子ごとこちらへ向き直った。

思っていたよりもずっと若い。しかしその目には、

露骨な軽蔑が浮かんでいた。


「お前の行動は、天の川で真面目に仕事をしている

 奴からすればいい迷惑だ。1人の法律違反が皆に

 影響する。分かるだろう、その程度のこと

 ぐらいは」


ベテルギウスさんは、コーヒーカップに口につけた。


「七夕の忙しさで、我々を騙せると思ったか?」


次の瞬間、彼は躊躇なくコーヒーカップを投げ

つけた。カップは僕の頬をかすめ、背後の扉に

当たって割れた。

 

「大人を舐めるなよガキが!生憎、子供は死刑には

 できない。そうだな、金でも貰おうか」


「……いくらですか」


「10億だ。それができなければ、あの店をたたんで

 6等星に強制送還する」


何だこの人は。傲慢で意地汚い、最低な男だ。


「どうした、今すぐ用意しろ」


僕が口を開こうとした時だった。


「分かりました、今すぐ用意しますね」


どこからともなく、聞き慣れた声がした。


「!?誰だ……!」


「下へ参りまーす」


天井が軋む音がした。

その直後、バキンと大きな音を立ててべテルギウス

さんの真上の天井板が外れた。


「なっ……」


言葉が終わるより早く、黒いアタッシュケースが

雨のように降り注いだ。


「うぐあっ!」


アタッシュケースは全てベテルギウスさんに命中し、

彼はそのまま床に倒れ込んだ。


「おやおや、直撃ですか。可哀想に」


聞き馴染みのある声だった。


「か、仮面さん!?」


「はい」


仮面さんは華麗に着地すると、僕の方を向いた。


「ご無事ですか?」


「う、うん」


「良かった。早くここから逃げましょう」

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